ボロクソ言われても共感？『Zガンダム』カミーユとクワトロの不思議な関係が生まれたワケ

■「天性のニュータイプ」カミーユと、クワトロ（シャア）の共通点とは？

『機動戦士Zガンダム』は、前作の『機動戦士ガンダム』の一年戦争から7年後のグリプス戦役を描いた作品です。同作には初代ガンダムのキャラクターが再登場したり、スタイリッシュな可変モビルスーツが登場したりと、たくさんの見どころがありました。

　なかでもファンの注目を集めたのが、主人公であるカミーユ・ビダンと、クワトロ・バジーナ（シャア・アズナブル）の関係性です。部下と上官と立場の違いがありながら時には激しく衝突し、次第に良い関係を築いていきました。

　クワトロの正体は、前作で「赤い彗星」の異名で名を馳せたシャア・アズナブルです。パイロットとしての技能が高く、カリスマ性を兼ね備えた有能な人物ですが、実は復讐に身を捧げた亡国のプリンスでもありました。

　一方、カミーユも『Zガンダム』の作中で両親を亡くします。それ以前から、カミーユの父親は外に愛人を作り、母親は夫の不倫を知りながらも無関心で仕事に没頭するという、劣悪な家庭環境に育ちました。

　互いに家族との縁が希薄な者同士、どこか惹かれる部分があったのかもしれません。家族愛に飢えていたカミーユにとって、クワトロは自分のことを理解し、頼りになる仲間で、またクワトロにとってもカミーユは自分と似た境遇を生きる弟分のように見ていたのかもしれません。

　また、クワトロ（シャア）を語る上で欠かせないのが、前作でのララァ・スンとの出会いと別れです。そのことが尾を引いているのか、シャアは優れたニュータイプの資質の持ち主と接触を持とうとする傾向にあり、その点においてもカミーユはうってつけの相手でした。

　また、シャアの本名は「キャスバル・レム・ダイクン」で、ジオン・ズム・ダイクンの遺児であり、ジオンの正統な後継者です。『Zガンダム』ではサングラスで目元を隠し、クワトロ・バジーナを名乗ってエゥーゴに参加しました。

　そんなクワトロは、『Zガンダム』の序盤でカミーユに、「シャア・アズナブルという人のことを知ってるかな」と問いかけます。この時点ではクワトロの正体を知らないカミーユは、「尊敬してますよ」「あの人は両親の苦労を一身に背負ってザビ家を倒そうとした人ですから」と率直に尊敬の気持ちを口にしました。

　そして、さらにカミーユは「でも、組織にひとりで対抗しようとして敗れたバカな人です」と続けます。

　ずっとジオンの正統後継者、あるいはダイクンの遺児などと、敬意をもって見られてきたシャアにとって、歯に衣着せぬカミーユの言葉は、ある意味新鮮に感じたはずです。だからこそカミーユの「バカな人です」という発言に、クワトロは「正確な評論だな」「その人（シャア）はカミーユくんの立場とよく似ている」と返し、自分の体験談を聞かせたくなったのかもしれません。

　その後クワトロとカミーユは作中で激しく衝突する場面もありましたが、クワトロの正体が判明してからもカミーユは特別視することなく、一人の人間として接していたように思えます。

　そんな関係が構築できたからこそ、クワトロはカミーユを見守り、良い方向に導こうとしたのでしょう。一方、カミーユも物語が進むにつれてクワトロに信頼を寄せ、時にはカミーユがクワトロを叱咤する場面もありました。

　家族の愛情に飢えていたカミーユと真の理解者を求めていたシャアは、互いが求めていたものを補完し合った結果、あの絶妙な関係性が生まれたのかもしれません。

（マグミクス編集部）