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『地獄少女』白石晃士監督が描く、人間の闇「キラキラしたものを穢してしまいたい」

マグミクス / 2019年11月12日 16時30分

『地獄少女』白石晃士監督が描く、人間の闇「キラキラしたものを穢してしまいたい」

■実写版は「かなりハードに、恐ろしさが感じられるように」

 2005年から放映が始まった人気TVアニメ『地獄少女』が実写映画化され、2019年11月15日(金)より公開されます。地獄少女・閻魔あいを演じるのは、『Diner ダイナー』『惡の華』と、話題作への出演が続く玉城ティナ。閻魔あいの仲間である三藁(さんわら)には橋本マナミ、楽駆、麿赤兒が扮しています。

 ホラー映画『貞子vs伽椰子』(2016年)をヒットさせた白石晃士監督が脚本も手掛け、アニメ版にもマンガ版にもなかったオリジナルストーリーを生み出しています。人気作品をどのようにして実写化したのか、白石監督に聞きました。

——少女たちが謎の失踪を遂げる怪事件と深夜0時のみに現われる闇サイト「地獄通信」をめぐる都市伝説……。白石監督好みの物語が繰り広げられる『地獄少女』ですが、人気アニメを実写化するうえで気をつけた点はどんなところでしょうか?

 実写映画化にあたり、アニメの第1シリーズとマンガ版を参考にしました。アニメの第2シリーズになると、ちょっと変わった新キャラも登場するようになるので、今回は『地獄少女』の基本形をやることにしたんです。アニメ版はアニメならではの、マンガ版はマンガならではの面白さがあり、それをそのまま実写映画でやるとチープになってしまうので、その部分は留意しました。

 例えば、閻魔あいが契約を結ぶ相手に渡す藁人形ですが、実写で見せると「この藁人形は誰が編んだの?」みたいな疑問が生じてしまうので、藁人形は木の枝に藁が巻き付いて人の形になったような形状にしています。原作の持つダークファンタジーとしての雰囲気と実写映画としてのリアリティーとの兼ね合いに気をつけましたね。

——玉城ティナ演じる閻魔あいを支える三藁は、輪入道に貫禄たっぷりな麿赤兒、骨女に妖艶な橋本マナミ、一目連にイケメンの楽駆。かなり豪華な顔ぶれですね。

 理想のキャスティングになったと思います。閻魔あいと三藁はアニメシリーズだとファミリー感があるんですが、実写映画ではその部分は極力出さないようにしました。閻魔あいと三藁は人間ならざる恐ろしい存在なので、人間くさくならないようにしたんです。それでも多少ユーモラスさは出ているとは思いますけど。

 人の生き死にを扱い、地獄送りにする物語なわけですから、軽々しく描くと説得力がなくなってしまいます。今回の実写版はかなりハードに、観た人が恐ろしさを感じるものにしているんです。

■人間はどうしようもなく、間違いを犯す

インタビューに応える、白石晃士監督(マグミクス編集部撮影)

——オリジナル版のファンが多い作品の映像化は、ファンの声を意識しますか。

 オリジナルのファンは、どんなふうに撮っても抵抗を感じるでしょうね。漫画やアニメを実写化する時点で、別の表現になってしまうのはどうしようもありません。その部分では、あまりファンの声は気にしないようにしています。

 いちばん大事なことは、監督する僕自身が『地獄少女』から感じた面白さをどのように実写表現にしてお客さんに届けるかだと思うんです。もちろん原作は大切に扱いますし、リスペクトを忘れないようにしています。

——白石監督が感じた『地獄少女』の面白さは、どういう部分でしょうか?

