8分で追いつこう! 完結直前アニメ『進撃の巨人』放送10年分の壮大な物語を振り返る
マグミクス / 2023年10月23日 21時10分
■エレンは果たして「人類の希望」なのか?
およそ10年の歴史を刻んできた大人気アニメ『進撃の巨人』の完結が近づいてきました。それに先駆けて、2023年10月23日(月)放送のNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、主人公のエレン・イェーガーに完全密着した特別回が放送されるなど、最終回放送に向け盛り上がりを見せています。
そこで本稿では、今からでもこのお祭り騒ぎについていけるよう、『進撃の巨人』のストーリーを一挙におさらいしていきます。注目ポイントや見どころをおさえつつ、10年分の内容を8分(くらい)で振り返ってみましょう。
※以下、物語の核心に触れる記述があります。
●『進撃の巨人』は単なる人類vs.巨人の物語ではない
物語の舞台となるのは、人間を捕食する「巨人」に蹂躙された世界です。絶滅の危機に瀕した人類は「ウォール・シーナ」「ウォール・ローゼ」「ウォール・マリア」からなる三重の壁を築き、その壁内で暮らしていました。しかしあるとき「ウォール・マリア」の南端「シガンシナ区」に「超大型巨人」と「鎧の巨人」が現れたことで、100年続いた平和は幕を閉じます。
この一件で母親を失った主人公のエレンは巨人を駆逐するために、幼なじみであるミカサ・アッカーマンとアルミン・アルレルトとともに訓練兵団へと入団しました。さらには巨人化する能力にも目覚め、同期である104期生の仲間やリヴァイ兵長たちと、人類存亡を賭けた反撃に繰り出します。
ここまでの展開を観た(あるいは読んだ)ファンは、「人類勝利のために進撃する巨人……だから『進撃の巨人』なのだ」と思ったことでしょう。しかし実際は、単なる人類vs巨人の物語ではありませんでした。結論からいえば、これは人類vs人類による壮大な物語だったのです。
●巨人誕生のはじまりは「家畜」の逃亡?
そもそも巨人とはいったい何者で、どのようにして生まれたのでしょうか。すべては約1820年前、「ユミル・フリッツ」なるひとりの少女(始祖ユミル)から始まりました。
もともと彼女は略奪民族「エルディア族」に仕えていた奴隷でしたが、あるとき家畜を逃がした罪で国を追放されてしまいます。同族たちに追われて重傷を負ったユミルは、逃げた先で「光るムカデ」のような謎の生物と接触し、巨人化の力を手にしました。
この力を欲したエルディアの初代フリッツ王は、ユミルを妻として迎え入れ、大陸の発展や敵国であるマーレとの戦いに彼女の力を利用しました。いち部族でしかなかったエルディアは巨大な帝国を築き上げ、やがてユミルはその命を落とすことになります。
ところがフリッツ王は彼女の死を悲しむどころか、亡骸を切り刻み、ユミルの娘たちに食べさせました。すべては巨人化の能力を子供たちに継承させるため、この世の大地を支配し続けるためでした。
娘たちに子を産ませ、子から子へ巨人化の力を継承していった結果、生まれたのが「始祖の巨人」「超大型巨人」「鎧の巨人」「女型の巨人」「獣の巨人」「顎(あぎと)の巨人」「車力の巨人」「戦鎚の巨人」「進撃の巨人」からなる「九つの巨人」です。
●エレンたちの故郷はこうして生まれた
大陸の支配者になったエルディア帝国は、やがて反逆を試みるマーレの内部工作により徐々に弱体化していき、その隙にマーレは「九つの巨人」のうち大半を奪うことに成功します。さらに、大陸に残されたエルディア人には巨人のせき髄液を打ち込み、知性を持たない「無垢の巨人」を生み出しました。これがこんにちまで人類を恐怖に陥れてきた巨人の正体です。
対して「始祖の巨人」を継承した145代目フリッツ王は、できる限りのエルディア人を連れてパラディ島へ逃亡し、始祖の力を使って幾千万もの超大型巨人で造られた壁の国を築き上げます。そしてそのまま壁の世界に引きこもり、他国に向けて「パラディ島に手を出せば、壁の巨人が世界を平らにするだろう」とけん制しました。
つまりこれがエレンたちの生まれた故郷であり、平和が100年間続いた理由です。そして壁の巨人が世界を「平らにする(大群で行進し全てを踏み潰していく)」行為こそが「地鳴らし」でした。2023年11月4日(土)に放送される「完結編(後編)」は、この地鳴らしを止めるために、ミカサやアルミンたちが奮闘する姿から描かれることになるでしょう。
■「地鳴らし」を決行したエレンの真意とは?
