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『ブラック・ジャック』みんなマジだと思ってた 「あったら怖い奇病」3選

マグミクス / 2023年9月4日 19時10分

『ブラック・ジャック』みんなマジだと思ってた 「あったら怖い奇病」3選

■情報が少ない時代、奇病はリアルに響いた

 手塚治虫先生の代表作『ブラック・ジャック』が1973年に「週刊少年チャンピオン」で連載開始されてから、もうすぐ50周年を迎えます。

作中では、天才外科医ブラック・ジャック(以下、B・J)が数々の奇病に立ち向かいますが、その病気のなかには手塚先生が創作した、いわゆる「オリジナルの病」もあります。手塚先生が医学博士の学位を持っていることもあり、リアルタイムで読んでいた時代は、「世界にはいろんな病気があるんだな」と信じた読者も少なくなかったでしょう。そこで、『ブラック・ジャック』に出てきた「マジだと思っていた、あったら怖い奇病3選」を振り返ります。(※内容は少年チャンピオンコミックス参照)

●病名「人面瘡(じんめんそう)」:第5巻39話「人面瘡」

 ある時、顔が異常に腫れた男が、「人面瘡」だと言って助けを求めてきました。男は二重人格者で、B・Jは精神的な原因があると考え、怒鳴り散らす人格のときに拳銃を撃つ荒療治でその人格を消します。そして、男は整形手術で元の顔を取り戻しますが、実は指名手配中の殺人鬼でした。気づいたB・Jを殺そうとした瞬間、なんとまた人面瘡を発症します。男は前途を悲観し、崖から身を投げ自殺します。B・Jは人面瘡の顔の方が、「良心のときの顔だったのかもしれない」と推察するのでした。

 このエピソードは、物語の冒頭で実例が紹介されます。昭和14年に石川県でヒキガエルを殺した少年のハラに、そのヒキガエルの液体が付着し、ハラにカエルの顔が現れた。虫を与えるとうまそうに食べた……といった内容でした。もちろんフィクションですが、妙にリアリティがあったため、実在する珍しい病気だと信じた読者は多かったようです。

 作中でB・Jが「レッキとした病名はないが、伝説や小説に出てくるねぇ」と言っています。実は、中国・唐の時代に書かれた「酉陽雑俎」という書物に「人面瘡」「人面疽(じんめんそ)」という記述があり、古くから妖怪・奇病として多くの読み物に使われています。日本でも江戸時代にはいくつもの読み物に使われていて、現代では横溝正史の短編推理小説のタイトルにもなっています。

●病名「グマ」:第11巻102話「99.9パーセントの水」

 安楽死を専門とする医師・Drキリコの妹が、B・Jに助けを求めに来ました。キリコが自分自身を安楽死させようとしていると言うのです。キリコは南米で、謎の伝染病「グマ」にかかりました。腹痛、下痢に始まり、最後は痩せ細って脳症状を起こし狂い死にするという奇病です。肝臓にたまる水には、病原菌も寄生虫も見当たりません。

 B・Jが肝臓を半分切り取ってその水を凍らせてみると、99.9パーセントは水だがアメーバの一種である奇妙な生物であると判明します。この気味の悪い生き物、もしかしたら地球の外から来たかもしれない、B・Jはそう言いましたが……。

この病気は、「南米アマゾン上流に広がっている伝染病」というのが、ちょっとしたフックでした。当時、未知の世界だったアマゾンへ乗り込むTV番組「川口浩探検隊」シリーズが人気だったことなども影響して、本当にありそうな病気だと思った読者も少なくなかったと思います。

■「人工心臓の故障」による病気?

●病名「本間血腫」:第15巻149話「本間血腫」

「本間血腫」収録の『ブラック・ジャック』第15巻(秋田書店)

 あるプロ野球選手が、「本間血腫」になります。心臓の左心室のなかに血の塊ができ、何度取り除いてもまたできてしまうという、世界に20数例しかない難病で、患者はみんな死亡しています。B・Jは病院からオペを依頼されますが、断ります。理由は師である故・本間丈太郎医師の手紙に、「手を出すな」と書かれていたからでした。

「本間血腫」は本間先生が挑んでも治せず、社会から「生体実験」だと非難されたいわく付きの病気です。師のかたきを討つため、B・Jは自作の人工心臓の移植手術を始めます。しかし、患者の心臓を見るとそれは精巧な人工心臓でした。本間血腫とは「人工心臓の故障による病気だったのか!?」。人工心臓を取り替えることなく閉胸するB・Jは、「医学の限界か」と落胆するのです。

 この病気は症例が少ないというのが、ミステリアスでした。心臓に血の塊ができるという病気は、実際にありそうとも思えます。この回は謎を残す物語で、この患者に移植された「人工心臓SR型使用20体の内No20 極秘 19××年×月×日」と書かれた人工心臓は、どこで誰が造って移植されたのか明確になっていません。実は、アニメ編で「B・Jの父が開発者」という話が制作されていますが、マンガでは最後まで触れられません。

 以上、「マジかと思った」というくくりで3つの病気を挙げました。オリジナルの病気はまだいくつもあります。

 たとえば「ブラック・ジャック病」(第21巻197話)は、アフリカの小さな国で、胃が萎縮、硬直して発作を起こしたときにはもう手遅れという奇病です。現地の医師が、彼なら治してくれると願いを込めてB・J病と名付けました。

 この物語は2話完結で、続くタイトル「落下物」で原因はヤムイモから検出された放射能であることが判明します。それは2、3年前に墜落した原子炉衛星の影響だとB・Jは確信しました。この「落下物」は封印作となり、少年チャンピオンコミックスには掲載されていないので「ブラック・ジャック病」しか読んでいない人は続きを知らずモヤモヤが残るはずです。ちなみに「落下物」は「文庫BLACK JACK Treasure Book」に収録されています。

 手塚先生は、『ブラック・ジャック』はリアルな医学を物語のメインとせず、命の尊さや人間の生き様を描きたかったそうです。その題材として、ときにはオリジナルの病気を作り、誰も知らない謎の奇病と戦う医師と患者と周囲の人たちといった人間模様を描いたのではないでしょうか。

(石原久稔)

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