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実写『ワンピース』はルフィの性格違う? 「リーダシップ強め」の声も

マグミクス / 2023年9月30日 18時10分

実写『ワンピース』はルフィの性格違う? 「リーダシップ強め」の声も

■ルフィという型破りなキャラクターを生身で演じる難しさ

 2023年8月31日に配信が開始されてから大ヒットし、続編の制作も決定した実写版『ONE PIECE』は、世界中で高い評価を獲得していますが、同時に一部原作ファンからは「ルフィの性格が少し違うように見える」という声もあがっています。この記事では「実写ルフィ」のキャラクター解釈について考察します。

●最初から深みのある人物として描かれている実写版のルフィ

 実写版のルフィと原作のルフィの最大の違いは、海賊団を率いるリーダーとしての内面の有無です。原作の「イーストブルー編」時点でのルフィは海賊王を目指す腕自慢で怖いもの知らずの少年で、あまり内面らしいものがありません。彼の高いモチベーションの源となる過去のエピソードや、苦悩する姿が描かれるのはだいぶ先になってからのことです。

 ルフィという人物の深みが一気に増したのは、義兄エースの死と幼少期の物語が語られてからではないでしょうか。子供特有の万能感が失われ、折れない気持ちだけではどうしようもない現実に打ちのめされて、ルフィは成長しました。同時に過去編での義兄・サボの死(実は生存していた)のエピソードがルフィの背景の物語として、過去に遡って自由を求める彼のモチベーションに説得力を与えたのは間違いないと思われます。

 連載初期のルフィには海賊団を率いる覚悟や、仲間を失う不安を見せる場面などはほとんど見られません。天真爛漫に夢を目指して突き進みます。苦悩しない大食いキャラという点において、原作初期のルフィと『ドラゴンボール』の孫悟空はよく似ています。

●きっかけはゾロの負傷

 実写版『ONE PIECE』では、ゾロが海上レストラン「バラティエ」にて、ミホークに斬られて瀕死の重傷を負った時、ルフィの不安や苦悩が表面化しました。ルフィは意識不明のゾロが横たわるベッドに腰掛け、「ナミが行ってしまった、グランドラインへの海図も持っていかれた。お前も失うかも。お前が必要だ。頼む、目を覚ませ、ゾロ!」と、原作にはない弱気な本音を吐露します。原作でもゾロを心配し、斬られた時は涙を見せていましたが、ゾロが泣きながら二度と負けないと誓った際は笑顔を見せていました。

 実写版のシーンはルフィの性格が弱気に改変されたのではなく、ひとりの人間としてより細やかな演出が追加されたと見るのが妥当でしょう。原作にはない弱音を吐いても不自然さはなく、ルフィらしさも変わりません。

 おそらく初期の原作のルフィをそのまま実写で演じるのは、あまりにも人間としてシンプル過ぎて、不自然に見えるという判断があったのではないでしょうか。祖父の海軍中将・ガープとの関係性が前倒しされて実写版に取り入れられたのも、ルフィに人としての深みを与えるためだと思われます。

 長期連載によって徐々にひとりの人間としての複雑さを獲得していった原作のルフィに対し、実写ルフィは最新の情報から逆算して「駆け出し時代のルフィ」という人物像が設計されているようです。

■説教のかわりに問いかける実写ルフィ

●説教のかわりに問いかける実写版のルフィ

メリー号を見つめるルフィ (C)尾田栄一郎/集英社

 原作におけるルフィは、嵐のような存在です。海賊王を目指す、ルフィという理解不能なほどスケールの大きな人物が現れることによって、各地に大きなイベントが発生し、変化が訪れます。物語がだいぶ進まないと、ルフィの内面が描かれない理由のひとつでしょう。

「人間嵐」であるルフィは弱気になっている人、モヤモヤしている人に強烈な熱量で説教(あるいは一喝)することで事態を動かします。原作ではゼフへの恩返しのために、命を捨てようと無抵抗になっているサンジの胸ぐらをつかんで「死ぬことは恩返しじゃねぇぞ!!!そんなつもりで助けてくれたんじゃねェ!!!生かしてもらって死ぬなんて弱ェやつのやることだ!!!」と叫びました。

 熱い名シーンですが、実写版ではこういったシーンはまるごとカットされています。かわりにルフィは問いかけ、対話していました。下記は実写ルフィとナミのやり取りです。

 ルフィ「(お前にも)何より大切な夢があるんじゃねぇのか?」

 ナミ「誰もが自由に夢を追えるわけじゃない」

 ナミがアーロンから村を買い戻すため、泥棒に手を染めていることを知っているファンからすると、やり取りの重要性が強く感じられますね。他にもゾロとナミがお互いを知るために、バーで飲み比べをしながら生い立ちを当て合う交流も実写版『ONE PIECE』オリジナルの魅力的なシーンです。原作が舞台的な盛り上がりをするのに対し、実写版では文字通り「海外ドラマ的」です。

 その結果、海賊団を結成しようとするルフィのゴールに対する意識や、船長としてのリーダーシップが強めに演出されています。「お前は本当はなにをしたいのか? 人生の目的はなんだ?」と問いかける、啓発的なリーダーシップを発揮する「メンター」のような側面が感じられるかもしれません。

 ルフィは海軍中将の孫であると同時に革命家・ドラゴンの息子であり、海賊王になろうとするスケールの大きな男です。しかも幼少期には、「世界の理不尽」を体感しています。そんなルフィの解像度を高めていけば、彼のリーダーやメンターとしての側面が描かれるのは自然な演出ではないでしょうか。

 実写版『ONE PIECE』はマンガやアニメの演出をそのままなぞるのではなく、原作のエッセンスを抽出してふさわしい演出に置き換えています。こういった細やかな描写の積み重ねが、実写ドラマとしての『ONE PIECE』の強度を高めているのは間違いありません。

 実写版のルフィは原作と性格が変わったのではなく、ひとりの人間として「解像度が高まったルフィ」なのです。

(レトロ@長谷部 耕平)

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