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ジャニーズの「メディア支配」は崩壊 世界に通用する番組づくりで「声優」は浮上するか?

マグミクス / 2023年10月16日 18時10分

ジャニーズの「メディア支配」は崩壊 世界に通用する番組づくりで「声優」は浮上するか?

■国内市場の縮小で「メディア支配」は限界に

 故・ジャニー喜多川氏の性加害問題で、「ジャニーズ事務所」という日本の芸能界を長年支配してきた体制が終わりを告げることとなり、数多くのテレビ番組に出演してきたタレントたちの今後はどうなるのか、テレビ番組制作側にどのような意識変化が生まれるのかに注目が集まっています。

 2023年10月2日の記者会見で、ジャニーズ事務所は社名を一新し、被害者への補償が完了しだい解体すること、タレントのエージェント業務を行う別会社を立ち上げることを発表しましたが、すでにNHKが定例会見でジャニーズ所属のタレントの新規番組出演について「当面控える」と発表。他局もこれに追随し、既存のレギュラー出演作品は別として、新規にジャニーズタレントの番組出演を見送る動きが広がっています。

 そして、ジャニーズ事務所による記者会見の運営を行っていたPR会社が、指名する記者の「NGリスト」を作成していたことをNHKなど各報道機関が報じていることから、すでにテレビ局はジャニーズ事務所を守るつもりはないと見えます。

 端的にいえば、メディアは有力なタレントを優先的に確保でき、ジャニーズ側は有力な媒体に不利なく有利に露出するという、長年続いてきたと見える「持ちつ持たれつ」の蜜月関係が崩れたということです。

 ジャニーズ事務所が本当に変われるのか、テレビ局をはじめとするメディア側の反省は十分なのかなど、多くの疑問や課題は残っていますが、芸能界の勢力図が大きく変わろうとしているのは間違いなく、ジャニーズと大手メディアが組んで維持し続けてきた、ドメスティックな市場だけで回していくエンタメ産業の終焉が見えてきている状況と言えます。

 とはいえ、今回の問題が大きく話題になる以前から、その兆しはあったと見ることもできるでしょう。

 そもそも、ジャニーズ事務所がコントロールできるのは国内の既存メディアに限られます。長年、同事務所はインターネットに進出してきませんでしたが、「ネットの世界はコントロールが効かないから」というのも大きな理由のひとつと言われています。とりわけ、ジャニー氏やメリー氏、広報を仕切っていた白波瀬氏などは、ネットに疎かったと言われています。

 しかし、人びとがネットから情報を集め、あらゆるコンテンツがネットを経由しグローバルに流通する時代に、ネット進出を拒み続けることは現実的ではなくなりました。ネット進出に後れをとったジャニーズ事務所は、グローバル市場では国内ほどには大きな存在感を発揮できていません。

 日本は人口減少時代に突入し、国内市場は縮小傾向にあります。ドメスティックな市場を中心にやってきたテレビ各局、その他エンタメ産業全体がこの危機感を持ち始め、国内市場だけにしがみつき続けることに限界を感じ始めています。ジャニーズ事務所と既存メディアのように、国内市場だけを守るやり方そのものが、成り立たない時代になってきたのです。

 そういう時代の変化を敏感に感じているジャニーズタレントも当然います。昨年、海外展開に関する方向性の違いでKing & Princeの3人が脱退を表明しましたが、これはジャニーズ事務所に所属したままでは海外進出することが難しかったことを示唆するでしょう。また、2022年にメジャーデビューしたTravis Japanはあらかじめグローバル展開を視野に入れた活動をしています。

 今回の性加害問題も、イギリスBBC放送の報道が大きなきっかけになっていますが、国内でブロックしていても海外から崩される。そういう時代になっているのです。そもそも、ジャニーズ的な支配のやり方は遅かれ早かれ通用しなくなってきているのです。

■「グローバル市場」に目を向ければ、「声優」が選択肢に?

