なぜサンライズの巨大ロボットの色は、赤・青・黄? 世代越えて愛されるトリコロールカラー誕生秘話
マグミクス / 2023年10月17日 6時10分
■『マジンガーZ』とは対照的?
古くは『鉄人28号』から始まった、日本のTVアニメの巨大スーパーロボット。
その後、特撮番組などを経て、次に注目と人気を集めたのが、ご存じ『マジンガーZ』です。TVアニメと雑誌の連載マンガ、さらに「超合金」という耳新しい単語を掲げて売り出された玩具。今で言うメディアミックス戦略と、漫画家、永井豪さんが手がけた子供にはちょっと怖くも見える、その迫力と強靱そうなデザイン。それらは、当時の幼年からティーン世代まで含んだ男子たちに大人気を博しました。
そんな人気を受けて「うちでもスーパーロボットアニメを」と、当時の東北新社の要望で、後のサンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)が実制作を請け負ったのが『勇者ライディーン』でした。
この『ライディーン』は、画面と同じように玩具も変形するというギミックを持った「変形ロボット」として人気を得、当時としては記録的な玩具の売り上げを成し遂げます。
さて、一見、同じように感じられる「スーパーロボット」ですが、マジンガーZとライディーンは、デザインだけでなく、実はその「色」にも決定的な違いがあります。
それが、マジンガーが黒、グレー、赤という「強さと迫力」を全面に押し出した色であることに対し、ライディーンは、青、赤、白に水色と黄色という、トリコロールカラー、つまりフランス国旗のような、華やかな色だったということです。
そういう意味では、見た目の色はマジンガーのほうが「強そう」ですよね。では、なんでライディーンはこんな色になったのでしょうか。
■トリコロールカラー誕生秘話
サンライズの元祖トリコロールカラー巨大ロボット。「MODEROID 勇者ライディーン ライディーン」(グッドスマイルカンパニー)
それは「ユーザーである子供のナマの言葉」があったからだそうです。
当時、世の中では「神秘」や「謎」がはやっていて『ライディーン』にも、そうしたアイデアが盛りこまれていました。そのため、ロボットのイメージにもそれを生かそうと、たとえば「石像」や「黄金」「宝石」という視点から、本体の基本色にグレーや金色(に見える黄土色)、エメラルドグリーンなどが試されましたが、正直、とてもカッコいいとは言えないものになってしまいました。
『ライディーン』の企画に加わっていた当時のサンライズ側の企画室デスクは、初めて作るスーパーロボットという存在が、どんな風に子供たちに受け入れられているかを知るために、デパートの玩具売場に何日も通い、また、近所の公園で遊ぶ子供たちとも色々な話をしたそうです。現在でしたら、不審者扱いされてしまいそうですが、昭和の世間認識は今よりもはるかにおおらかで、見ず知らずの大人と子供が会話することなど、ごく日常的なことでした。
そんな中で、彼は子供に尋ねたそうです。
「ロボットは好き?」
「大好き」
「どうして?」
「カッコいいから」
「どんな色がカッコいいと思う?」
「青と赤」
「きれいな色が好き」
そんな答えだったのだそうです。
グレーや茶色、黒は、彼らにとっては「きれいな色」ではなかったようでした。
この「きれいな色」というのが、キーワードとなり、設定にこだわったくすんだ色は避け、白、濃い色は青の濃い紺色、薄い色には水色、そして華やかな赤、ポイントには黄色(この黄色には、玩具に使う素材の関係もありました)。とにかく、鮮やかな色を使ったのです。
そうして出来たのが、あのトリコロールカラーのライディーンでした。
巨大スーパーロボットは、子供たちにとってはヒーローとイコールです。
強さや迫力は物語と作画で見せ、ロボットはとにかく格好良く鮮やかに。子供が見た瞬間に好意を持ち、引きつけられる存在であれ。
この感覚が、以降のサンライズのヒーローロボットには引き継がれていき、多くの子供たちを虜(とりこ)にしました。そんな子供たちが成長し、大人の感性も取り込みながら、ともに育ったスーパーロボットというヒーロー像。それは、いまや日本だけでなく、世界中の人々が大好きな存在になりました。
今、目の前にある新しいガンダムにも、きっとそのDNAは引き継がれているはずだと私は信じます。
【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
(風間洋(河原よしえ))
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