『ワンピ』始まりの海賊はジョイボーイ？ 「ビンクスの酒」に隠されている「空白の100年」の真実とは

■物語の鍵を握る「ジョイボーイ」の正体とは？

　現在『ONE PIECE（ワンピース）』本編で展開されている「エッグヘッド編」では、「空白の100年」に関する新たな情報がいくつか登場しました。なかでも多くのファンを驚かせていたのは、やはり約900年前に存在した「巨大な王国」が、現代でも再現できないほど高度な文明を持っていたという話でしょう。

　つまり「空白の100年」とは、かつて存在した高度文明の「巨大な王国」と「20の王国」の戦いの歴史だったのです。そして戦いに勝利した「20の王国」は、「巨大な王国」の思想を誰にも継がせないため、歴史からそのすべてを消し去りました。

　しかし作中には「Dの意志」「歴史の本文（ポーネグリフ）」など、「巨大な王国」につながりそうなキーワードがいくつか登場しています。いつの日か、誰かが真実を暴いてくれることを願い、なんとかして「巨大な王国」が手掛かりを残したのでしょう。

　世界中を巻き込んだであろう大戦争の歴史が明らかになったとき、世のなかがひっくり返るのは間違いありません。では、ここに「ジョイボーイ」はどう関係してくるのでしょうか。

　ジョイボーイとは「空白の100年」に実在した人物とされています。これまでに魚人島の人魚姫、超巨大な象「象主（ズニーシャ）」、そして「偉大なる航路（グランドライン）」の最終地点「ラフテル」と関係している人物ということが分かっていました。

　物語の鍵を握る極めて重要な人物であることは間違いないのですが、具体的に何を成し遂げた人物なのか、また「巨大な王国」との関係性はいまだ明確になっていません。

　ちなみにネット上で多く見られる考察は、ジョイボーイは「巨大な王国」の王様という説です。「空白の100年」に実在した人物で、「巨大な王国」の存在を示唆する「ポーネグリフ」にも関係しているため、確かに「ジョイボーイ＝王様」説は信憑性が高いように思えます。

　ただ、海賊王ゴール・D・ロジャーが「ラフテル」に到達した際、彼は「ひとつなぎの大秘宝（ワンピース）」を前に「とんだ笑い話だ!!」と評していました。「20の王国」に敗北した「巨大な王国」の物語は、普通に考えて“悲劇”だったはずではないでしょうか。

　現状、多くのファンがジョイボーイと「巨大な王国」を結び付けて考察を繰り広げていますが、実はもうひとつ面白い考察が存在します。それは海賊たちのテーマソング『ビンクスの酒』とジョイボーイを結び付ける説です。

■果てなし、あてなし、笑い話……

『ビンクスの酒』の歌詞から見えてくる「とある可能性」、それは……。　画像は「ROMANCE DAWN」DVD（エイベックス・ピクチャーズ）

●ジョイボーイは始まりの海賊だった？

『ビンクスの酒』には、「果てなし　あてなし　笑い話」という歌詞があります。まさにジョイボーイとの関係を示唆する重要なワンフレーズではないでしょうか。

　そして、もしも『ビンクスの酒』がジョイボーイの歌だとするならば、「我ら海賊　海割ってく」という歌詞から、彼も海賊だった可能性が浮上します。つまり「巨大な王国」とジョイボーイの関係性は、第三者の立場から戦争を見ていたジョイボーイが、何かのきっかけで「巨大な王国」に肩入れしただけというものだったのかもしれません。

　あくまで想像ですが、これらを踏まえると「ジョイボーイは普通の冒険家だったが、巨大な王国に味方したことによって“海賊”と呼ばれてしまった」「それが海賊の始まりだった……」、そんな物語もありそうな気がしますね。

『ONE PIECE』の前身である尾田栄一郎先生の読切『ROMANCE DAWN』には、「無法に略奪する海賊＝モーガニア、それをカモに冒険を続ける海賊＝ピースメイン」という設定が存在していました。

　正義の所在が不透明な、世界中を巻き込む大戦争のなか、海賊という存在になってしまったジョイボーイからピースメインやモーガニアの概念が生まれた……という壮大な伏線回収があるかもしれません。

「空白の100年」にまつわる真実が明らかになる日も、そう遠くはないでしょう。今後ますます見逃せない展開が続きそうですね。

（ハララ書房）