TVアニメ『「進撃の巨人」The Final Season 完結編』ビジュアル (C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会
●すべてのカギを握る「始祖の巨人」の力
地鳴らしがある以上、巨人化の力をほとんど手中に収めるマーレでさえもパラディ島に手出しはできませんでした。そこでマーレは地鳴らしの発動条件となる「始祖の巨人」の力を奪いとるために、巨人化の能力を継承した大陸のエルディア人、通称「マーレの戦士」をパラディ島へと送り込みました。
それがエレンの同期であるライナー・ブラウンやベルトルト・フーバーたちであり、壁の国の平和を脅かした「鎧の巨人」と「超大型巨人」の正体でした。
先ほど「これは人類vs人類による壮大な戦い」だと述べましたが、極論をいえばこれはパラディ島のエルディア人と、その先祖たちによって大量虐殺されたマーレ人による因縁の戦いなのです。そして彼らの戦争のカギを握る「始祖の巨人」の力は、「進撃の巨人」の継承者であるエレンに受け継がれていました。
TVアニメ『「進撃の巨人」The Final Season 完結編(後編)』キービジュアル (C) 諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会
●なぜエレンは「地鳴らし」を発動させたのか?
結局、エレンによって地鳴らしは発動され、壁の外にある大陸は何千万もの巨人によって踏み潰されてしまいます。2023年3月3日に放送された「完結編(前編)」は、その地鳴らしを止めるべく、ミカサやアルミンたちがライナーをはじめとする「マーレの戦士」と手を組み、エレンのもとへたどり着く場面で幕を閉じました。しかしそもそもなぜエレンは、残虐極まりない地鳴らしを決行したのでしょうか。
実はエレンが継承した「進撃の巨人」には、未来の継承者の記憶を覗き見る力があります。今からおよそ4年前、勲章授与式で王女ヒストリア・レイスに触れた際、エレンは自身が世界を滅ぼす未来を目にしていました。それでもこのときのエレンはまだ普通だったように思えます。未来は変わるかもしれないと信じていたからです。
しかし世界と融和する道を探るために上陸したマーレの地で、パラディ島の人びとにどれだけの憎悪が向けられているのかを知り、他国との和睦は絶望的であることを悟ります。加えて未来を変えるために、あえて未来で助けたことのある少年を見捨てようとしますが、結局、見捨てられず助けてしまい、「未来は変わらないらしい」とさらに絶望してしまうのです。
エレンが地鳴らしを発動した理由には、恐らくそういった背景も関係しているのでしょう。ここからエレンは人が変わったようになり、平気で仲間を戦いに巻き込み、誰よりも大切であるはずのミカサやアルミンを傷つけて、ついにはパラディ島以外の人間たちを根絶やしにしようと地鳴らしを決行しました。
とはいえ、ここまではあくまで建前であり、アニメにおいてエレンの真意はこれまでのところ明らかになっていません。自分が世界を滅ぼす未来を見たエレンは何を思い、何を望んで地鳴らしを決行したのか、彼の本当の思いはこれから放送される最終話で語られるはずです。
これまで『進撃の巨人』では、エレンを「人類の希望」だと信じて多くの仲間が命を犠牲にしてきました。彼らが信じた希望は果たして本当に「希望」だったのか、その答えは11月4日(土)の「完結編(後編)」でぜひ確認してみてください。
(ハララ書房)
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