ドラマで社会現象起こした『逃げ恥』の最新刊。連載再開でますます「考えさせられる」
マグミクス / 2019年10月6日 15時40分
■あえてもう一度強調したい、『逃げ恥』の連載「再開」
2016年10月より毎週火曜日に放送され、社会現象を巻き起こしたTBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の原作マンガが、2019年から連載を再開、8月には最新巻の10巻が発売されました。新しいみくりと平匡の物語で注目すべきポイントについて、少女マンガ芸人の別冊なかむらりょうこさんが解説します。
* * *
「就職としての結婚」を採用したふたりが周囲に契約結婚であることがバレないよう「新婚感」を醸し出すために制定した「ハグの日」。初回から話題になった「恋ダンス」。「少子化」に「晩婚化」、「高齢童貞」に「高齢処女」といった内容に切り込んでいく視点。
キャッチーで話題に尽きないドラマは最終話で視聴率20%を超える国民的大ヒットを記録し、ドラマとほぼ同時期に完結を迎えたマンガも、全9巻で380万部突破の大大ヒットでした。
マンガ、ドラマともに大円団で幕を閉じた『逃げ恥』ですが、講談社「Kiss」2019年今年3月号から連載が再開しています。新しく描かれた最新話は、最終話であった43話の続きから始まり、2年5か月ぶりの単行本となる第10巻が2019年8月に発売されました。
タイトルを変えて再び1話、1巻から始まるのではなく、一度完結したマンガの物語が「再開」という形でリスタートするのは大変珍しいことです。
そのため、本屋さんで見かけても、「今までに発売されていた単行本か」と思い、スルーしてしまっている人もいるもようです。なのでここで声を大にして…
『逃げ恥』は、連載を再開しております!!これは新刊です!!!!
『逃げるは恥だが役に立つ』を読んだことがない方のためにあらすじを説明しますと……
大学院を出ながらも就職難と派遣切りにより無職の身となってしまった森山みくり(25)。休職中のみくりを見かねた父親の紹介で、元部下の独身会社員・津崎平匡(36)のもとで週1回、家事代行として働き始めます。あまり人に構われたり、誰かが家にいたりすることを好まない平匡でしたが、みくりとは快適な関係を築きます。
しかし、実家の事情からみくりが辞めざるを得ない状況に。現状を維持したいみくりは平匡に「就職としての結婚」を持ちかけます。戸惑う平匡でしたが、メリットを感じ了承。ふたりは「雇用主と従業員」という関係の契約結婚に打って出ます。
都度、「夫婦」の話し合いである会議を重ねるも、ふたりのビジネスライクな関係を周囲が怪しみ始め、契約結婚にプラスして「役割としての恋人」関係を始めて…?!
■男女両方の意見、まっすぐに描く
『逃げるは恥だが役に立つ』の連載が再開した、講談社「Kiss」2019年3月号
最新刊の物語は、みくりと平匡さんが正式に結婚して2年半後から始まります。連載開始当時25歳だったみくりも30歳になりました。共働き生活も定着してきたふたりは家事も上手に分担。子供のことも考えたいけれど、会社の状況からはなかなか難しそう……と思っていた矢先、みくりに妊娠の兆しが…! そしてみくりの叔母である百合と風見の関係には変化が訪れていて…。
今回はみくりの妊娠・出産を通して、男女それぞれが職場とどういった関係を築き、仕事と家庭を両立させていくのかが大きくテーマとなっています。
妊娠によって家庭内に起こりうる問題、会社内の産休育休制度の男女差。それらとともとに、婦人科疾患、LGBTQ、ハラスメント問題、はたまた平匡さんを好きになってしまう人が現れたり……と、息つく暇もなく考えさせられる内容と、専門書並みのHOW TO。コミカルな登場人物たちは健在で、続編の1冊から読み応えが……すごいです……。
みくりの妊娠による体調不良に、「女の人の方が大変なのだから」と頑張り過ぎてしまう平匡さん。作者の海野先生は連載の再開に踏み切られたお気持ちを「あとがき」で次のように書いています。
「もう描き切ったので続きはいいや、と思っていたのですが、なんやかんやで描くことになりました」
「女性の呪いについては描いたけど、男性の呪いについては描いてなかったな、と言うのが、モヤモヤと残っていたからです」
少女マンガにおいて、これほどまっすぐに男女両方の意見が描かれることは多くありません。恋愛中の男女が「なんとなく察してほしい。言わなくてもわかってほしい」と言わないでいることをすべて口に出し、「会議」という、あえて距離を取る形で冷静に解決してきた『逃げ恥』。臨床心理士の資格を持ったみくりと、恋愛経験が皆無だった平匡さんの「世の普通」に囚われない、自分たちだけの生活スタイルの作り方には学ぶ点がたくさんあります。
そして、10巻からより踏み込んだ内容のステージとなり、ふたりがこれから起こることにどんな答えを出していくのか、大変注目が寄せられるところです。
「経験した人しかなかなか分からない体感」というものはありますが、みくりと十月十日一緒に過ごすことによって、「妊娠を知る」経験をみんなで共有することができるのではないでしょうか。もう一度言います。
『逃げ恥』は、連載を再開しております!!新刊10巻出ております!!!!
再びのドラマ化もありますように……。ぜひ一緒に、再びの『逃げ恥』ワールドへ行きましょう。
(別冊なかむらりょうこ)
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