ファン熱狂、根強い人気の『ドラクエ4コマ』 黎明期支えた石田和明氏が当時を語る
マグミクス / 2019年10月17日 16時40分
■「月刊少年ガンガン」創刊につながる、伝説のマンガシリーズ
人気RPG『ドラゴンクエスト』を題材とし、複数の漫画家による4コママンガを収録した『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場(以下、ドラクエ4コマ)』は、1990年4月にエニックス(現:スクウェア・エニックス)から第1巻が発行されました。その人気から『ドラクエ4コマ』はシリーズ化され、「月刊少年ガンガン」刊行にもつながります。
のちに『ドラゴンクエスト』だけでなく、さまざまなゲームの『4コママンガ劇場』が発行されました。「アンソロジーコミック」の先駆けともなった『ドラクエ4コマ』の黎明期を支えた作家陣のひとり、石田和明先生に当時の思い出を聞きました。
ーー石田先生が『ドラクエ4コマ』の第1巻に参加されたきっかけを教えて下さい。
知人のつてでエニックス出版局(編集部注:当時のエニックスの出版部門)の編集者を紹介されて、「エニックス主催のマンガ賞に応募してみないか」と言われました。賞は取れなかったのですが、『ドラクエ4コマ』の企画で描いてみないかと、声をかけていただいたのがきっかけです。
ーー石田先生といえば『ドラクエIII』の女魔法使いや女武闘家が人気です。ご自身のネタで、印象深いものを教えて下さい。
やはり、読者からの反響が大きかった「バラモスをカバと勘違いする」ネタと、「女魔法使いがぬいぐるみでドラゴラムする」ネタです。
ーー『ドラクエ4コマ』は雑誌や攻略本くらいしか情報源がなかった当時の子供たちに、大きな影響を与えました。
ありがたいことです。ネットで、『ドラクエIV』の女勇者が僕のせいで「ブロッコリー」と呼ばれているのを最近になってから知りました(笑)。
ーーどのネタが影響したのでしょうか?
アリーナが食事中に、ブロッコリーと女勇者の髪型を見比べてしまうというネタです。
■30年近く経った現在もファンと積極的に交流
石田和明先生が表紙を担当した『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 ガンガン編』第3巻(撮影:マグミクス編集部)
ーー作者のあとがきにあたる『楽屋裏』も人気で、そこでネタ出しの厳しさを語っている作家が多くいました。石田先生はいかがでしたか?
ネタの採用基準がとにかく厳しかったのは事実です。何百本もネタを出せば、脳がスッカラカンになります(笑)。ギャグマンガというのは本当に難しいです。
ーーネットが普及していなかった当時、読者とのコミュニケーション手段はファンレターだけでした。印象に残っているファンレターは?
ある読者からの手紙に、「自分の家はゲームは禁止で、学校で友達がみんな『ドラクエ』の話をしているのに自分だけ話の中には入れなくて、ずっと寂しい思いをしていました。でも、『ドラクエ4コマ』のおかげで友達と『ドラクエ』の話ができるようになりました」と感謝の言葉がつづられていました。
「マンガを描くことが、誰かのためになるんだな」と、しみじみ思いました。
ーー石田先生は近年、オフ会を開くなどTwitterをきっかけにしてファンと積極的に交流なさっています。作家と読者の距離が近くなったことについてどう思われますか?
単純にうれしいしいです。マンガ家というのは褒められればそれが即、創作の励みになりますから。もし当時Twitterがあったら、もう少し頑張れたかも(笑)。
■「お色気」描写も? 女性読者にも人気の『レニフィルの冒険』
単行本化された『レニフィルの冒険』は現在、電子書籍で読める(石田和明先生提供)
ーーエニックスの「月刊少年ギャグ王」で連載され、単行本化もされた石田先生のオリジナルマンガ『レニフィルの冒険』の思い出を教えて下さい。
いい思い出ばかりです。自分のオリジナルマンガでコミックスが出せたというのは、ある意味自分が生きた証です。『レニフィルの冒険』は一生の宝です。
ーー『レニフィルの冒険』はしっかりと設定された王道ファンタジーであるだけでなく、少し「お色気」要素がある点も人気でした。
「お色気」シーン、ありましたね(笑)。でも、そういう「お色気」を描くときも、「セクハラ」にならないように十分気を付けたつもりです。
ーー石田先生が「お色気」を描くのが意外だという読者の声もありますが……。
ローティーンの男の子が、「Hなこと」に興味を示すのは自然なことですよね。それを全部「だめ!」と取り払ってしまうのは、僕としては反対です。ただ、どうしても少年マンガの「お色気」シーンは「セクハラ」が中心になってしまいます。
「セクハラ」というのは女の子の人格を無視する行為です。ですが、「女の子にも人格があるんだ」ということを示したうえでの「お色気」描写であれば、僕はありだと考えています。
ーーやはり男性読者からの人気が高いのでしょうか?
僕も意外だったのですが、ありがたいことに女性の読者さんもとても多いです。Twitterで、「レニフィルを読んでいました!」とフォローしていただけることがあります。
ーー現在のお仕事について教えて下さい。
妻の路みちる(編集部注:イラストレーター。エニックスの『4コママンガ劇場』にも参加)と共同で、教科書などの書籍のマンガやイラスト、企業の広告マンガなどを手掛けています。
ーー『ドラクエ4コマ』の復刊を望む声は多く聞かれます。長く応援されている証拠だと思います。
復刊は難しそうですが、30年ほど経った今でも、Twitterなどで「『ドラクエ4コマ』を読んでいました」とお言葉をいただきます。多くの人の心に残る仕事に関われたのは、本当に幸運だったと思います。
(C)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
(マグミクス編集部)
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