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【漫画】他人と合わせるのが正解? 全員が仮面を被っている社会を描いたマンガに反響 「考えさせられる」【作者インタビュー】

マグミクス / 2023年9月26日 20時50分

【漫画】他人と合わせるのが正解? 全員が仮面を被っている社会を描いたマンガに反響 「考えさせられる」【作者インタビュー】

■「仮面」は本当に被るべきなのか?

 ここは「常に仮面を被ることが普通」の社会。ある日、少年が通う学校のクラスに転校生の二葉本音がやってきます。先生や生徒たちから「仮面をかぶりなさい」といわれても彼女は素顔のまま日常生活を過ごしていて……。

 腹ぺこ ららばいさん(@harapekoLullaby)による創作マンガ『自分を絶対に嫌わないでいてくれるものと出会う話』がTwitter(現:X)上で公開されました。いいね数は3.7万を超えており、読者からは「自分自身を大切にします」「すごく心に刺さるお話」「人間関係で悩んでいたので、励まされました」などの声があがっています。

 作者の腹ぺこ ららばいさんにお話を聞きました。

ーー腹ぺこ ららばいさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

 きっかけは、単に暇だったからです 中学1年生の頃に、両親の仕事の都合でカナダに1年間移住しておりました。法律やビザの関係で、私は家の外に出ることができず、学校にも通えませんでした。仕事で親は家を出ているため、家には弟とふたりだけでいる状態です。

 海外なので、当然マンガはおろか、日本語の本自体が少なく、読めるものがない。本当に退屈で仕方なかったのです。

 そのとき、あまりにも暇すぎて「マンガでも描いてみようかな」と思ったのがきっかけです。毎日毎日、1日のほとんどをマンガに費やし、自分と弟を楽しませるためにずっと描き続けました。それが楽しかったので、今もマンガを続けている感じです。

ーー今作『自分を絶対に嫌わないでいてくれるものと出会う話』が生まれたきっかけや、理由を教えてください。

 きっかけとしては、もともと学生時代から同調圧力に対する不気味さを感じていました。「言う通りにしないと愛さない」というような。特に高校時代は校則が無意味に厳しいこともあり、その同調圧力が顕著にありました。

 もちろん、私の友人たちもそれは感じていて、みんな先生たちから嫌われないように、自分を取りつくろっていました。そのため、その頃には「嫌われないように仮面をつける世界の話」は、既に構想していました。

 社会人になり、仕事を始めていくなかで、よりその同調圧力の感覚は強まっていきました。もちろん、仕事をするうえで協調性が必要であることは十分に理解していますし、チームワークで物事を解決していく楽しさも知っています。

 しかしながら、同調圧力によって心をすり減らしているのも事実。私はこの苦しみから解放されるにはどうすればいいのか、いろいろと考えをめぐらせました。

 まず、なぜ人は同調圧力に屈してしまうのかを整理しました。私を含め、多くの人は「嫌われること」を恐れています。いじめの的になんて絶対なりたくないし、村八分にもなりたくない。害を与えられるのを恐れて、静かに縮こまるようにして生きるのだと。

 つまり、同調圧力の苦しみから放たれるには、嫌われることを不必要に恐れないことが大切だと考えました。

 そこで行き着いた答えが「空」でした。どんなに仲良しな友人、恋人、家族であろうとも、絶対にいつでも自分の味方でいてくれるわけではありません。いつ何時、自分のことを嫌いになるかも知れない。

 でも、空には関係ありません。それは自分がどんな人間であろうと、晴れてくれるし、雨にする。ほかのものたちと変わらず接してくれます。少なくとも、私のうえだけ豪雨にするなんてことはない。空から嫌われることはないのだと悟ったとき、私は同調圧力への恐怖が和らいだのです。この悟りを、私と同じように同調圧力に苦しむ人へ伝えたいなと思い、この作品を描きました。

仮面をかぶらない転校生 (腹ぺこ ららばいさん提供)

ーーたくさんの感想が寄せられていますが、特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。

 シンプルに「感動した!」と言っていただけたのも当然うれしかったですが「考えさせられる」と思っていただけたのが何よりうれしいです。

 同調圧力がなす苦しみについて、何かしらその人の心へ考えるきっかけを与えられたのかなと。「仮面を外して自分らしく生きようと思った」とか「でも自分は仮面をつけた方が良いと思う」とか、いろんなご意見をいただけました。その議論の種になれたことは、とてもうれしく思います。

