【もはや定番】特撮に出演する「お笑い芸人」 仮面ライダーと戦隊で役割の違いも?
マグミクス / 2019年9月29日 16時10分
■流行のギャグから昭和のギャグまで登場
2019年9月1日に放送開始した『仮面ライダーゼロワン』第1話に登場して話題となった“腹筋崩壊太郎”。演じていたのはお笑い芸人のなかやまきんに君さんでした。その翌週に放送された『騎士竜戦隊リュウソウジャー』第25話には、ひょっこりはんさんが登場しています。
お笑い芸人がスーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズなどの特撮作品に出演する場合、各シリーズでどういうパターンが多いのか、それぞれのシリーズで違いはあるのかを見ていくと、時代による作品テイストの変化といった背景が見えてくるのです。
スーパー戦隊シリーズの場合は、流行を取り入れる製作スタイルと、基本的に1話完結でライトな作風ということもあり、仮面ライダーシリーズよりもお笑い芸人のゲスト出演が多い傾向にあるようです。シリーズのなかでもお笑い芸人の出演が特に多かった『炎神戦隊ゴーオンジャー』(2008~2009)を例に見てみましょう。
お笑い芸人が出演するパターンで最も多いのが、ブレイク中の芸人が登場するというもの。第4話に登場したスプレーバンキの声をアントキの猪木さん、第27話に登場したダウジングバンキの声をエド・はるみさんが担当しています。2人が演じた怪人はともに、彼らの持ちネタを取り入れた台詞回しとなっていました。
また一方で、子供と一緒に鑑賞している親御さん向けなのか、製作スタッフの趣味なのか、往年の昭和のギャグ、あるいはベテラン芸人が登場することもよくあります。
第21話に登場したフーセンバンキの声を担当したのが、渥美清さんのモノマネで知られる原一平さん。『男はつらいよ』シリーズの主人公・寅さんのような帽子をかぶっており、口調も寅さんを思わせるものでした。フーセンとフーテンの寅さんをかけた粋なキャスティングでしょう。
流行りのギャグや往年のギャグを散りばめる演出は、2018年に放送された『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018~2019)でも健在で、もはやシリーズの定番となっています。
思えば、かつて東映が製作していた映画『トラック野郎』シリーズ(1975~1979)なども当時の流行やギャグを取り入れた作風で、お笑い芸人も多数出演していました。スーパー戦隊シリーズの遊び心あふれる演出やキャスティングの源流は、プログラムピクチャーの時代の娯楽映画まで遡ることができるのではないでしょうか。
■テイストの変化が「お笑い芸人の起用増」に影響?
芸人のゲスト出演が多かった『仮面ライダードライブ』 (C)2014石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映
次に、仮面ライダーシリーズを見ていきましょう。『仮面ライダークウガ』(2000~2001)から『仮面ライダーディケイド』(2009)までのいわゆる「平成一期」の作品では、お笑い芸人が出演する機会は多くなかったようです。
しかし平成ライダー第11作目『仮面ライダーW』(2009~2010)以降は、なだぎ武さんを皮切りに、アンガールズの田中卓志さんや博多華丸さんなど、コメディリリーフとしてレギュラー出演するお笑い芸人が増加。芸人が各回のゲストで出演する機会も増え、中でも『仮面ライダードライブ』(2014~2015)で特に多く見られます。
『ドライブ』は主人公の上司・本願寺純役で片岡鶴太郎さんがレギュラー出演。TVシリーズにはルー大柴さんやあご勇さん、安田大サーカス、映画作品にはピースの綾部祐二さんやドランクドラゴンの塚地武雅さんといった面々がゲスト出演しています。
スーパー戦隊シリーズとの違いとしては、ブレイク中の方ではなく一定の知名度を持つ芸人が出演しているという点でしょうか。また戦隊と比べると自身のギャグをそこまで前面に押し出す場面も少なかったように思われます。
お笑い芸人の出演が増加したきっかけとして、仮面ライダーシリーズの作風の変化が考えられます。「平成一期」の作品は、全体的にシリアスな作風で連続性の強い物語が展開されていました。そのため主要人物同士の人間関係を掘り下げて描くことに重点が置かれており、『仮面ライダー電王』(2007~2008)などの作品を除くと、各回のゲストを中心に展開するエピソードは少なかったのです。
平成一期と比べると『仮面ライダーW』以降はコミカルな描写が増えたり、2話完結という明快なフォーマットの作品が増えたりと、全体的に作風が軟化します。ゲストを中心に展開するエピソードも増えていきました。各エピソードを盛り上げるために、強い存在感を持つお笑い芸人への出演オファーが増えたのだと考えられます。
特撮作品へ出演したお笑い芸人といっても、スーパー戦隊シリーズと仮面ライダーシリーズでは起用理由や作中での活躍に違いがあるように見受けられます。スーパー戦隊シリーズも仮面ライダーも、共に歴史のあるシリーズで1年間にわたって放送されます。個性豊かなお笑い芸人を巧みに起用した遊び心のある趣向なども、特撮作品の見どころのひとつではないでしょうか。
(森谷秀)
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