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『ウルトラマンタロウ』の「怪獣軍団」登場から50年 子供は大興奮も、見た目が「コレジャナイ」

マグミクス / 2023年10月9日 6時10分

『ウルトラマンタロウ』の「怪獣軍団」登場から50年 子供は大興奮も、見た目が「コレジャナイ」

■意識していたのは子供たちよりも「放送局」の方?

 今から50年前の1973年に放送された第二期ウルトラシリーズ第3作『ウルトラマンタロウ』は、ちょうど10月に差し掛かった第3クールの初めに、当時の子供たちを興奮させた娯楽編が1か月にわたり放送されました。その内容は、人気怪獣たちの再登場編でした。

 この「10月の怪獣軍団編」とも言うべき『タロウ』の展開は、キー局であるTBSに対してのアピールが要因でした。なぜならば、10月は翌春の新番組を決定する時期だったからです。つまり、ここでの成績は『タロウ』の次回作が「何になるか」に大きく影響するのでした。

 もちろん、それだけでなく10月はライバルとなる新番組が軒並み始まる時期でもあります。そういったことから、もっとも注目を集めるエピソードを10月に放送することになったのでしょう。

 『タロウ』は第二期ウルトラシリーズで唯一、大きな路線変更がなく1年の放送を終わらせています。そんな優等生の『タロウ』が、ここ一番に舵を切ったエピソードが人気怪獣の再登場だったことには、当時の雑誌展開に影響された背景がありました。

 第二期ウルトラシリーズでウルトラマンたちが「兄弟」になったように、この時期に怪獣たちも組織化される展開が小学館の雑誌で掲載されています。いわゆる「怪獣軍団」の誕生でした。

 もちろんウルトラ兄弟が雑誌発信で生まれた時のように、TV作品で語られた公式設定ではありません。しかし、当時の雑誌を読んでいた子供たちには雑誌とTVの違いは些細なこと。子供たちには怪獣軍団という組織が本当にあるかのような気持ちで作品を楽しんでいました。

 この怪獣軍団の首領格がバードンです。宇宙人でなく怪獣というところが、弱肉強食でボスの座を決めたであろうことが子供心にもわかり、実力主義で強力な軍団であるというイメージが刷り込まれました。

 ちなみに、この前月に放送されたエピソードでウルトラの国を紹介した時、はるか昔にエンペラ星人率いる怪獣軍団がイラストで紹介されており、10月の怪獣軍団編への橋渡しになっています。

 この時のイラストを描いたのは当時、小学館の学習雑誌でウルトラシリーズを描いて人気だった漫画家の内山まもる先生でした。内山先生はマンガで第二期ウルトラシリーズを支えたとも言える存在です。当時、ウルトラシリーズのマンガで多くの子供たちに人気がありました。

 内山先生は当時、執筆した長編マンガ『かがやけ ウルトラの星』でも怪獣軍団とウルトラ兄弟の死闘を描き、多くの子供たちを熱狂させています。

■雑誌も批判した、「造形の違い」 背景に「大人の事情」

復活を遂げて『ウルトラマンタロウ』第29話「ベムスター復活!タロウ絶体絶命!」に登場した巨大ヤプールを立体化した、「大怪獣シリーズ 巨大ヤプール(改造)」(エクスプラス)

 復活怪獣が出ることになったのは、第27話「出た!メフィラス星人だ!」のメフィラス星人、第28話の「怪獣エレキング 満月に吼える!」のエレキング、第29話「ベムスター復活!タロウ絶体絶命!」と第30話「逆襲!怪獣軍団」のベムスター、巨大ヤプール、ベロクロン、サボテンダーです。

 オープニングでのクレジット表記もなく、雑誌では他の4体のみが紹介されていたので、ベロクロンとサボテンダーはゲスト的な扱いだったのかもしれません。そう考えると、歴代作品から順番に一体ずつ選ばれているわけです。

 人気面で言えば順当な選択で、いかにも怪獣軍団の代表と言える強力な面々です。しかし、一点だけ大きな問題がありました。それは初代とは似て非なる造形だったことです。これはショーで使用されていたアトラクション用の怪獣だったからでした。ヤプールは『ウルトラマンA』で使用されていたものと同一だったそうですが、アトラクションでの使用で材質が著しく劣化したそうです。

 そういった「大人の事情」を知らない当時の子供は、「コレジャナイ」感満載の怪獣たちに裏切られた気持ちが少なからずあったかもしれません。ちなみに当時の雑誌解説では、「形は前よりカッコ悪い」、「整形手術の失敗」などと、忖度(そんたく)のない言葉で評されていました。

 しかしスター性のある『タロウ』のストーリーのなかで、もっとも派手なイベント回だったと思います。実際、本放送当時の子供の話題に上ったエピソード群で、人気怪獣の再登場で番組を盛り上げるという役目は存分に果たしたと言えるでしょう。

 ちなみに人気怪獣の再登場は急きょ決定した話だったようで、第27話と第28話は本来ならば別の怪獣が登場する予定でした。そのため、第27話のメフィラス星人が『ウルトラマン』で登場した初代とは真逆の性格になったというわけです。しかし、それゆえに「卑怯もラッキョウもあるものか!」という名セリフが生まれました。

 怪獣軍団はウルトラ兄弟のように公式設定とはなりませんでしたが、それをベースに、のちにさまざまなジャンルの作品で花開くことになります。グア軍団やベリアル軍団、アブソリューティアンといった、さまざまな存在がひとつになった「寄り合い所帯」のような精鋭集団。怪獣軍団はその元祖と言ったところでしょうか。

 また広げて考えれば、ウルトラ怪獣をキャラクター化して製作された『ウルトラゾーン』や『ウルトラ怪獣散歩』といったバラエティ番組誕生の土台になったとも言えるかもしれません。

 その怪獣軍団が登場して今年で半世紀。本来なら消費されていく敵側の存在である怪獣が、親子孫三代に渡って共通の話題として語られるようになったTV作品は、ウルトラシリーズだけかもしれません。

(加々美利治)

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