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想像以上に深い「スタジオジブリと日本テレビ」の関係 ヒットの陰に「ジブリ愛」熱烈な社員たち

マグミクス / 2023年9月27日 7時10分

想像以上に深い「スタジオジブリと日本テレビ」の関係 ヒットの陰に「ジブリ愛」熱烈な社員たち

■記者会見で鈴木社長「長いお付き合いです」

 2023年9月21日、スタジオジブリは緊急記者会見を開き、日本テレビの子会社となることを発表しました。会見冒頭のあいさつのなかで、鈴木敏夫社長は「ジブリと日本テレビは本当に、長いお付き合いです」と発言しています。

 日本テレビとスタジオジブリの関係は、スタジオ設立以前に遡ります。1984年の宮崎駿監督の映画『風の谷のナウシカ』公開当時、前作『ルパン三世 カリオストロの城』の放送局でもあった日本テレビは、徳間書店を通じて放送権を取得。翌年、特別番組として放映したのです。1989年公開の『魔女の宅急便』から2016年の『レッドタートル ある島の物語』までの作品には、出資して製作にも参加しています。

 今回は、こうしたスタジオジブリと日本テレビの深く長い関係について記していきたいと思います。

 スタジオジブリと日本テレビと聞いて、多くの方がまず思い浮かべるのが「金曜ロードショー」ではないでしょうか。1985年の放送開始以来、2023年の今日までにスタジオジブリ作品が金曜ロードショーで放映された回数は、なんと200回以上です。

 通常の放映だけでなく、スタジオジブリの新作映画公開前後に、過去作を連続で放映する、いわゆる「ジブリ祭り」はすっかり恒例行事となり、『天空の城ラピュタ』のクライマックスでの「バルス祭り」はネットミームとなりました。

 国内でスタジオジブリ作品は配信されていないこともあり、同番組で初めてスタジオジブリ作品に触れた人も多いでしょう。 こうしたスタジオジブリと金曜ロードショーの密接な関係の立役者が、元日本テレビの奥田誠治さんです。

 前述の『風の谷のナウシカ』初放映の際、日本テレビ側の担当を務めたのが、当時映画部に配属されたばかりで、その後金曜ロードショーも担当する奥田さんでした。そして『となりのトトロ』を観て感動した奥田さんは、社命を超えて積極的にスタジオジブリを応援するようになります。

 実は『風の谷のナウシカ』以降、『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『火垂るの墓』と、スタジオジブリの作品は次第に興行成績が下がっていき、日本テレビが初めてスタジオジブリ作品の製作に出資した『魔女の宅急便』の頃には、映画会社から、そろそろジブリも終わりと言われるような状況でした。

 そんななか、日本テレビの出資が決まったと知った奥田さんは、鈴木敏夫プロデューサーにジブリグッズを持ってくるように呼びかけ、「ズームイン朝」をはじめとする同局の人気番組のプロデューサーやディレクターに作品の告知をしてもらえるよう、一緒に社内営業をかけたそうです。

 また金曜ロードショーで『魔女の宅急便』の公開前と公開中の3回にわたり、『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『火垂るの墓』を放送しました。前述の恒例行事となったジブリ作品連続放送の始まりです。

 こうした懸命の告知の甲斐もあり、『魔女の宅急便』は『となりのトトロ』『火垂るの墓』の3倍以上の観客動員数を稼ぎ、スタジオジブリにとっても起死回生のヒットとなりました。

 奥田さんは、その後も特に用もないのに宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーと談笑するために、スタジオジブリに通い続けます。鈴木敏夫プロデューサーによれば、その頃の宮崎駿監督は奥田さんを映画の観客のサンプルとして見ていたそうです。

 結果、奥田さんは『魔女の宅急便』から『思い出のマーニー』までのスタジオジブリ作品に製作として参加し、『千と千尋の神隠し』が米アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した際には、監督・プロデューサーの名代として授賞式に出席するほど、スタジオジブリと懇意な関係を築きました。

 ちなみに『千と千尋の神隠し』の千尋のモデルは奥田さんの娘さんで、豚になってしまうお父さんのモデルが奥田さんだそうです。

■『かぐや姫の物語』の企画を後押し

日テレの氏家齊一郎氏の熱意が制作を後押しした、高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』 (C)2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

 2011年に逝去された元日本テレビ放送網代表取締役会長の氏家齊一郎さんも、古くからのスタジオジブリ、特に高畑勲監督の大ファンであったと伝えられています。

『ホーホケキョ となりの山田くん』以降、高畑勲監督がしばらく新作を作っていなかったことに業を煮やした氏家さんは、どんな赤字を出しても自分が責任を持つので新作を作らせるようにと、鈴木敏夫プロデューサーに直接言及したそうです。

 こうして制作がスタートしたのが『かぐや姫の物語』です。残念ながら氏家さんは完成した作品を観ることは叶いませんでしたが、同作にはその名が「製作」として刻まれています。

 また氏家齊一郎さんは2002年から2011年にかけて東京・清澄白河にある東京都現代美術館の館長も務めており、『ジブリの絵職人 男鹿和雄展』などスタジオジブリ関連の展覧会も度々開催しています。

 他にも、日本テレビは独自で『ハウルの動く城 大サーカス展』や『スタジオジブリレイアウト展』など、新作映画の公開に連動した展覧会を開催して、作品を体験として観客の記憶に定着させる試みを会社ぐるみで行ってきたのです。

「子会社化」の一報こそ突然ではありましたが、日本テレビは、スタジオジブリがまだ今日のような日本を代表するスタジオになる以前、『風の谷のナウシカ』公開から今日まで、その成長を影で支えてきた存在であり、今回の子会社化は収まるところに収まったといえる提携かもしれません。

 この議決が、今後スタジオジブリにどんな影響を与えるかは、まだわかりません。ただ、記者会見での日本テレビ代表取締役社長の杉山美邦さんの「我々はテレビが中心でアニメは素人。ジブリのアニメ制作体制を最大限尊重していきたい」という発言と、スタジオジブリの広報誌「熱風」2023年5月号の記事内のスタジオジブリから日本テレビの映画部に出向して細田守監督の『サマーウォーズ』などのプロデュースを手掛けた高橋望さんの「日テレは他にもアニメーション映画を作ってきたけど、ジブリのやり方が目標になっている」という発言もあることから、唐突な路線変更はないでしょう。

 高畑勲監督の逝去、宮崎駿監督の後継者問題など、大きな転換期を迎えているスタジオジブリが、新天地でどのような変化を遂げるのか、今後も注目していきたいと思います。

(倉田雅弘)

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