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『ガンダムSEED』最終回から20年 「路線変更」重ねるも、不変の「テーマ性」が高評価に

マグミクス / 2023年9月28日 7時10分

『ガンダムSEED』最終回から20年 「路線変更」重ねるも、不変の「テーマ性」が高評価に

■時代にマッチした「ライブ感」

 2023年9月27日、『機動戦士ガンダムSEED』の最終回であるFINAL-PHASE「終わらない明日(あす)へ」が放送された日から、20年の時が経ちました。2003年当時、多くのファンから注目された最終回は、物語の完結に相応しい感動的なラストシーンを生みます。

『SEED』は当初から、これまでのガンダムファンの年齢層が上がってきたことから、より若い層へのアピールを目的に製作されました。そのことが功を奏してか、小学生から大学生といった学生層を中心にヒットします。

 SDガンダムのヒットから引き継いだガンダムシリーズの新作TVアニメ作品『機動戦士Vガンダム』が1993年にスタートし、後に「平成ガンダムシリーズ」と呼ばれた作品群から約10年後ですから、世代がひと回りしてシリーズの継続には絶妙なタイミングでした。

『SEED』がヒットした要因はいくつもありますが、当時を振り返ってみて筆者が特に思うことは「ライブ感」でしょうか。状況に応じてファンが望む方向に舵を切る感じが成功した一因だと思います。

 作品というものは常に当初予定とは変わっていくもの。時には大胆な路線変更、テコ入れというものがつきものです。そういった点で、ライブ感というものはどんな作品にもあるものと考えられます。『SEED』でそういった部分が成功しているのは、特筆すべき点でしょう。

 たとえば、本来ならば悪役として設定されたイザーク・ジュールの存在があります。声を担当した関智一さんの熱演が、イザークというキャラに単なる悪役以上の魅力を加味させます。その結果、ファンからの人気も高まりました。

 福田己津央監督もこのことを感じて、本来ならば戦死する予定だったイザークを延命させます。最終回までイザークが生きのびたことに関して、「関さんの頑張りだ」と後に語っていました。本来なら生体CPU三人組に撃墜される予定だったはずが、逆にそのうちの2機を撃破するのですから、大金星というものでしょう。

 このイザークと同じく、当初は「キレると残虐になる」と設定されていたディアッカ・エルスマンも物語中盤で味方側の頼もしいキャラとなります。その後のミリアリア・ハウとの関係など、序盤の感じとはだいぶ変わっていました。

 イザークは続編であるTVアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』でも、味方側としてファンの期待に応える活躍を見せています。2024年1月公開予定の劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』でも大きな活躍があるのか、発売が予定されているぬいぐるみではキラ・ヤマト、アスラン・ザラ、ラクス・クラインに次いで4種でラインナップされていました。

 このように、走り出してから方向を決めるような疾走感のあるスタイルが、学生層という若者の支持を集めたのかもしれません。ファンの気持ちにマッチしたかじ取りが、『SEED』をヒットさせた要因だったのでしょう。

■度重なる「変更」のなかで、変わらなかったもの

物語の核心にかかわる曲名が続出して話題となった楽曲集「機動戦士ガンダムSEED ORIGINAL SOUNDTRACK3」(ビクターエンタテインメント)

 当初予定と異なるという点は、最終回にも見られます。ファンの間で話題になることも多いのが、最終回の1週間ほど前にリリースされたCD「機動戦士ガンダムSEED ORIGINAL SOUNDTRACK3」に収録された曲のタイトルでした。

 それぞれ印象的なタイトルが付けられていますが、最終回放送前にリリースされたにも関わらず「フレイの死」というBGMがあります。実際にフレイが死ぬのは最終回で、リリース時点ではその生死はあきらかになっていません。壮大なネタバレとして当時は衝撃的でした。

 もうひとつ物議を醸したのが「フリーダム自爆」という曲です。これを見て最終回にフリーダムは自爆するのかと思った人は多かったことでしょう。ところが実際の最終回ではそんなシーンはなく、実際に最終回に自爆するのはジャスティスでした。おそらくBGM発注の段階の物語から、内容が変わったことを意味しています。

 これに関してさまざまな想像ができますが、一番可能性が高いのは続編となる次回作が決定したことでしょうか。続編でもキラをフリーダムに乗せるべく、自爆でなく修理可能な状態で残したと考えられます。

 ほかにも、続編によって運命が変わったキャラはいました。ムウ・ラ・フラガです。TV版では宇宙空間に漂うヘルメットで死亡間違いなしと思われましたが、後にスペシャルエディションとして編集されたバージョンではヘルメットがありませんでした。これを見て、フラガが生存しており、続編でも登場することを確信したファンも多かったようです。

 しかしながら『SEED』が変更せずに徹頭徹尾貫いた点がありました。それは「非戦」。徹底して戦争の醜さ、愚かさを描きました。

 やられたらやり返し、その憎しみの連鎖を止めることなく進んでいく全面戦争。人類全滅の危機をはらみながらも止められず、滅亡へのカウントダウンを進めていく両軍の戦いは、ガンダムシリーズの戦争のなかでも突出していると言えるほどの危機感を描いています。

 それゆえに、中盤でともに友人を殺しあったキラとアスランが、その憎しみの連鎖を断ち切って手を取り合い、戦いを止めようとする物語となったのでしょう。そこに至るまで周囲のキャラたちが分かり合う姿も描かれたことは言うまでもありません。前述のディアッカとミリアリアの物語も、本作のテーマを支えたエピソードでした。

 逆に、争い続けるムルタ・アズラエルとパトリック・ザラは、戦いを増長させる大人たちとして描かれます。しかし、そのふたりさえも世界を滅ぼそうとするラウ・ル・クルーゼの手のひらで踊っていた存在でした。

 このクルーゼの激白が最終回の見せ場のひとつでしょう。今まで本音を見せてこなかったクルーゼのせきを切ったかのようなセリフのひとつひとつが印象的で、最後に倒せなくてはいけない敵、分かり合うことのできない「ラスボス」感を与えていました。

 それゆえにクルーゼをボロボロになりながらも全身全霊で止めたキラに、ファンは多大なカタルシスを感じたのでしょう。最終回から20年、『SEED』から「非戦」というテーマを受け取ったであろう当時の子供たちは、その思いを引き継いでいるのでしょうか。

(加々美利治)

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