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マグミクス / 2019年10月23日 19時40分
■スマホの大群が人間を襲う、前代未聞のパニック映画
インドで2018年に大ヒットした映画『ロボット2.0』が、日本でも2019年10月25日(金)から劇場公開されます。インド映画と聞くと、主人公たちが民族衣装姿で歌い踊り、上映時間が3時間以上ある長い長い映画……というイメージが思い浮かびますが、『ロボット2.0』はそんな先入観を粉々に砕いてしてしまう、新感覚のSF映画です。とにもかくにもVFXシーンがド派手で、ストーリーもお約束に縛られない予測不能なものとなっています。
製作費は日本円で、なんと90億円。歴史大作『バーフバリ』の前編後編を合わせた製作費73.5億円を上回り、インド映画史上最大の製作費を投じた超大作となっています。興収は『バーフバリ 王の凱旋』(2017年)に次ぐ、インド映画史上歴代2位を記録しました。ハリウッド映画『アベンジャーズ』(2012年)などでおなじみの特殊効果製作工房「レガシー・エフェクツ」が特殊メイクとアニマトロニクスを担当していることでも話題です。
主演俳優は日本でもヒットした前作『ロボット』(2010年)に続いて、“スーパースター”ラジニカーントが再登場します。日本でのインド映画ブームの口火を切った『ムトゥ 踊るマハラジャ』(95年)にも主演したラジニカーントは、今回も天才科学者バシーと最強ロボット「チッティ」の2役を演じ分け、上映時間2時間27分のなか、文字どおりスクリーンいっぱいの大活躍を見せてくれるのです。
ストーリーも一度観たら、決して忘れられません。インドでも広く愛用されているスマホが勝手に動き出し、まるで鳥のように空へ飛んでいくという怪現象が次々と発生します。町じゅうのスマホが消え、人びとは大騒ぎ。やがて無数のスマホはひと塊となり、巨大な怪鳥へと変身します。小さなバッタたちが群れをなすことで凶暴化するように、スマホが集合した怪鳥も街を襲撃するのでした。
ここでバシー博士(ラジニカーント)の出番です。バシー博士は、高性能すぎるがゆえに前作で封印されてしまったロボットのチッティを再起動させ、怪鳥退治に乗り出すのでした。チッティと怪鳥が激突するバトルシーンの過剰さは、もはや驚きを通り越して狂気すら感じさせます。
スマホが人間に襲い掛かるという『ロボット2.0』の設定ですが、これは日本ではまず不可能なアイデアでしょう。携帯電話を扱う通信サービス系企業はマスメディア全般に大量の広告出稿をしているので、広告主への配慮から日本の企業社会ではこのような企画
■「制作費高騰」「試写なし」…その理由が色々とすごい
映画『ロボット2.0』 街じゅうのスマホが暴走し、人類は危機に陥る
では、どうすれば、こんなに「はっちゃけた」映画がインドではできてしまうのでしょうか。『ロボット』『ロボット2.0』を買い付けた配給会社「アンプラグド」の代表取締役・加藤武史さんにインド映画の内情について語ってもらいました。
「インド映画を買い付けるのは大変です。気長に根気強く交渉しないと、ビジネスはまとまりません。前作では製作会社の重役たちが全員、政界の汚職事件に関わっていたことから刑務所送りとなり、製作側の担当者がいないことに愕然としました。
今回もやはり難航しました。前作を大ヒットさせたシャンカル監督は完璧主義者として知られ、『ロボット2.0』は2017年にインドで公開される予定だったのが、いつ完成するのか分からない状況になっていたのです。
ラジニカーントと対決する敵役がなかなか決まらなかったことも要因だったようです。一時期はアーノルド・シュワルツェネッガーとも交渉していたようですが、最終的には『パットマン 5億人の女性を救った男』(18年)の演技派アクシャイ・クマールに落ち着きました。
撮影がスタートしてからも、ラジニカーントが途中で4か月の休暇をとったり、シャンカル監督のこだわりもあって公開日がどんどんズレ込みました。インド映画史上最大の製作費と謳っていますが、実は製作期間が延び延びになったことも大きな原因なんです(笑)」(加藤さん)
加藤さんによると、『ロボット2.0』の製作スタジオの親会社は携帯電話を扱う企業だそうです。『ロボット2.0』には「電磁波は生き物に害を与える」などスマホ社会に警鐘を鳴らす台詞がありますが、親会社から問題視されなかったのか気になるところです。
「日本の映画界では公開前に関係者試写、その後にマスコミ試写を行うことがお約束になっていますが、インド映画ではきちんとした形で試写が行なわれないことが多いのです。今回は完成が遅れたこともあり、超大作にもかかわらず試写はありませんでした。シャンカル監督以外は、誰もどんな映画になるのか分からない状態だったのです。
インドでは話題作の公開1か月前くらいに“ミュージック・ローンチ”と呼ばれる音楽イベントが開かれ、劇中曲のお披露目がされるんですが、今回はラフマーンの新曲だけ紹介され、『ロボット2.0』の映像は流れなかったようです。仮に試写を行なっていても、インドではプロデューサーよりも監督のほうが強い権限を持っている上に、シャンカル監督は日本でいえば黒澤明監督か宮崎駿監督クラスの大巨匠なので、誰も内容に口を挟むことはできなかったでしょうね。
もちろん、映画はあくまでも娯楽と割り切っているインド社会の考え方も大きいと思います。日本映画ともハリウッドとも異なる、まったく予測できないシャンカル監督ならではの破天荒さを存分に堪能してください(笑)」
■主演・ラジニカーントは「不死身の存在」!?
映画『ロボット2.0』 ポスタービジュアル
ちなみに、吉幾三に似ていることでも知られる主演のラジニカーントは、1950年生まれの御年68歳。日本に比べてインドは平均寿命が短いこともあり、インドではけっこうな高齢になるとのこと。
しかし、心配はご無用です。ラジニカーントはモーションキャプシャーを使って、あらゆる動きや表情をすでにデジタルデータ化しており、もし体が動かなくなっても新作をつくり続けることが可能だそうです。
まもなく公開の『ロボット2.0』は、やっぱり色々すごすぎるインド映画の面白さを、改めて堪能できる作品になりそうです。
●映画『ロボット2.0』
監督・脚本/シャンカル 音楽/A.R.ラフマーン
出演/ラジニカーント、アクシャイ・クマール、エイミー・ジャクソン
配給/アンプラグド、KADOKAWA 10月25日(金)より新宿ピカデリー、渋谷シネクイントほか全国順次公開
(C)2018 Lyca Productions. All rights reserved.
https://robot2-0.com
(長野辰次)
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