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子供の頃に見た『対馬丸 さようなら沖縄』 戦争描写は「トラウマ級」、同年代の子供たちが次々と海へ

マグミクス / 2023年8月15日 6時10分

子供の頃に見た『対馬丸 さようなら沖縄』 戦争描写は「トラウマ級」、同年代の子供たちが次々と海へ

■日本本土への「疎開」を余儀なくされた沖縄の子供たち

 戦争の悲劇を伝えるアニメ作品として、『はだしのゲン 劇場版』や『この世界の片隅に』など、数多くの傑作が知られています。しかしそれらの作品と比較しても、『対馬丸 -さようなら沖繩-』は、実際に起こった「対馬丸事件」子供たちがあっけない死を迎えるシーンが多数描かれる、トラウマ作品として知られています。かつて子供時代に学校で上映されて戦慄(せんりつ)した記憶をもつ方も多いのではないでしょうか。同作品の設定、ストーリーを改めて振り返ります。

 1944年の夏、沖縄は間もなく戦場になろうとしていました。

 主人公の具志堅 清は仲の良い友達、勇や健治とともに那覇国民学校に通う少年です。いつかヤマト(本土)へ行ってみたいと夢見る清でしたが、校舎は兵舎として接収され、子供たちは倉庫で授業を受けなければいけないほど、戦況は切迫しつつありました。

 沖縄に子供たちを置いておけば、戦争の犠牲になるのは明らかです。食料を節約する必要もあり、子供たちを本土へと疎開させることになりました。

 担任の宮里先生は「軍艦に乗っていくから絶対に安全だ」と親を説得し、友だちと一緒にヤマトに行けることになった清は飛び跳ねて喜びました。このとき、待ち受けている悲劇を予想していた人など、どこにもいなかったのです。

 1944年8月21日、子供たちを始めとする5000人の疎開者と見送り人が那覇港に集まりますが、乗る船は約束されていた軍艦ではなく、輸送船「対馬丸」でした。午後6時35分、対馬丸に乗りこんだ清は、お母さんに見送られながら、沖縄を後にしたのです。

 船中では救命胴衣の着用訓練をしたり、縄梯子を使って船倉から甲板へと上がる練習をしたりと、いざという時に備えた準備が行われていました。

 そんな折、たまたま海を見つめていた生徒の一人が潜水艦の潜望鏡を発見し、急いで船員に知らせましたが、船員が来た時には既に潜望鏡は姿を消しており、信じてはもらえなかったのです。

 そして翌8月22日の午後10時12分ごろ、米潜水艦の魚雷攻撃を受け、対馬丸に乗り込んでいたすべての人の運命は暗転してしまいました。

■誰もがあっけなく死んでいく

アニメ絵本『対馬丸 -さようなら沖繩』(理論社)

 激しい衝撃とともに非常ベルが鳴り響き、魚雷によって船体に空いた大穴からは、海水が流れ込み始めました。宮里先生は「起きろ!起きるんだ!」と叫んで子供たちを叩き起こしますが、事態は急速に悪化していたのです。

 はしごを上って甲板にあがろうとした子供たちを爆発が襲い、子供たちは悲鳴をあげながら次々と落下し、命を落としました。

 船員たちはボートや筏(いかだ)を下ろし、怯えて動けない子供たちを救うために、次々と海へ投げ込み続けたのです。

 海水に呑まれた溺死者が船内を漂うなか、清はパニックを起こし、船内へと戻ろうとします。勇は清を追いかけようとしますが、さらなる爆発の衝撃で吹き飛ばされ、頭を打って死んでしまいました。

 なんとか甲板に戻った清は健治とともに死んだ勇の名を叫びながら海へと飛び込み、かろうじて筏へと這い上がり、健治に呼びかけますが、応えはありませんでした。健治は着水の衝撃で既に息絶えていたのです。

 他の生存者と合流した清でしたが、彼らを待っていたのは水も食料も無い状態での漂流生活でした。容赦なく照りつける日差しの下で、生存者たちは見る見るうちに衰弱していきます。赤ん坊が死に、海に落ちた老婆がサメの餌食となる生き地獄。しかしかろうじて清は耐えぬき、運よく救助され生還を果たしたのです。

 沖縄の家に戻った清でしたが、憲兵から対馬丸沈没について話すのはスパイ行為だと脅されており、母親に友だちはどうなったのかと訊かれても答えようとはしませんでした。

 そして1か月後、沖縄は大空襲を受け清の父親が死亡。母親とともに逃げ出した清は、燃え上がる那覇の街を見ながら、絞り出すような声で対馬丸が沈んだことを母親に伝えたのでした。

 エンドロールでは、実際の対馬丸事件で亡くなった児童の名前が延々と流れ続け、このアニメの中の出来事が、現実だったことを思い知らされます。この戦慄の光景をいま学校で見せたとしたら、子供たちはどのような反応を示すでしょうか。

『対馬丸 -さようなら沖繩-』は、映画を見ている現代の子供たちと同じ年頃の子供たちまでもが、理不尽な恐怖と死に追い詰められる……そんな戦争の事実と教訓を教えてくれる作品です。このような作品は語り継がなければいけないものだと、筆者は確信しています。

(早川清一朗)

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