ラグビーW杯開催の今こそ読みたい、漫画『1・2の三四郎』のラグビー愛
マグミクス / 2019年10月9日 19時40分
■ラグビー題材の昭和TVドラマは印象に残るが…
第1戦のロシアに続き、強豪アイルランドを下し、第3戦でサモアにも勝利するなど、ますます盛り上がりを見せるラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。ラグビーW杯は1987年にオーストラリアとニュージーランドの共催で第1回が開催され、今年で第9回を迎えますが、「アジア圏初の開催」でこれまでにないほど高い注目を集めています。
しかし過去を振り返ってみると、ラグビーを題材にしたTVドラマは数多く知られているものの、ラグビーを題材としたマンガは、それほど多くないのが現実です。
昭和の時代から振り返ってみると、古くは夏木陽介が主演した『青春とはなんだ』(1965~66年)や、ラストシーンで駅のホームでのランパスが印象に残る、中村雅俊主演の『われ青春!』(1974年)など、『ラグビー』を題材にした青春ドラマが多く制作されています。1969年生まれの筆者のようなアラフィフ世代にとっては、『スクール☆ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~』(1984~85年)を懐かしく感じるという方も多いと思います。
近頃もTBS系列で放映された池井戸潤による小説が原作の『ノーサイドゲーム』が人気を博し、その流れのままラグビーW杯が開催されています。
そうしたなか、ラグビーマンガを紹介しようにも『魁!!男塾』の授業のひとつ「羅惧美偉」(ラグビー)くらいしか思い当たらなかったのですが、せっかくドラマやW杯などでラグビーに興味を持ち、この競技を好きになりかけている皆様に『魁!!男塾』の「毒を飲んだ塾生たちが解毒剤の入ったボールを奪い合う」話を紹介したのでは、あらぬ誤解を与えかねません。
ラグビーW杯が盛り上がる今こそ、正統派ラグビーマンガとして紹介したいのが、1978年から講談社「週刊少年マガジン」で連載された、小林まこと先生のデビュー作『1・2の三四郎』です。
同作品の主人公である東三四郎(あずま さんしろう)は、最終的にプロレスラーになるのですが、高校時代、最初に彼が青春をささげたスポーツがラグビーなのです。
■格闘世界に挑むも、主人公の根底には「ラグビー」が
『1・2の三四郎』第12巻(講談社)。プロレスの世界に挑む三四郎の活躍が描かれる
『1・2の三四郎』の物語は、ラグビー部を辞めた三四郎が柔道部に入り、ひょんな経緯からレスリング部の西上馬之助、空手部の南小路虎吉とひとつの道場をプロレスのリングロープで三等分に折半した「格闘部」を設立。マネージャーであり、後に三四郎のヨメとなる北条志乃を交えた青春ドタバタ劇なのですが、全20巻のうち1~4巻までは学園祭を舞台に、飛鳥純率いるラグビー部との対戦がメインとなっています。
まぁ、この『1・2の三四郎』のラグビーの試合も、格闘部メンバーのひとりである岩清水健太郎による、殺虫剤や虫取りの網を使った反則などがあるのですが、それでも『男塾』よりは現実的な世界観です。
加えて『三四郎』の劇中ではアントニオ猪木やジャイアント馬場、ベニー・ユキーデにそっくりな「女学生」が登場したり、アントニオ猪木本人が物語のなかでチョイチョイと登場したりするのですが、こうした部分もフィクションとノンフィクションを巧みに織り交ぜる手法を確立した梶原一騎先生から続く、「週刊少年マガジン」イズムを感じさせるものとなっています。岩清水の「君のためなら死ねる」というセリフも、梶原一騎先生の代表作の一つである『愛と誠』へのオマージュです。
ちなみに『1・2の三四郎』の物語は、柔道部編、プロレスラー編へと続いていくのですが、柔道部編での黒崎高校、柳政紀との対戦で一本を決めたのもラグビー・タックルです。プロレス編のラストである「TWWAベルト争奪タッグトーナメント」決勝戦の相手であるシュガーレイ・オズマとスティーブ・ノーランの2m超えコンビも、元ラグビー選手という設定です。もちろん、主人公の東三四郎のバックボーンは、あくまでも柔道ではなくラグビーとなっています。
筆者もドラマ『ノーサイドゲーム』でフォワードとバックスのポジションの違いや、モールやドロップゴール、ノックオンなどの用語を覚えた“ニワカ”ですが、そうしたことを知った上で再び『1・2の三四郎』を読んでみると、新たな発見がありました。
日本代表の決勝進出も濃厚となったラグビーW杯で高まった「熱」と、少し増えたラグビーに対する「知識」をもって、再び昭和のマンガを読み返してみるのもオツな楽しみではないでしょうか?
(渡辺まこと)
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