【漫画】娘が心配で上京した母 駅で出会った男性に「タヌキ」にされる 真意がわかって「心が浄化」？【作者インタビュー】

■娘の無事を喜ぶ母親の涙

　奈川トモさん（@nagawatomo）のマンガ『お前、タヌキにならねーか？』が、改めて注目を集めています。タヌキの「こがね丸」が、山の仲間を増やすために街で人間をスカウトしていく物語です。「ダ・ヴィンチ」と「ニコニコ」が運営する「次にくるマンガ大賞 2023」では、Webマンガ部門にノミネートされました。

　作品のエピソードの1つとして、Twitter（X）で『上京してきたお母さんと化けタヌキ』『タヌキに化けた娘とその母』の前後編が公開されています。初期から描かれている「ユキ」の母親が登場し、タヌキの姿になった娘と再会するお話です。ユキは初登場時には自死を試みようとしていましたが、今回、母にも本当のことを打ち明けたところ……。

　読者からは「お母さんも良い人だ」「涙が出ました」「心が浄化される」「病んでる心に染み渡る」など多くのコメントが寄せられました。前編の投稿には2.2万いいねと2500件のリツイート（リポスト）、後編の投稿には2.6万いいねと2900件のリツイート（リポスト）が集まる話題作となっています。

　作者の奈川トモさんに、お話を聞きました。

ーー今回の両作品のお話は、どのように生まれましたか？

　ヒロインのお母さんが出てくる話は、この作品の連載が決まった時点でいずれはやりたいと思いずっと考えていました。

ーーユキのお母さんについて、キャラクターづくりで特に意識したポイントがあれば教えて下さい。

　ユキのお母さんということで、見た目や性格も読者さんが「それっぽい」と思うようなキャラクターになるように意識しました。髪型やアクセサリーなど、いろいろなパターンを出してから決め、それに合わせてタヌキ形態のときもユキに似せつつ区別がつくように試行錯誤しました。

ーー登場キャラクターたちの「表情」が特に魅力的な回でした。お母さんの「生きてさえいてくれたら」の言葉に「うん…」と答える「タヌキの状態」のユキの顔も印象深く感じましたが、このシーンの描き方ではどのようなことに気を配りましたか？

　魅力的と仰っていただけてうれしいです。ありがとうございます。この回はいつにも増していろいろな感情が入り混じる回だったので、表情も納得がいく作画になるまで何回も描き直しました。

　悲しい出来事や、あったかもしれない別れを考えると苦しい感情が出てきてしまうと思います。ですが、それも踏まえて今がある喜びや、これからどう生きるのかを前向きに感じられる印象になるように気を付けました。

『お前、タヌキにならねーか？』第5巻（一迅社）

ーー今回の作品に対する読者からの反応では、どのような声が印象に残っていますか？　また、タヌキシリーズ全体への読者からの感想ではいかがでしょうか？

　読者さん自身のお母さんだったりお子さんだったり、ご家族との関係に重ねて感想を下さった方も多くおられました。シリーズ全体を通しても、ご家族のことやご自身の心境の変化を伝えて下さる方も多く、自分と同じように苦しんでいる方に幸せになってほしいという想いを綴って下さった方も少なくありません。

　自分が作品を描くことで逆に誰かを傷付けてしまうのではないかと思う怖さもあるのですが、誰かの幸せを願う読者さんの想いを大切に作品を作っていきたいと考えています。

ーー『お前、タヌキにならねーか？』は、2023年7月に第5巻が発売されました。そちらの収録内容や見どころもご紹介をお願いします。

　今回も笑いとほっこりを盛りだくさんに、ほんの少しのシリアスも混じえてタヌキとキツネとイタチが活躍します。いつものようにスカウトも。

　単行本では必ずカラーページもあるのですが、5巻は雨紺のお話のカラーページを特に見ていただきたいです。描き下ろしのお話に加え、イラストも5巻のためにいろいろと描き下ろしました。懐かしいキャラも再登場しているのでそちらも楽しんでいただけましたら幸いです。

ーー「次にくるマンガ大賞2023」にもノミネートされています。ご感想やファンへのメッセージなどがあればお願いします。

　実は2021年にもノミネートさせていただいていたのですが、まさかその2年後に再びこのような機会をいただけるとは思わず大変驚きました。もともとあった構想ではあるのですが、お話が進むにつれて読者さんが離れていってしまうのではないかという不安は常にあったのですが、変わらずに応援し続けてくれる方が多くいて下さりとてもうれしいです。

　投票にご協力下さった皆様、誠にありがとうございます！　これからも楽しんでいただける作品になるように、精一杯頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします。

（マグミクス編集部）