 TBSの映画事業を担当する辻本珠子プロデューサーは「国内市場だけで回収するビジネスモデルに限界を感じ始め、グローバル展開しないとまずいという雰囲気がある」とイベントで語っていました(Branc主催「国際プロデューサーの視点から:日本実写作品のグローバル展望」)。映画に限らず、これはあらゆるエンタメ業界全般にあてはまると考えられるでしょう。

 音楽産業においては、Kポップの成功事例を参照した国内グループも登場するようになってきました。映像コンテンツではなんといっても、アニメがグローバル市場を開拓し続けており、人気アニメに出演する声優も、世界のアニメファンに徐々に知られるようになってきています。

 今後、日本のタレントもグローバル市場での人気が重視されるようになるでしょう。テレビ番組でも、出演者の起用に国内でのタレントパワーだけでなく、グローバルでの人気を考慮するようになることが予想されます。

 その時、グローバルに知られる声優を番組に起用することは、選択肢のひとつとして十分に考えられると筆者は思います。

『ドラゴンボール』シリーズのベジータ役でおなじみの堀川りょうさんは、「声優の新たな活躍の場として注目すべきは海外」とコラムに綴っています(同氏が学院長をつとめる「インターナショナル・メディア学院」公式サイト)。

 アメリカだけでアニメコンベンションは400近くあるといわれており、それがさらに他国でもあるわけで、色々なところから日本の声優はゲストに呼ばれていますし、ネットでも声優の切り抜き動画などは(違法も合法も含めてですが)国際的に流通しています。近年、音楽産業ではアニソンによって海外で人気を獲得するアーティストが生まれていますが、声優も同様に他業種のタレントよりも海外に認知されやすいアドバンテージを持っていると言えるでしょう。

 そうして声優がグローバル人気を獲得すれば、テレビ局側が必要とする時代が来ないとは限りません。テレビ局がドメスティック市場中心に展開していくこと自体を見直すのだとすれば、声優を番組に起用することは有力な選択肢のひとつになるでしょう。

 バラエティやトーク番組は、フィクションのアニメやドラマと比べて海外展開するのが難しく、日本の放送コンテンツの海外輸出の80%以上はアニメで、バラエティ番組の海外輸出は全体の4~5%くらいのシェアしかありません。逆に言えば「伸びしろ」があるということです(総務省情報流通行政局「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2020年度)」)。

 国内の視聴率による広告ビジネス、いわゆる「放送収入」は近年、右肩下がりです。その下げ幅を放送外収入で埋めないといけないのが今のテレビ局事情なのですが、その放送外収入でグローバル市場から利益をあげられるかどうかがテレビ局にとっての課題となっています。アニメにテレビ局が力を入れ始めているのはこれが理由で、TBSなどは実写ドラマも輸出できるように動いています。

 ジャニーズ問題でスポンサー離れが加速すれば、放送収入の下落はさらに早まるでしょうから、テレビ局は急いで業態変化をしないといけない状況にあるのです。

■「声優のバラエティ出演」は良いことか? 業界の対応も課題に

 近年、バラエティ番組のグローバル展開の事例としては、Amazon Prime Videoで全世界独占配信された『風雲!たけし城』がありますが、この番組の司会に起用されたのが、声優として実際にバラエティ番組でも活躍する木村昴氏でした。起用理由は公になっていませんが、グローバルに展開する番組コンテンツに声優が起用された実例として、注目すべきだと個人的に思います。

 もちろん、バラエティの仕事が増えることが声優にとって幸せかどうかは、議論の余地があります。声優の本分は演技ですから、演技以外の仕事で目立つことが増えること自体、好ましくないと考える人もいるでしょう。ただ、活躍の選択肢が広がり、自分でやりたい仕事を選べる状況になるのであれば、悪いことばかりではないでしょう。

 一方、声優自体の地位向上のためにはネームバリューを上げていく、活躍の場を広げていくことも必要になるでしょう。少なくとも今後、テレビ局はグローバルに知名度あるタレントを必要とする時代になるはずです。アニメ人気を背景にした声優の起用は有力な選択肢となる可能性は充分にあり、それは今後の声優自身、あるいは声優業界が国内だけでなく、グローバルにタレントを育成していくつもりがあるかどうかにもかかっているでしょう。

(杉本穂高)

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