「仮面ライダー」になりそこねた男・滝和也 ライダーマンや「3号」になるはずだった「幻の企画」とは?
マグミクス / 2023年9月12日 6時10分
■アメリカから帰国して1号・2号の改造手術で「ライダーマン」に?
初代『仮面ライダー』で1号2号の頼れる相棒として活躍したFBI捜査官・滝和也は、続編『仮面ライダーV3』でライダーマンになるという企画がありました。さらに、同じ番組である『仮面ライダー』でも、「仮面ライダー3号」になる計画までありました。なぜそれらは実現せず幻の企画となったのでしょうか?
1973年2月から放送が始まった『仮面ライダーV3』は、1971年の『仮面ライダー』の続編として当初からシリーズ最高視聴率を達成し絶好調でした。しかし、仮面ライダー1号・2号がV3である風見志郎に施した改造手術で備わったという「26の秘密」は、V3の魅力よりも弱さの方が目立ったことから苦情が寄せられていました。
そこで東映の平山亨プロデューサーは、「ライダー4号」を登場させる案を考えました。『仮面ライダー1971~1984 秘蔵写真と初公開資料で蘇る昭和ライダー10人』(講談社)では制作当時の企画書やメモが公開されています。
そのアイデアというのは、仮面ライダー1号・2号の相棒役だったFBI捜査官の滝和也がアメリカから帰国し、1号2号によって段階を追って腕、足、胸と改造手術を受けて、ついには「ライダーマン」になるという構想でした。しかし結果的にライダーマン登場のタイミングは遅くなって終盤となり、滝にかわって山口暁さん演じる結城丈二に変更されました。
時は遡りますが、企画段階で滝が仮面ライダーになるという構想は初代『仮面ライダー』放送時から作られていました。番組がスタートして1年半ごろ、シリーズの長期化を見越して3号ライダーを登場させ、あくまでも1号を主軸にして、2号3号が交替で1号のサポートをするというものでした。
その3号になる人物が滝和也です。1号ライダー・本郷猛役の藤岡弘(現在は藤岡弘、)さんが事故で長期離脱したために、急きょ登場したドラマオリジナルのキャラクターでした。何度も滝をライダーにする案を出しているこから、平山さんによる滝への思いの深さが伝わります。しかし新組織・ゲルショッカーの出現や少年仮面ライダー隊の結成などのイベントが生まれ、3号の企画もなくなりました。
放送では実現しなかったものの、その企画書が雑誌の編集部には渡っていたようで『別冊たのしい幼稚園』1972年10月号で仮面ライダー3号が新たな敵・ゴーストショッカーと戦うマンガが掲載されました。3号は1号2号とほぼデザインが同じですが、全身に赤いラインが走っていて、「V3」のデザインの原型になったそうです。
ライダー3号やライダーマンは実現しませんでしたが、滝和也を演じた千葉治郎さんはその後、1973年『ロボット刑事』や1975年『アクマイザー3』などで石森×東映作品に出演します。千葉さんはいずれも主人公がロボットやアクマ族など、変身しないヒーローの引き立て役として、あえて3枚目に徹していました。くしくも『仮面ライダー』で藤岡さん不在のときに登場した滝と同じような役回りでした。
千葉さんは千葉真一さんの実弟で、ジャパンアクションクラブ(JAC)の立ち上げメンバーでもあります。完全なアクション志向と思いきや、『証言! 仮面ライダー 昭和』(講談社)によると、もともと文学座の研究生出身でアクションよりも、感情に訴える演技を志向していたそうです。『ロボット刑事』の刑事役でも、元々は2枚目の設定から千葉さんの意向で3枚目キャラに変更したともいわれています。ヒーローよりも人間らしい3枚目の方に演じがいを感じていたのかもしれません。
幻に終わってしまいましたが、滝和也の3号ライダー、ライダーマンを見たかったファンも多いでしょう。類いまれなるアクションの才を持ちながら、けして変身ヒーローにならなかった千葉治郎さんの勇姿を、視聴者は忘れることはありません。
(LUIS FIELD)
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