「逆に良かった」「夢ある話」 ジャンプ本誌では挫折するも成功した漫画家5選
マグミクス / 2023年10月13日 19時10分
■ジャンプ本誌を離れて意外な形でヒット?
これまで数々のヒット作が連載されてきた「週刊少年ジャンプ」は、多くの漫画家にとって憧れの存在といえます。しかし連載を勝ち取るまではもちろん、ヒット作を生み出し、連載を続けるのが困難であることは、マンガ『バクマン。』でもリアルに描かれていました。
また、かつては打ち切りを経て、ヒット作の連載に発展した方も少なくありません。特に近年では、ジャンプ本誌ではヒットに恵まれなかったものの、連載の場を他に移して活躍しているパターンも見られます。今回は、そんなジャンプ本誌で打ち切りになったり、持ち込みで「ボツ」をくらったりしても、その後別の場所でヒット作を生んだ漫画家を紹介します。
●松本直也:『怪獣8号』
「少年ジャンプ+」のヒット作のひとつであり、2024年4月からアニメの放送も控えているマンガ『怪獣8号』を連載中の松本直也先生は、2009年にジャンプ本誌で『ねこわっぱ!』という作品を連載していました。神社の神である猫に育てられた人間の女の子・タマが神様を目指して奮闘する作品で、読み切り版を経て連載となるも、残念ながら全2巻での打ち切りという結果に終わっています。
『ねこわっぱ!』連載時から松本先生の画力は高く評価されており、後に『怪獣8号』の連載が開始された際は「『ねこわっぱ』の人だったの?」「ますます上手くなってる」と驚く声もありました。
『怪獣8号』では怪獣に変身する能力を手にしてしまった主人公・カフカや仲間たちと襲いくる怪獣との戦闘シーンが見どころですが、迫力やスピード感のある場面は松本先生の高い画力があってこそです。アニメも原作のように美麗な戦闘シーンが見られることが期待されています。
●田中靖規:『サマータイムレンダ』
架空の離島を舞台にしたSFサスペンス作品『サマータイムレンダ』の作者・田中靖規先生は、過去にジャンプ本誌で2006年に『瞳のカトブレパス』、2009年に『鍵人 -カギジン-』と、いずれも読み切りを経て連載するも、打ち切りに終わっています。
その後、田中先生は「最強ジャンプ」でゲームのコミカライズ作品を連載後、2017年より「少年ジャンプ+」にて『サマータイムレンダ』を連載します。ヒロインの葬儀が行われる、主人公が撃たれるといった衝撃の第1話は大きな話題を呼び、その後瞬く間に「少年ジャンプ+」での人気作品になりました。インタビューにて田中先生は、同作のスピード感あふれる展開は1度連載会議で落選する理由となったものの、何度も修正を繰り返した結果、見事連載につながったと語っています。
完結後にはアニメ化やリアル脱出ゲーム化に加え、実写化企画が進行していることのアナウンスもあり、さまざまなメディアミックス化にはファンも喜びの声を見せていました。
■ジャンプから他誌に移動すると?
「週刊少年マガジン」で連載されていた『七つの大罪』第1巻(講談社)
●鈴木央:『七つの大罪』
2023年10月8日からアニメが始まった『黙示録の四騎士』の原作を手がける鈴木央先生も、過去にジャンプでの打ち切り後、他の掲載誌でヒットを飛ばしています。
1998年にジャンプで連載を開始したマンガ『ライジングインパクト』は、ゴルフに魅了された少年・ガウェインがライバルと死闘を繰り広げながらプロゴルファーを目指す作品です。一度は打ち切りの形で連載が終了しますが、読者からの反響を受けて3ヶ月後に再開するという珍しい背景がありました。
『ライジングインパクト』は4年にわたって連載されるも再び打ち切りになり、その後格闘技を題材にした連載マンガ『Ultra Red』の最終回ではモブの服に忍ばせていた「BYE BYE JUMP」という言葉が話題になっています。そして、鈴木先生は「ウルトラジャンプ」を経て「週刊少年サンデー」に移籍しました。さらに鈴木先生はサンデーで連載していた『金剛番長』終了後、「週刊少年チャンピオン」と「週刊少年マガジン」にも連載作品を掲載、4つの週刊少年マンガ誌制覇を果たしています。
特に「週刊少年マガジン」で連載していた『七つの大罪』は、4クールにわたってのTVアニメ化だけでなく、劇場版アニメ2作品やスピンオフ作品も制作されており、国内外を問わずヒットを記録しています。続編となる『黙示録の四騎士』を原作とするアニメも、原作ファン以外から注目されており、さらにヒットが期待されている状態です。
●近藤信輔:『忍者と極道』
マンガアプリ「コミックDAYS」で最新話が更新されるたびに、関連ワードがほぼトレンド入りする人気マンガ『忍者と極道』の作者である近藤信輔先生も、以前「週刊少年ジャンプ」で連載した経験を持っています。
当初は会社員として働きながら、ジャンプに投稿する生活を送っていた近藤先生は、2011年に30作品ものギャグマンガの読み切りを投稿したところ、本誌への掲載を勝ち取ることとなりました。しかし、読み切りを経て連載されたギャグマンガ『烈!!!伊達先パイ』はわずか半年、その後連載となった柔道バトル作品『ジュウドウズ』も1年ほどで打ち切りという憂き目に遭ってしまいます。
そして近藤先生は2018年夏頃に『忍者と極道』の原型となる作品を連載会議に出すも、落ちてしまったことからそのまま講談社へ持ち込み、「コミックDAYS」で連載を開始しています。
少年マンガから青年マンガへ、また雑誌からウェブへと掲載の場や作品の内容は大きく変わりましたが、戦闘シーンでの残酷描写は「ジャンプだったら絶対無理」と考えるファンも多いようで、講談社に持ち込まれていなかったら『忍者と極道』は生まれていなかったかもしれません。
●オダトモヒト:『古見さんは、コミュ症です。』
同じくジャンプから他誌へ持ち込み後、ヒット作を手がけたことで知られる漫画家といえば、「週刊少年サンデー」で『古見さんは、コミュ症です。』を連載しているオダトモヒト先生です。
当初は読み切り作品を携えてジャンプ編集部へと持ち込んだオダ先生でしたが、「つまらない」と酷評されただけでなく、ネームに対して「多分意味ないと思うけど見るわ」「コレ面白かったから32ページにして描いてきてー」と、ぞんざいな扱いを受けたことを「週刊少年サンデー」の巻末マンガ『サンデー非科学研究所』で明かしています。
その後、オダ先生はサンデー編集部に持ち込んだ結果、読み切り作品『ワールドワーストワン』が小学館新人コミック大賞の少年部門の大賞を受賞、そして『デジコン』で週刊連載デビューを果たしました。さらに、2016年より連載を開始した『古見さんは、コミュ症です。』は第67回小学館漫画賞少年向け部門を受賞し、アニメ化や実写ドラマ化するほどのヒット作となったのです。
(田中泉)
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