「人間はどうしようもなく間違いを犯してしまう存在だ」ということでしょうね。『地獄少女』は人があやまちを犯すことを批判するでもなく、肯定もしません。傷つけられた側には復讐心が宿るわけですが、復讐するという行為は決してきれいごとでは済まないものだと思います。相手に復讐すれば、それで気持ちがすっきり晴れて済むものではありません。『地獄少女』の大事なところ、つまり他にない面白さは、そこにあるんじゃないかなと僕は思っています。

——人気コミックの実写映画『不能犯』(2018年)の主人公(松坂桃李)は、『ヒッチャー』(1986年)のルトガー・ハウアーをイメージしていたそうですね。今回は参考にした作品はありますか。

 三藁に関しては、英国のホラー映画『ヘル・レイザー』(1987年)っぽいニュアンスを持たせています。オリジナル版ではそこまでの怖さは感じさせませんが、やっぱり生きた人間を地獄送りにするキャラクターですから、本来は不気味な存在だと思うんです。そう考えると、僕の中で三藁にいちばん近いのは「ヘル・レイザー」シリーズに出てくる魔導士になるんです。

 物語はインディーズバンドの話ですが、音楽業界を舞台にしているという点では、ブライアン・デパルマ監督の『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年)も意識しています。

——インディーズシーンで活躍するアーティストや地下アイドルへの憧れや夢が、物語のなかでは反転して、呪いへと変わってしまう。現代の若者たちが抱える心の闇がリアルに感じられます。

 40代のおっさんが書いた脚本なので、今の若者の心情をリアルに描けているかどうかは分かりません(笑)。今回の映画の中では大場美奈さん(SKE48)演じるインディーズアイドル・早苗に対して、長岡(森優作)はキラキラと輝いている人への嫉妬心から凶行を犯してしまいます。

 自分も輝くことができれば、凶行に走ることはなかったのですが、環境の違いなどもあって、ちょっとずつズレが生じて、過ちをおかしてしまう。才能があって活躍している人に嫉妬心を感じてしまうことは、自分もあります。長岡は心の中にいるもう一人の自分でもあるんです。

■現場で感じた、玉城ティナのすごさ、熱心さ

玉城ティナ演じる閻魔あい(左から2番目)と三藁

——白石監督の代表作『オカルト』(2009年)はオウム真理教による無差別テロ、2012年に始まったオリジナルビデオ「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズには福島第一原発事故以降の不穏な世情が作品の背景となっていました。今回はそういった社会背景は意識していますか?

『オカルト』や「コワすぎ」は、うっすらとですがその時代に起きた事件的なものをイメージして撮っています。まぁ、今回は観てくれた人たちがそれぞれ見つけてくれればいいかなと思っています。強いて挙げるとすれば、先ほども触れたように「羨望」が「嫉妬」に変わり、やがて憎しみとなってしまうという心理的な部分でしょうか。今の世の中には、そんな感情があふれているんじゃないかと思うんです。

 SNSの世界は特にそうですよね。キラキラとしたものを穢してやりたいと思ったり、マウンティングすることで自分の支配欲を満たそうとする。最近のSNSの世界を投影している部分はあるでしょうね。

——『貞子vs伽椰子』にもメインキャストとして出演していた玉城ティナさんとの、久々のタッグはいかがでしたか?

 3年ぶりだったんですが、本当に素晴しい女優に成長していました。『貞子vs伽椰子』の時も仕事への取り組み方がとても熱心だったんですが、そういった姿勢が積み重なって、ブレイクしたんだと思います。今回はカメラに対する目線とか、そういった細かい部分の指示を出したくらいで、閻魔あいのキャラクターに関してはほぼお任せでした。

 彼女のすごさは、架空の存在であるはずの閻魔あいが「そこにいる」と、ちゃんと感じさせてくれるところです。閻魔あいが地獄送りにする相手や、依頼者に対する複雑な気持ちをほんのり感じさせてほしいと頼んではいたんですが、具体的にどう演じるかは説明していませんでした。でも、彼女はそういった微妙な表情もしっかりと表現してみせてくれました。信頼できるプロの俳優ですね。また、タッグを組む機会があればいいなと思っています。

●映画『地獄少女』
監督・脚本/白石晃士
出演/玉城ティナ、橋本マナミ、楽駆、麿赤兒、森七菜、仁村紗和、大場美奈(SKE48)、森優作、片岡礼子、成田瑛基、藤田富、波岡一喜
配給/ギャガ 2019年11月15日(金)より公開
https://gaga.ne.jp/jigokushoujo-movie

(C)地獄少女プロジェクト/2019映画『地獄少女』製作委員会

【インタビュー後編】はこちら

(長野辰次)

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