演じ分けがヤバすぎる「テラ声優」3選 同じ声なはずなのに「別人すぎて怖い」

■これこそまさに七変化！　ひとり2役で会話するシーンも

「テラ○○」という言葉から、誰を思い浮かべるでしょうか。男声／女声のように声質自体を変化させる声優もいれば、演技やニュアンスでキャラの特徴を表現する方もいます。この記事では、SNSでも「元祖演じ分けの神」「常に進化してる」と評判の演じ分けに定評のある「テラ声優」を見てみましょう。

●子安武人さん

　まずは、30年以上の声優歴を持ち、タレント事務所 有限会社ティーズファクトリーの代表も務める子安武人さんです。『ジョジョの奇妙な冒険』ディオ・ブランドー役、『銀魂』高杉晋助役など、数々の人気作品に出演しています。

　当初はクールな悪役が多かった子安さんは、徐々に『∀ガンダム』ギム・ギンガナム役や『ボボボーボ・ボーボボ』ボボボーボ・ボーボボ役など、熱血系やギャグに振り切ったキャラクターも担当するようになります。

　近年では「ソードアート・オンライン」シリーズの須郷信之役、「Re:ゼロから始める異世界生活」シリーズのロズワール・L・メイザース役など、キャラの濃い役を演じる一方で、『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』では主人公のヴァイオレットを見守るクラウディア・ホッジンズ役も演じました。

　そのような子安さんの演技について、「演じ分け」という意味で大きな話題となったのは「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズでしょう。アニメ版でのディオ・ブランドーとDIOの演技、そして格闘ゲーム『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル R』でのディエゴ・ブランドーの声がはっきりと分けられており、ネット上では「演じ分け完璧すぎ」との声があがっていました。

『不滅のあなたへ Season2』でも、子安さん演じる2キャラの会話シーンがあり、「子安と子安が演じ分けで会話している」と話題になりました。その演技力は、「Re:ゼロから始める異世界生活」シリーズで二代目ロズワール役を演じた、子安光樹さん（実の息子）にも受け継がれていくのでしょうか。

●早見沙織さん

　続いて、透明感と品のある声で、「声優界の女神」との呼び声も高い早見沙織さんです。『鬼滅の刃』胡蝶しのぶ役、『SPY×FAMILY』ヨル・フォージャー役など、話題の作品には必ずといっていいほど参加しています。

　早見さんは、『魔法科高校の劣等生』司波深雪役、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』新垣あやせ役など、「優しいけどちょっと怖い」役をよく担当してきました。近年では『ONE PIECE』ヤマト役、『魔法つかいプリキュア！』はーちゃん役など、少年らしさあふれる役から幼女役まで、より幅広い役柄を演じています。

　そうしたなか、『山田くんと7人の魔女』では、クラスメイトの山田竜と体が入れ替わってしまう、白石うらら役を演じ、入れ替わったときの声は、不良である「竜そのもの」と話題を集めました。声質は早見さんのままでありながら、しっかり「男の子だ」と伝わる演技力に、驚いた視聴者も多かったのではないでしょうか。

　そしてアニメ映画『聲の形』では、聴覚障害を持つ少女、西宮硝子役において、その演技が話題となりました。うまく話せない硝子を演じるため、早見さんは実際に聴覚障害を持つ方に話をうかがい、役作りをしたとのことです。原作者の大今良時先生からも「ものすごくリアル」と称賛されていました。

●山寺宏一さん

　最後は、「七色の声を持つ声優」というふたつ名の通り、バラエティーに富んだ役柄を演じてきた山寺宏一さんです。『新世紀エヴァンゲリオン』加持リョウジ役や『攻殻機動隊』トグサ役などはもちろん、『それいけ！アンパンマン』めいけんチーズ役などの人外キャラも、多く担当されています。

　最近では『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』に登場した、上弦の鬼で半天狗の分身、憎珀天の演者が山寺さんだと知り、驚いた方も多かったようです。放送当初は、担当声優を知ったファンたちのツイートによって、Twitterのトレンド1位に「山ちゃん」がランクインするほど反響がありました。

『範馬刃牙』では三つ子、マウスや『ヤッターマン（2008年版）』ではヤッターワン、ヤッターペリカンなどの「ヤッターメカ」を、すべてひとりで演じるなど、1作品でさまざまな役柄を演じることもしばしばです。また、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズではアベルト・デスラー役において、「若い頃」と「30代」の声を明確に演じ分けていました。

　さらに、ショートアニメ『彼岸島X』では、最終話で「ひとり2役」ならぬ「ひとり50役」に挑戦し、3分程度のアニメーションへたったひとりで演じ切りました。主人公の明や戦闘員、吸血鬼はもちろん、女性やおじいさん、犬・猫・蚊までも山寺さんひとりで演じています。

　邦画のみならず、洋画の吹替でも活躍しており、一体どれほどの演じ分けが可能なのか、もはや見当もつきません。

＊　＊　＊

　たったひとりで何役もこなせてしまう、「テラ声優」たちは、そのレパートリーの豊富さに、同業者たちも舌を巻くほどです。音声で聞くとよりそのすごさが分かるため、彼らの出演作を見比べてみると、違った楽しみ方ができるかもしれません。

（新美友那）