時代を先取りしすぎた？ マンガ界の巨匠が経験した「打ち切り作品」3選

■超有名作品も「いったん打ち切り」を経験していた？

　今週の金曜日、2023年11月3日の「文化の日」は日本漫画家協会と出版社5社によって、2002年に制定された「まんがの日」でもあります。また、同日は「マンガの神様」手塚治虫先生の誕生日です。マンガ界を象徴する巨匠・手塚先生ですが、過去に作品が打ち切られていたことがあるのをご存知でしょうか？　この記事では、手塚先生や誰もが知る巨匠たちの「打ち切りマンガ作品」3本について振り返ります。

　手塚先生の作品で、打ち切られたといわれているのが、1967年から1968年に「週刊少年サンデー」で連載された『どろろ』です。

『どろろ』は、体の48か所を魔物に奪われた主人公・百鬼丸が、自分の体を取り戻すために魔物を退治していく物語です。百鬼丸は、旅の途中でどろろという泥棒の少年と出会い、行動をともにします。

　同作の「週刊少年サンデー」での連載は、未完のままで終了しました。この件について、手塚先生は、講談社刊の「手塚治虫漫画全集『どろろ』4巻」のあとがきに、回を追うごとにムードが暗くなっていったこと、少年週刊誌のマンガとしてはマイナスの要素が多くなっていったこと、そして、意欲も半減して、最終的には編集部の要請で大急ぎで大団円にしなければならなかったことが書かれており、はっきりとは言ってませんが打ち切りを匂わしています。

　ただ、2007年には妻夫木聡さんと柴咲コウさんが主演の実写映画が公開され、2019年にはTOKYO MXなどでTVアニメが放送されており、リメイク・続編作品も連載されるなど、『どろろ』は現代でも評価されています。最後の魔物を倒すことなく、途中で終わってしまったとはいえ、50年以上経っても評価される作品を描いていた手塚先生は、やはり天才だったのだと思わされます。

　また、「週刊少年ジャンプ」で1972年から1973年まで連載されていたマンガ版『マジンガーZ』（作：永井豪）は、人気絶頂のなか大人の事情で後味の悪い最終回を迎えた作品です。主人公・兜甲児が操縦するロボット・マジンガーZが、敵の総大将である世界征服を企む悪の天才科学者・Dr.ヘルとの最終決戦を迎えようとしたところで、連載は終了します。最後のページでは永井先生がイラストで登場し、「このつづきのストーリーはテレビでやっていくでガスよ」とコメントしました。

　この裏側には特別な事情があったようです。マンガ版は先行で企画されていたTVアニメ『マジンガーZ』のスポンサーの意向で、「テレビマガジン」でも平行して連載されることになりました。それに納得のいかないジャンプ側と永井先生の折り合いがつかず、突如連載終了となったようです。

　それでも『マジンガーZ』の人気は高く、40年以上もの時を経て2017年には『劇場版 マジンガーZ ／ INFINITY』が公開されるなど、長きに渡って多くのファンに愛されています。

　数々のジャンルを手掛けた巨匠・石ノ森章太郎先生の代表作『サイボーグ009』も、打ち切りを味わっています。1964年から「週刊少年キング」にて連載された同作は、サイボーグ兵士の計画を進めるブラックゴーストの秘密基地から脱出した9人のサイボーグの物語です。サイボーグたちは、彼らを連れ戻そうとするブラックゴーストが投入する敵を撃退し、秘密基地を消し去ろうと戦いに赴くのでした。

　しかし、最終回は火山の爆発によって、敵も味方も行方不明になるという後味の悪い結末で終わってしまいました。サイボーグが敵と戦うという設定は今でこそ珍しくはありませんが、当時としては新しくて登場人物も多く、読者には難しいだろうと編集部に判断されたため打ち切られたようです。

　ただ、『サイボーグ009』はここでは終わらず、秋田書店や講談社などで連載が継続されることになり大人気作となります。そして2017年にはNetflixにてアニメ『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』（2016年には劇場上映された）が全世界向けに配信されるなど、50年以上高い支持を得てきました。

（LUIS FIELD）