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『うる星やつら』の奇作「そして誰もいなくなったっちゃ!?」 オチが「弱い」理由は?

マグミクス / 2023年10月29日 19時50分

『うる星やつら』の奇作「そして誰もいなくなったっちゃ!?」 オチが「弱い」理由は?

■ラムも面堂もメガネもみんな殺された

 2023年7月14日、関東ローカルのTOKYO MX TVで昭和版アニメ『うる星やつら』の「そして誰もいなくなったっちゃ!?」の再放送がありました。SNSでは、オールドファンからから「あのトラウマが蘇る」「大人になって見ると凄さが理解できる」、初めて見た人からは「伝説といわれる理由が分かった」「なんだこのクオリティ」、などと称賛の声が飛びかいました。

 40年前の1983年7月6日、第98話「そして誰もいなくなったっちゃ!?」は放送されました。毎度のドタバタ劇どころか、笑いはありません。しかも、ラムをはじめとするキャラクターが次々に殺される衝撃の展開で視聴者は混乱します。当時は「名作か愚作か」と論争になるほどでした。

  そこで、どんなエピソードだったのか、全容を振り返ります。ネタバレ注意です。

「そして誰もいなくなったっちゃ!?」では、あたるやラムをはじめとする、おなじみのメンバー11人が差出人不明の招待状を手に孤島へ行き、大きな屋敷で1週間過ごすことになります。食堂で流れてきたオルゴールの曲は、マザー・グース(イギリスの童謡や歌謡の総称)の「Who killed Cook Robin(誰が駒鳥を殺したか)」でした。

 一夜明けると悲劇が……。錯乱坊が食べ物を口いっぱいに頬張ったまま、死んでいました。手には弓矢が握られていました。そのあと地下室で、白目をむいたメガネ、スコップを手に死んでいる角刈り、角刈りから流れる血を皿で受け取るパーマ、首に太い針が刺さったチビが、それぞれ死んでいるのが発見されます。温泉マークが気付きました。

「これはマザー・グースのクックロビンに見立てた殺人事件だ」

「誰が駒鳥を殺したか」の歌詞と照らし合わせてみましょう。

「誰が駒鳥を殺したか? それは私とスズメが言った。弓と矢で私が殺した」は錯乱坊、「誰が駒鳥死ぬのを見たか? それは私とハエが言った。小さな目玉で私が見ていた」はメガネ、「誰が墓穴掘るだろう? それは私とフクロウ言った。ピックとシャベルで私が掘ろう」は角刈り、「誰がその血を受けたのか? それは私と魚が言った。小さな皿で私が受けた」はパーマ、「誰が経帷子(きょうかたびら)を作るのか? それは私とカブトムシ。針と糸とで私が作ろう」は、チビの死に方に当たります。

 そして、翌日、さくらが大木に張りつけにされて死んでいました。木の下には聖書が……「誰が牧師を務めるか? それは私とカラスが言った。小さな聖書で私がなろう」。

 さらに、岸壁には体に松明を巻かれた面堂の死体(「誰が松明持つだろう? それは私と紅雀。すぐに戻って取り出そう」)、棺のそばにはしのぶ(「誰が棺を担ぐのか? それは私とトビが言う。夜でないなら私が担ごう」)が死んでいました。

 残り3人。

 天井から漏れてくる水を不審に思い、あたるが屋敷の2階へ駆け上がると、身体を布で覆われたラムがバスタブで死んでいました……「誰が覆いを捧げ持つ? それは私とミソサザイ。夫婦で一緒に持ちましょう」。ついに、ラムまで犠牲になってしまいます。

 その後、ベッドに寝かせたラムのそばで眠っていたあたるは、一発の銃声で目覚めます。温泉マークが胸から血を流して死んでいました。足下には数本の木の枝がありました。「誰が賛美歌を歌うのか? それは私とツグミが言った。小枝の上のツグミが言った」。

 最後に残ったあたる。崖にそびえ建つ塔から何者かが鳴らす鐘の音が響きます(「誰が鐘を鳴らすのか? それは私と雄牛が言った。なぜなら私は力持ち、私が鳴らしてあげましょう」)。

 あたるが怒りに震えながら塔の最上階まで登ると、目の前に人の後ろ姿が。銃を構えるあたるは、「おまえが犯人か! 俺も殺すつもりならそれもよかろう! だがひとりでは死なん、お前に地獄までの道案内をしてもらう!」と叫びます。すると男は、冷静な口調で「……殺しはしない。だって……」。

 ゆっくりと振り向いたその人物は、なんとあたるでした。もうひとりの自分を見たあたるは、「あ”~~~!!」と発狂。数日後、廃人のような姿で救助隊に発見されるのでした。

■最後に明かされたオチがつまらない!?

令和版TVアニメ『うる星やつら』第2期キービジュアル (C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

 場面はガラリと変わり、病院に。あたるは入院しているようです。医師の前に、島で殺されたはずの面々が勢ぞろいしていました。そして、サスペンスドラマのようにタネ明かしが始まります。

・一連の偽装殺人は、あたるの浮気癖を直す目的で行った一種のショック療法だった。
・ラムが死ぬと刺激が強いので頭数に入れていなかったが、途中で計画を説明するとラムも賛同した。
・塔にいたもうひとりのあたるは、背格好が似ていた面堂の変装だった。

 医師はいぶかしげな顔をしながら、あたるの病室へ案内します。果たしてこの計画は成功したのか? あたるは大丈夫なのか? あたるの病室の扉を開けると、そこには看護師さんを追い回してはしゃぐ、いつものあたるがいました。その光景に、各々が複雑な表情を浮かべます。

 ラム「ダーリン!」、冷や汗を流すあたるの顔……END。

 アガサ・クリスティの小説『そして誰もいなくなった』をオマージュしたタイトルに、マザー・グースの曲になぞらえた殺人事件という内容が描かれたのが、第98話「そして誰もいなくなったっちゃ!?」です。これは、のちに奇才とも呼ばれる押井守監督(脚本:伊藤和典氏)による、アニメオリジナル作品でした。この頃から、『うる星やつら』は攻めに攻めたオリジナルが増えていきます。

 放送後、「ラムを殺すな!」「斬新な演出だった」など賛否の反響が飛び交うなかで、「あたるへの荒療治だったというオチがつまらない」という意見も多かったそうです。確かに筆者も、最後は「なーんだ」くらいにしか思いません。

 このオチについて少し考察します。制作スタッフは、おそらく病院のシーンから先は、形を付けて終わらせた程度で、ひねったオチなど必要ないと考えていたのでしょう。「あたるの浮気癖を直すため」という理由も、強引ですよね。

 この話のメインはミステリー劇で、「『うる星やつら』のキャストで舞台演劇を見せた」という感覚ではないでしょうか。ただし、放送は来週も続くので、キャストが死んだまま終わらせるわけにはいきません。そのために一応、番組らしいオチをつけて成立させたのでしょう。

 40年経った今でも語り継がれる、「そして誰もいなくなったっちゃ!?」を振り返りました。アニメにおいて原作を無視したオリジナル作は賛否あるかもしれませんが、この回は「アニメは変幻自在に人を楽しませることができる」という挑戦だったように思います。

(石原久稔)

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