「妥当！」「大げさじゃね？」 残酷シーンでBPOにクレームが入った（？）アニメ

■深夜放送でも問題視？

　残虐・性的描写、未成年キャラの喫煙や自転車のふたり乗りなど、アニメへクレームが来る理由は多種多様に存在します。なかには、ショッキングな内容でBPO（放送倫理・番組向上機構）の議題に取り上げられたり、視聴者の苦言がBPOのホームページに載せられたりしただけで話題になった作品もありました。残酷シーンが問題視された例を、いくつか振り返ります。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

　2023年7月に最終回を迎えた最新ガンダムアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』では、シーズン1の最終話のガンダムの手で人間を押しつぶすシーンが大きな話題となりました。主人公のスレッタ・マーキュリーが、ミオリネ・レンブランを救うためにテロリストを殺したのです。

　ガンダムの手の下に、まるで落として割れた水風船のように血が広がり、分離した腕が飛んでいる様も描かれるショッキングな描写でした。BPOの公式ホームページの「第253回青少年委員会 議事概要」によると、23年1月にこのシーンについて「議論」が行われたそうです。「小学生の子どもと見ていたが、あまりにショッキングなシーンに言葉を失った」などの意見が載っていました。

　同作が日曜の17時台に放送されていたことや、学園が舞台のストーリーであり、残虐描写を予期していない視聴者が多かった、というような点も議論になった原因でした。ただ、このケースではBPOで議論は行われたものの、問題のある可能性が高い場合にその後行われる「討論」や「審議」へは進みませんでした。もしBPO審議に進んでいたら、さらに大きな話題となっていたかもしれません。

『HUNTER×HUNTER』

　人気作『HUNTER×HUNTER』は、2011年から開始されたTVアニメ第2作で、放送時間帯が変わる事態がありました。きっかけは「キメラ=アント編」での「残虐・グロ描写」と言われています。捕食した生き物の能力を受け継いだ子供を産む危険生物・キメラアントとの戦いを描いたシリーズで、『HUNTER×HUNTER』のなかでも特に残虐描写が多いです。

　2作目のアニメ『HUNTER×HUNTER』は、関東広域で日曜日の10時55分という、子供も観やすい時間帯に放送されていました。まだ「キメラ=アント編」が始まったばかりの2013年5月に、BPOが公式サイトで紹介した意見のなかには、「休日の午前中に放送されるアニメで小学生の子どもが観ていたが、グロテスクさに驚いた。大人でも目を背けたくなる映像で、この時間帯に放送するアニメに相応しくない」と、『HUNTER×HUNTER』に向けたと思われるようなクレームがあります。

　そして同作は2013年10月から、放送時間を火曜日の深夜1時29分に変更となっています。残酷描写が多いから深夜帯に移動した、とははっきり明かされてはいませんが、当時ネットには「これはしょうがない」「むしろ対応が遅い」「深夜にして遠慮なく残酷な話を描けるようになったし正解」と、放送時間の変更を妥当とする声も多くありました。

『いぬやしき』

　実写映画化もされた人気マンガ『いぬやしき』のアニメも、深夜帯に放送していたにもかかわらず、BPOへのクレームが入り話題になりました。『いぬやしき』は宇宙人によって機械の身体に改造された初老男性・犬屋敷と、高校生・獅子神が激闘を繰り広げるSF作品です。問題となったのは、機械の身体になって生きている実感が味わえない獅子神が、定期的に知らない家に侵入し、次々に住人を殺していくシーンでした。

　アニメ『いぬやしき』が始まった2017年10月の視聴者からの意見としてBPOが載せたもののなかには、「アニメで、知らない家に侵入して家族を次々に殺すというシーンがあり、見ていて残酷で不快だった。深夜の時間帯でも録画で子どもが見て悪影響が及ばないか心配だ」という文言が掲載されています。

　この意見によってアニメ『いぬやしき』に何か影響があったというわけではないですが、深夜に放送していても、「録画で子供が見る可能性」に触れていた苦言ということで、当時ネットでは「その通りだわ」「ド正論」というような肯定意見と、「これは各家庭の裁量で対応する範囲では？」「見せたくないなら録画を親がチェックすればいいんじゃ」などの反論意見が上がり、話題になりました。

（LUIS FIELD）