『ガンダム』ミライを愛した「カムラン・ブルーム」は漢の手本! 『逆襲のシャア』にも登場
マグミクス / 2023年8月30日 6時10分
![『ガンダム』ミライを愛した「カムラン・ブルーム」は漢の手本! 『逆襲のシャア』にも登場](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_180217_0-small.jpg)
■「なんでカムランがいる?」
ガンダムファンのなかには、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にカムラン・ブルームが登場したのを最初に見たとき、「え? これってカムランだよね?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
もともとカムランは『機動戦士ガンダム』第33話「コンスコン強襲」で初めて登場した人物です。たった2話しか登場してはいませんが、ミライ・ヤシマの元婚約者であり、印象的な言動も多く、一定の存在感を持っています。
とはいえ端役であることに変わりはないので、筆者にとっても「逆襲のシャア」での再登場はかなり意外でした。ミライに想いを寄せた男性キャラは複数いますが、そのひとりであるカムランは非戦闘員でありながら自らの愛を貫いて行動したために、強い印象を残すことになるのです。
『機動戦士ガンダム』に登場した際のカムランはサイド6で査察官を務めており、入港したホワイトベースに乗船して武器の封印を行っています。中立を保つサイド6の役人のため、ブライトからホワイトベースの修理が可能かと打診されても即座に断りを入れるなど、冷淡な態度を取っていました。いかにも役人らしい役人と言えるでしょう。
しかしホワイトベースのブリッジで、婚約者のミライ・ヤシマと再会してからは「人間」としてのカムランが一気に顔を出します。ミライの肩に手を置き、満面の笑みを浮かべる。サイド7へ移民することを知らされなかったと声を荒げる。ミライの消息を人を使って捜させるなど、言葉や態度の端々からミライのことを愛していることがわかるのです。
ミライは自分自身で捜しに来なかったことを咎めていますが、転居先を知らせずに引っ越してしまった人の居場所を探すのは現代の日本国内でもかなり大変です。宇宙規模に探索の手を広げる必要があるのなら、個人で動いてもどうしようもありません。
ましてや戦争の最中に役人が持ち場を離れるわけにはいきません。しかもミライの後を本気で追ったとしたら、ジオン軍がうようよしている地域をさまよう必要があるのですから、さすがにそれはミライが無茶を言い過ぎていると感じてしまいます。ホワイトベース隊の精神的な支柱のひとりであるミライがわがままを言う、珍しいシーンです。
■カムランこそ真の漢(おとこ)である
ミライをめぐる恋のライバルだったブライト・ノアとカムランは、『逆襲のシャア』で再び接点をもつことになる。画像はブライトを主人公としたコミカライズ『機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男』(著:葛木ヒヨン/カドカワコミックス・エース)
ここからカムランはミライに自分とともに来るよう説得しますが、見かねたスレッガー中尉に割り込まれ、眼鏡を取られた上に小突かれ吹っ飛ばされてしまいます。しかし心配して駆け寄ったミライに対しては「ご婦人の口説きようがまずいという訳さ」と答えており、自分より大柄な軍人であるスレッガーを前にしても、ひるんだ様子はありません。情けない描写もありますが、実のところ精神的にはなかなかの強さを見せています。
その後もパトロール機に乗って戦闘に割り込み中止させる、父親の力を借りて武器の封印を破った件をもみ消そうとするなど、ミライのためにギリギリまで自分ができることをやり切る姿勢を崩しません。これだけ真摯に尽くしながらも、命がけの戦争を生き延びてきたミライとは意識のすれ違いが起きてしまい気持ちが通じなかったのは気の毒な話です。
最後まで誠意を見せようとするカムランは、サイド6を出港するホワイトベースを自家用機で先導するという、命がけの行動に出ます。ミライは拒否しようとしましたが、スレッガー中尉が今度はミライをひっぱたき、カムランがどれだけの覚悟で先導を申し出たのかを訴えたのです。カムランの意志を悟ったミライは申し出を受け入れました。無事に命がけの先導を終えたカムランはミライの無事を祈りながら、ホワイトベースを見送ったのです。
『逆襲のシャア』で再登場したカムランは出世を果たしていたようで、会計監査局の人間として登場。シャアにアクシズが譲渡された会議に居合わせます。シャアがアクシズを使い何かをすると感じ取ったカムランは、ミライの夫であるブライト・ノアにひそかに接触し、核弾頭15発を託したのです。このときカムランは「現行の連邦政府が生き続けたら、終身刑ですね」と語っており、ミライに生きて欲しいがために自分が罪人になっても構わないという強い意志で行動しています。人の妻となった愛する人のためにここまでできるのは、漢(おとこ)のなかの漢と言えるでしょう。
なお、この後の顛末はマンガ『機動戦士ガンダムUC 虹に乗れなかった男』で描写されており、ブライトがある条件を呑むことにより、カムランは無罪となりました。カムランとブライト、同じ女性を愛した男同士の運命もまた、交わり続けていたのです。
(早川清一朗)
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