『機甲創世記モスピーダ』放送40周年 「バイクからロボ」の変形が斬新!「裏番組」には苦戦
マグミクス / 2023年10月2日 6時10分
![『機甲創世記モスピーダ』放送40周年 「バイクからロボ」の変形が斬新!「裏番組」には苦戦](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_187222_0-small.jpg)
■オープニングテーマは80年代アニメを代表する名曲
2023年10月2日は、タツノコプロ制作のロボットアニメ『機甲創世記モスピーダ』の放送開始から40周年の節目にあたります。40年前のこの日、筆者はTVに流れる映像と力強い歌声、そして洗練されたメロディに心を奪われていました。『機甲創世記モスピーダ』のオープニングテーマ「失われた伝説を求めて」には、魂の底にまで響く何かがあったのです。
映像も、光に彩られたメカとキャラクターが躍動し続ける斬新さに満ちあふれており、自分が今まで見ていたアニメとはまるで違う次元のものであることが、子供にも簡単に理解できました。
このオープニングアニメーションを手掛けたのが故・金田伊功氏です。緩急をつけながら舞うように動く独特なアクションや、大胆に誇張した遠近感とポージングを駆使した「金田パース」と呼ばれるスタイルを生み出した天才アニメーターで、2009年に亡くなられた後も日本のアニメに大きな影響を与え続けている人物です。
そして作詞は中森明菜の「少女A」などを手掛けた売野雅勇氏。作曲はタケカワユキヒデ氏、編曲は久石譲氏と当代一流のアーティストたちが集い、この曲にどれほど大きな力が注がれていたのかが分かります。
ボーカルには「アンディ」とだけ記されており当時は誰なのかはわかりませんでしたが、のちにグループ・サウンズ「シャープ・ホークス」に参加していた小山真佐夫氏(現:アンディ小山)であることが判明しました。
アンディ氏はレコーディングについて「かなり全身全霊で歌った、自分のそれまでの中でもかつてなかった、Spiritのきっちり入った一曲でした」と、アニメ歌手の地位がそれほど高くない時代だったにも関わらず、全力で取り組んだことを明かしています。アンディ氏は今も動画やイベントでしばしば「失われた伝説を求めて」を披露しており、年月を経てさらに円熟味を増した歌声は今もファンの心に響き続けています。
なお、エンディングの「ブルー・レイン」はアンディ氏と松木美音(まつき みね)氏のデュエット曲で、こちらもかなりの名曲なのですが、松木美音氏は現在ミネハハという名前で活動しており、日本全国でコンサートを開催するなど精力的な活動を続けています。
かつてはCMソングを3000曲以上担当しており、江崎グリコの「グリコ♪」やえひめ飲料「ポンジュース♪」、富士フイルム「フジカラーで写そ!♪」などお茶の間でお馴染みだった曲も手掛けています。松木氏の名前は知らなくとも、声だけは知っている方も多いのではないでしょうか。
■海外では高い人気を獲得
根強い人気を集める主題歌「失われた伝説を求めて」を収録した、『機甲創世記モスピーダ』音楽CD(ビクター・エンタテインメント)
さまざまなメカが登場した本作でしたが、中でも特筆すべきはアーマーバイク「モスピーダ」の存在でしょう。大地を疾走しながら戦闘可能な装甲ユニット「ライドアーマー」へと変形するシーンは、この作品で最も少年の心をとらえていたのではないでしょうか。
また、登場人物のひとり、イエロー・ベルモントは当時としては極めて斬新な存在でした。イエローは女性を思わせるほどの美青年であり、軍人としての身分を隠して女性歌手として活動している人物です。40年も前にこのようなキャラクターを登場させたことは、当時のクリエイターが現代を凌駕するほどの感性を発揮していた証明と言えるでしょう。
他にも、『モスピーダ』は可変戦闘機「レギオス」や可変戦闘支援機「トレッド」、ロボットアニメとしては珍しいロードムービー風の作劇など、魅力的な要素を複数備えていましたが、もともと放送局が少なかった上に裏番組に藤子不二雄作品(現:藤子・F・不二雄)の『パーマン』を抱えており、視聴率的には苦戦を余儀なくされます。
また、放送が日曜日でTVが1台しかない家が多かった時代で、親に「チャンネル権」を握られたままで『モスピーダ』を見たくても見られなかった子供も少なくありませんでした。
結果、放送は当初予定の3クールから2クール25話へと短縮されましたが、ストーリー的にはきっちりと完結を果たしました。
日本では高い評価を得られなかった『モスピーダ』ですが、海外では思いもよらぬ展開を見せることになります。『超時空要塞マクロス』『超時空騎団サザンクロス』『モスピーダ』の3作品を同一世界の異なる時代と世代を描いた大河作品としてまとめた「ロボテック」が大ヒットし、高い人気と知名度を獲得したのです。
『モスピーダ』は第三世代(新世代)の『ニュー・ジェネレーション』として扱われており、2007年には「モスピーダ」が登場する新作としてOVA『ロボテック シャドウ・クロニクル』も製作されました。
日本でも、オリジナルのメカニックデザイナーである荒牧伸志、柿沼秀樹の両氏を迎えた新規プロジェクトが始動し、公式外伝小説『GENESIS BREAKER(ジェネシス ブレイカー)』が連載されています。RIOBOTブランドから新たなライドアーマーが次々と製品化されており、『モスピーダ』は放送から40年が経った今も、そしてこれからも、まだまだファンを楽しませてくれそうです。
(早川清一朗)
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