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藤子・F・不二雄「SF短編」のトラウマ作品は? 今や「現実が上回った」例も

マグミクス / 2023年10月28日 17時10分

藤子・F・不二雄「SF短編」のトラウマ作品は? 今や「現実が上回った」例も

■トラウマ級の代表作『ミノタウロスの皿』

 漫画家の藤子・F・不二雄先生といえば、言わずと知れた『ドラえもん』の作者です。他にも『パーマン』や『キテレツ大百科』など、子供たちに夢を与える作品を多数手がけられました。しかし、実は「SF(少し不思議)短編」シリーズとして、暗く恐ろしい大人向けの作品も多く描いています。

 まず「SF短編」の処女作にして代表作として知られる『ミノタウロスの皿』では、地球に似ているものの人間と家畜の立場が逆転した異星・イノックス星の物語が描かれます。我々が動物を食用の家畜やペットとして可愛がるのと同じように、この星では人間が牛に似た生き物によって飼われているのです。

 美しい少女・ミノアが家畜扱いされていることに怒った主人公(地球人)は、最高級の食材「ミノタウロスの皿」に選ばれて喜ぶ彼女を説得しようとするも、あまりにも価値観に隔たりがあり、引き留めることは不可能でした。そして、最後は主人公が泣きながらいつも通り「ステーキ」を食すシーンで終わるという展開で、トラウマ級の1作として知られています。

 価値観の違いが招く恐怖を描く点では、性欲と食欲の価値観が入れ替わった世界を描く『気楽に殺ろうよ』も人気です。同作ではある朝、主人公の身体に激痛が走り、その後世界の価値観が逆転します。なんと、性行為は人前で堂々と行うものと認識されている一方で、食事は恥ずかしい行為として扱わるようになっていたのです。

 また、子供をひとり作れば権利書が貰えて、ひとり分の殺人まで許可されるのです。その世界観自体も恐ろしいですが、価値観の違いに混乱していた主人公が、相談相手の担当医との倫理観が狂うような会話をして、最後は順応していく様にも不気味さを感じてしまいます。ラストは「元の世界」に価値観が狂った状態の主人公が戻されており、その後の展開を想像するのも恐ろしい作品です。

 その他、愛のない世界が陥る状況を描いた『間引き』も、トラウマ級の作品として知られています。同作は人口が増えすぎた世界では、愛情や友情がなくなって人命が軽んじられることをテーマにしており、コインロッカーへの赤ん坊廃棄や殺人が横行する世界を描いていました。

 恐ろしいのは、1974年発表の『間引き』では世界人口が45億人に到達することを危惧していたのに対し、2023年現在ではすでに人口80億人を突破しているという事実です。23年の史上初の世界人口80億人突破の発表は大きな話題となりましたが、ネット上では『間引き』を例に出して、「作品が描かれてから約半世紀で80億人はヤバい」「現実の方が恐ろしい」などとコメントする人もいました。

 最後に紹介するのは、人間が宇宙人によって虐殺されるグロテスクな描写も強烈な『絶滅の島』です。同作の世界では、ある日突然地球へ降り立った宇宙人により。人類が欲望のままに「乱獲」されてしまいます。そして、ある島で生き残っていた数十人が次々に惨殺されていくシーンは特に残虐で、記憶に残るでしょう。

 宇宙人の行為を身勝手と感じますが、ラストの皮肉たっぷりのオチで、それは我々人類がこれまで動植物に対しておこなってきた蛮行と同じと分かる点も考えさせられます。こちらはセリフのある「単行本版」と、セリフのないサイレント映画のように描かれた「雑誌掲載版」があり、短編集『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス』でどちらも続けて読むことができます。

(マグミクス編集部)

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