『ワンピース』実写化は大成功! 秘訣は圧倒的な作品理解か?
マグミクス / 2023年9月18日 19時10分
![『ワンピース』実写化は大成功! 秘訣は圧倒的な作品理解か?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_183713_0-small.jpg)
■4日間で全世界視聴回数1850万回突破!
全世界累計発行部数5億部突破の大人気マンガ『ONE PIECE(ワンピース)』は、Netflixにて2023年8月31日から公開された実写版も高い評価を獲得しています。原作ファンをもうならせる高いクオリティの秘訣について考察しましょう。
●コスプレ感のないルックスがすごい!
まずは作品の第一印象を左右するキャラクターです。実写版をはじめて目にしたとき、その確かな質感に驚かされました。キャラクターの特徴が現実的な衣装で実現していたからです。
マンガやアニメのキャラクターは2次元での表現に特化しており、特徴を誇張したデザインが盛り込まれているため、実写で忠実に表現すると違和感を生じます。たとえば実写版『ONE PIECE』でタズ・スカイラー演じるサンジの眉毛が渦巻いていたり、ジェイコブ・ロメロ・ギブソン演じるウソップがピノキオのような鼻をしていたら、ドラマへの没入感が削がれたことでしょう。
●マンガっぽいのに違和感がない不思議なキャスト
現実寄りのデザインに落ち着いた麦わら海賊団のメンバーとは対象的に、原作に忠実なデザインであるにもかかわらず、まったく違和感のない人物もいます。例えばミホークは原作からそのまま抜け出してきたようなルックスです。サンジのぐるぐる眉毛が修正されたのに対し、不自然に整ったミホークの眉毛やもみあげ、ヒゲは原作そのままです。
海軍のネズミ大佐はネズミの耳のついた帽子をかぶって変なヒゲを生やしていますし、赤髪海賊団のラッキー・ルウは、現実にはありえない「マンガ肉」を持っています。シリアスなシーンが多いガープも、リアルだったら絶対に立場のある成人男性が公の場でかぶったりしないような変な帽子を身につけていました。
上記の例はいずれもマンガっぽい解釈なのですが、不思議と画面になじんでおり、修正すべき特徴とそうでない特徴の違いがどこにあるのか良く分かりません。実写版『ONE PIECE』はキャラクターデザインの取捨選択、解像度調整のさじ加減が絶妙だといえるでしょう。
なお2023年8月11日より公演されたアイスショー『ワンピース・オン・アイス』では、原作そのままのコスチュームが採用されています。同じ『ONE PIECE』を題材としていながらも、ドラマとアイスショーというメディアの違いによって、3次元に実装される表現の正解が異なるようです。
■キャラクターの解像度が高まってリアルに!
原作とは違ってサーカステントで決戦! 実写版バギーはちょっと怖い? 画像は実写ドラマ版『ONE PIECE』の場面カット (C)尾田栄一郎/集英社
●圧倒的なキャラクター理解
実写版『ワンピース』の成功はキャラクターのルックスだけではありません。人物像や内面がしっかり表現されています。原作エピソードとは異なる展開をしていても『ワンピース』らしさが損なわれないのはすごいことです。
特に素晴らしいのがルフィとコビー、ガープとゼフを対比させる演出の妙です。自由を求めるルフィと正義を求めるコビー、ルフィを庇護下に置こうとするガープと夢を追うようにサンジの背中を押すゼフ。ガープとゼフが飲み交わしながら昔話や世代論を語るシーンは原作にありませんが、いかにも『ONE PIECE』らしい演出です。
また実写版のガープが真面目なコビーを目に掛けているのは、ルフィを理想の海兵へと導くことができなかった代償行為のようにも見えます。原作では序盤に別れてしまって、いつの間にか強力な海兵に成長していたコビーは、実写版ではルフィとダブル主人公のように描かれました。海兵側の理屈を体現するコビーがいることで、海賊王を目指すルフィの熱量が上手く表現されています。
『ONE PIECE』のキャラクターの深みや多面性は、長期連載によって積み重ねた情報量によって獲得したものです。尺に限りのある実写版で原作キャラクターの魅力を再現できるだけの情報量を獲得する手段として、異なる関係性による複数の視点が採用されたように思えます。
もし実写版『ONE PIECE』が原作に忠実なストーリー展開をしていたら、たった8本のエピソードだけでこれだけの完成度には決して到達しなかったかもしれません。このようなアクロバットとも言える改変をしながらもファンに納得感を与えられるのは、キャラクターへの愛情や深い理解があってのことです。
●もちろん豊富な制作資金は欠かせない
実写版『ONE PIECE』の成功は豊富な資金力に支えられた「2次元から3次元への情報転換」と「深い作品理解」によるものだと思われます。このノウハウが一般化すれば、原作は日本、映像化は海外といった分業によるメディア展開が生まれる可能性が見えてくることでしょう。
世界的な成功を受けて、すでにファンの間では2期を期待する声が挙がっています。ゆくゆくは国家レベルの陰謀と戦ったり、地形を破壊するレベルの派手なバトルが繰り広げられたりするかもしれません。
覇気や自然(ロギア)系の能力をどのような表現で実写に落とし込むのか今から楽しみです。今後も原作と合わせて実写版『ONE PIECE』も見逃せません。
(レトロ@長谷部 耕平)
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