アムロ・レイは沖縄出身？ 『ガンダム』キャラクター名の元ネタ 命運までが似ているケースも

■沖縄の人名かと思いきや？

　登場から40年をこえて記憶され続けるガンダムの主要キャラクターには、そのネーミングに秘密があります。あまり知られていない名づけの由来について紹介します。

●アムロ・レイは安室零？

『機動戦士ガンダム』の主人公、アムロのネーミングにはいくつかの説があります。ひとつは沖縄に安室（あむろ）という苗字があることから、沖縄にルーツのある日本人との説です。人気歌手の安室奈美恵さんが沖縄出身ですね。

　しかし本当の由来は異なります。実はホワイトベースのパイロットはみんな旧日本軍の戦闘機から名前をもらっています。アムロはというと、大日本帝国海軍のゼロ戦の開発コード「A6M」から名づけられました。「えーろくえむ」が「あろむ、あむろ」、零式艦上戦闘機なので合わせて「あむろ・れい」になります。

●カイ・シデン

　皮肉屋のカイについては、すぐに名前の由来に気づいた人も多いのではないでしょうか。彼の名前は戦争末期に開発された局地戦闘機、紫電改（しでんかい）を分割して並べ替えたものです。開発コードをもじったアムロと比べると分かりやすいですね。

●ハヤト・コバヤシ

　ガンキャノンのパイロットのハヤト・コバヤシ。極めて一般的な日本人名ですが、彼の名前は四式戦闘機の愛称、疾風（はやて）に由来します。こういったネーミングは戦後の日本人だったらすぐに気づいたことでしょう。

●リュウ・ホセイ

　ガンタンクのパイロットを務める巨漢、リュウ・ホセイの名前は、戦争末期に作られた多任務艦上攻撃機、流星（りゅうせい）から取られています。「流星」は雷撃や爆撃がこなせる機体ということで、火力に優れたイメージを連想させます。ガンタンクのイメージにぴったりですね。格闘戦に優れたゼロ戦のガンダムと比較すると、ネーミングの由来と作品内での役割がリンクしているようです。

■実はフランス出身？　シャア・アズナブル

新世代のニュータイプとして期待されていたカミーユとともに、シャア（クワトロ）とアムロが描かれる、劇場版『機動戦士Ζガンダム -星を継ぐ者-』キービジュアル 　（C）サンライズ

　以前、富野監督がテレビに出演した際にシャアの名前の由来を聞かれ「しゃあ！ってくるからシャアなんだよ」と答えたことがありました。場の空気や話の流れからして、真に受ける人はまずいないと思われますが、この回答は富野監督流の煙幕のようなものです。本音をくらましたと考えたほうがよいでしょう。

　シャア・アズナブルの名前は世界的に有名なフランスのシャンソン歌手、シャルル・アズナヴールから取られています。彼は来日してコンサートを開いたこともあり、2004年に旭日小綬章を受勲しました。

●カミーユ・ビダン

『機動戦士Zガンダム』の主人公、カミーユ・ビダンは女性的な響きの名前にコンプレックスを抱えた青年です。物語の序盤では、名前を揶揄（やゆ）されると相手が軍人だろうと殴りかかるほどの激情家として描かれました。

　そんなカミーユの名前は「考える人」で知られる有名彫刻家ロダンの愛人、カミーユ・クローデルから取られました。彼女は優れた才能の持ち主でしたが、ロダンとの関係が破綻してから統合失調症になり、精神病院で生涯を終えました。

『Zガンダム』の最終回でカミーユが精神崩壊してしまったのは、カミーユ・クローデルの生涯ともリンクしているように見えます。

●ジュドー・アーシタ

　最後に『機動戦士ガンダムZZ』の主人公、ジュドー・アーシタの名前の由来を紹介します。ナイーブなカミーユとは真逆なジュドーの名前は、日本柔道最強の男と呼ばれた山下泰裕さんから取られました。「柔道・山下」がジュドー・アーシタになったのです。不屈の柔道家の精神が、逆境にあっても常に明るく前向きなジュドーに反映されているようです。

「ガンダム」には人名に限らず不思議な響きの名前が数多く登場します。作中の役割やキャラクター性、果ては命運までが元ネタと深く関わるケースも多くあるので、興味を持たれた方は調べてみるのも面白いでしょう。作劇術の視点から「ガンダム」ユニバースを楽しむのも新鮮です。

（レトロ＠長谷部 耕平）