 あと「疲れたときは空を見ようかなと思いました」と言っていただいたのもうれしかったです。私のテーマを汲み取っていただけた気がしました。また、「嫌われないものについて、山や星ではなく、なぜ空にしたのですか?」というご質問も印象深く思いました。

 空を題材にしたのは、私の実体験を元にしたのもありますし、何より空の良いところは、どこにでもあるというところです。山や森、星や海も空と似た性質を持ちますが、都会だったり昼間だったりすると、それらの場所にはなかなか行けません。

 しかし空ならば、一歩外に出てうえを見ればそこにある。その気軽さがいいのです。すぐ近くに味方がいると、そう思えます。

ーー今作を描くうえでこだわったポイントや、お気に入りのシーンなどはありますか?

 こだわったポイントは、主人公を二葉さんと恋人関係にしなかったところです。同調圧力を題材にした作品は、世の中にたくさんあります。そのほとんどが、圧力に苦しむ主人公を、誰かが助けてくれるという構成になっています。このマンガで例えるなら、落ち込んだ主人公のことを二葉さんが支えて絆を深め、ふたりが友人や恋人という関係を構築して、終わりを迎える構成になるでしょう。

 多くの方は、こういった構成の作品を好みます。もちろん、私もその構成は大好きです。あたたかく人情味がある者たちが描かれている名作は、「人間もまだまだ捨てたものじゃない」と思わせてくれます。そのうえで、私はそれらの作品とは違うものを描こうと試みました。この作品は、人間社会への依存を手放すことが主軸にあります。人から嫌われたくなくて、仮面をつけて必死に溶け込んでいるのは、他人や社会に依存しているからだと考えています。

 たとえばいじめは、主犯核が「Aのやつウザいからいじめようぜ」と話して、取り巻きはそれに賛同します。そして、主犯核が「次はBのやつもウザいからBいじめようぜ」と言うと、取り巻きはあっさりまたそちらに流れます。

 私はこれを、取り巻きが主犯核に依存している状態だと認識しています。自分で善悪の判断をするのを放棄し、自分に害が及ばないよう小判鮫のように張りつく。本当にAやBがウザいと思っていじめていない。ただいじめのムードに流されているだけなのです。そうして必死にグループに居られるようにしがみつくのは、執着や依存だと言っても過言ではないでしょう。

 そして、基本的に多くの人間が、この小判鮫タイプだと考えています。もちろん、私もそのうちのひとりです。私はそのグループへの依存、社会への依存を手放すことが、同着圧力からの恐怖を和らげ、仮面を脱ぐ一歩になると考えています。

 なので、下手に主人公と二葉さんが仲を深めると、私の描きたい「社会への依存を手放す」というテーマからブレてしまうのです。空という存在を描かないまま、ふたりを恋人という関係に持ち込むと、その関係のなかに閉じ籠り、依存するからです。

 それは結局、仮面を外しきれていないことを意味します。社会への依存を手放した後、精神的に自立した状態で、「これからふたりが仲良くなるのかな?」というところでお話を終えるのが、作品として最も美しい着地点になるはずだと、そう認識しています。

ーー今後、Twitter(現:X)で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 あまり細かいことは考えていませんが、とにかく多くの作品をみなさんにお見せしたいなと思っています。

 私は、本当に人を動かすのは、希望や夢ではなく、感動だと思っています。なぜなら、夢や希望は期待を産むからです。「こうなればいいな、こうなってほしいな」と。その期待通りにならなかったとき、人はがっくりと落ち込み、生きる力を失ってしまいます。期待が大きければ大きいほど、その苦しみの反動も強くなります。

 しかし、感動は違います。感動というのは、心の脈動です。心あたたまる優しい話に涙したり、自分じゃ一生思いつかないジョークに大笑いしたり、人間として持って産まれた心を、存分に楽しむことです。一見、生産性のないもののように思えますが、私はこの感動こそが、人に生きる力を与えてくれると思っています。

 何かに感動するから、「これをやってみたい、あれをしてみたい」という風に動き始める。「こうなればいいな」という期待ではなく、「これをしたいな」という想いこそが人を強くする。

 私は自分の作品を通して、多くの人の胸に感動の火を灯したい。そして、世の中を変えてみたい。いろんな人のなかに私の作品を宿して、生きる糧にしてもらえたら、感慨無量です。御大層で分不相応な話かもしれませんが、私はこれからも、ただひたすらに感動を追い求めて、創作し続けたいと思います。

(マグミクス編集部)

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