イヤミか貴様ッ！ 『刃牙』範馬勇次郎がブチギレて読者は吹き出した笑撃シーン

■地団太を踏んでも怒髪天を突いても面白い！

　格闘マンガ　『刃牙』シリーズにおいて、作中最強の存在である範馬勇次郎ですが、ネット上では「勇次郎は笑える場面多い」という意見を多く見かけます。特に弱者に「してやられた」際にみせる勇次郎の激しすぎるリアクションは、抜群の「笑撃」を提供してくれているのです。

　勇次郎が意外なほどあっさり「逃げられた」のが、第2部『バキ』での一幕でした。勇次郎はホテルに現れたマホメド・アライJr.に、彼の父マホメド・アライがアントニオ猪狩相手に苦戦した、寝ころんで相手を待ち構える「アライ・猪狩状態」の戦法をどう打開するのか試そうとします。

　しかし、寝そべる勇次郎に対し、アライJr.は「格闘技はそもそも弱者が強者から身を守るために発生したもの」「あなたが寝てくれるならボクは部屋を出るまでです」と言い残し、部屋を去ります。意表をつかれた勇次郎は、寝転がったままアライJr.を見送ったあと、怒りに燃えて追いかけますが、時すでに遅く、アライJr.の姿はありませんでした。

　やり場のない怒りから、勇次郎が言葉にならない叫びをあげて思いっきり床を踏みつけると、宿泊客がテロと勘違いするほど、大きくホテルを揺らします。この場面には、ネット上で「まさかの放置プレイ」「桁違いの地団太」など、してやられた勇次郎とそのリアクションを面白がる声が出ていました。

　第3部『範馬刃牙』では、勇次郎は息子・刃牙から親としての責任を指摘をされ、「イヤミか貴様ッ！」とキレ、ネットミームとしても有名な場面を生み出しています。

　さまざまな強敵と戦って成長した刃牙は、長年の目標だった勇次郎との戦いに挑む決意を固めました。しかし、刃牙が望んだのは、「決闘」ではなく「親子喧嘩」だっため、まずは自宅に勇次郎を招いて食卓を囲みます。地上最強の生物とその息子が、ちゃぶ台を囲んで食事をする光景は、とてもシュールで多くの面白いエピソードも生まれましたが、ここではまだ「親子喧嘩」には至りません。

　そして勇次郎は、刃牙を高級レストランに招待します。しかし、刃牙はラフな普段着のまま高級レストランを訪れており、意外とマナーはしっかりしている勇次郎は「ジャケットの着用は必然ッッ」と親らしく苦言を呈しました。しかし、戦う技術だけを仕込まれてきた刃牙は「ちゃんと教えられたことなかったし」と返し、勇次郎は「イヤミか貴様ッッ」とキレたのです。

「イヤミか貴様ッッ」のコマは、勇次郎の表情、言葉のチョイス、吹き出しの迫力などの要素が噛み合って、一度見たら忘れられないひとコマになりました。インパクトと汎用性の高さから、ネットミームとしても多く使われているこの場面は、勇次郎を代表する「笑劇シーン」のひとつと言えるでしょう。

　クローン技術と降霊術で蘇った宮本武蔵と、現代の格闘家たちとの闘いが描かれた第4部『刃牙道』では、実戦武術家・本部以蔵が、勇次郎をキレさせた笑撃シーンがふたつ登場します。

　本部は、現代の格闘家たちは何でもありの殺し合いに慣れていないため、彼らがその道の達人である宮本武蔵と戦うのは無謀と考え、彼らを「守護（まも）る」決意を固めました。そして、勇次郎であっても守護る対象として例外ではなく、本部はホテルにいる勇次郎を訪ねると、堂々と「安心していいんだ」「君らの身は俺が守護る」と宣言したのです。

　本部の言葉は、生まれてから一度も守られた経験がない勇次郎の逆鱗に触れました。勇次郎は「殺゛し゛て゛や゛る゛～！！！」と、まさに怒髪天を突いて激怒し、その目には涙すら浮かべています。

　実力的には本部が瞬殺されるような状況ですが、煙玉を使うことで、本部は勇次郎の前から逃げ去ることに成功しました。勇次郎が格下である本部に手玉に取られ、怒りと悔しさから涙まで浮かべるという衝撃的な光景です。見開きで描き込まれた勇次郎の顔のアップは、何度見ても笑えます。

　その後、実際に勇次郎と武蔵の戦いに飛び込んだ本部は、「無刀での二天一流」を解禁した武蔵の一撃から、勇次郎を守護りました。勇次郎は飛び込んできた本部を、「この馬鹿ァ！！！」と言いながらビンタで吹っ飛ばすという、まるで女性のような言動を取っています。作中で言及はされていませんが、SNS上では「初めて自分を守護ってくれた本部に、勇次郎が女性化したのでは？」という意見もあり、賛同の声と笑いが起こっています。

（SU_BU）