『北斗の拳』ザコ達の最期を演じた千葉繁さんの思いが「深すぎ」 語ったこだわりとは

■ザコキャラへの千葉さんの愛がたまらない！

　1984年から1987年までフジテレビ系列で放送されたアニメ『北斗の拳』は、今もなお多くのファンに愛され高い人気を誇ります。2023年9月13日には、原作マンガの連載開始40周年を記念して、新作アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-』が2024年より放送されると発表されました。

　そんなアニメ『北斗の拳』の特長のひとつに、ザコキャラたちが倒された時の「断末魔」があります。このザコキャラの多くが、ひとりの今も活躍されている声優・千葉繁さんによって演じられていました。この記事では、千葉繁さんがザコキャラに込めた思いについて振り返ります。

　千葉さんといえば、『ハイスクール!奇面組』の一堂零や、『幽☆遊☆白書』の桑原和真といった、有名な作品の中心的キャラクターを数多く演じています。そんな千葉さんはアニメ『北斗の拳』で、ナレーションや数々のザコキャラの声を担当し、ファンを大いに楽しませてくれました。

「北斗の拳 OFFICIAL WEB SITE」では、各界の著名人を対象にしたインタビュー企画「北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー　北斗語り」が公開されています。そのインタビュー企画の「VOL13」で、千葉さんはザコキャラに対する熱い思いを明かしていました。

「ザコキャラと呼ばれる人たちにだって、お父さんもお母さんもいるんですよ。（中略）そこには人数分の人生があって、それがあの壮大な兄弟ゲンカに巻き込まれてみんな死んでいっちゃうわけですから」（「北斗の拳 OFFICIAL WEB SITE」北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー　北斗語り VOL13より）

　ザコキャラは本来、名前もないことが多く、登場シーンもわずかばかりです。千葉さんはファンもそこまで注目していないであろうキャラに、信念を持って声を吹き込んでいました。長年第一線で日本の声優界を牽引している理由が、分かるインタビューです。

　さらに、千葉さんは同インタビュー内で「あの舞台を東京と考えると、地方からいろんな人が来てるわけ。（中略）地方性というか独特の言葉を多用することによって、混在した世界を表現したかった」と答えています。

　千葉さんのインタビューを通して、筆者も「例えザコキャラであったとしても死の間際に、誰かに何かを伝えるのでは」という考えがよぎるようになり、改めて過去のアニメ『北斗の拳』を見返すと、今まで関心の向かなかったザコキャラにも目が向くようになりました。

　そんな千葉さんは、どうやって断末魔の内容を決めていったのでしょうか？　インタビューでは

「なにを言わせるか考えて、思いついたら紙に書くんですよ。たとえば『レバニラ炒めライス』ってのもあったと思うんですけど。（中略）ひとりで言わずに大人数で分担する。たとえばレバニラを『レ』と『バニラ』で分けるだとか『いた』と『め』とか。するとね、最初の『レ』を言ったザコは『礼を言わなきゃ』と言いたかったかもしれない。」

　と、答えています。ただふざけているように見えた断末魔の裏側には、こんなに細かい設定が隠されていました。

　ちなみに、原作マンガ『北斗の拳』の作画担当・原哲夫先生は「北斗語り」のご自身の回で、原作マンガのなかで表現した断末魔の叫びについて「言葉の響き的な遊び心は入ってくるんだけど、狙いはリアリティの追求だったんですよ」と語っています。ザコキャラであっても手を抜かない姿勢は、千葉さんも原先生にも共通するものだったのでしょう。

　千葉さんの断末魔についてSNS上では、「断末魔バリエーションについて語り合える相手がほしい」「千葉さんのザコキャラの脱線具合は独特の世界観作った名人芸」などと熱く語るファンの声が見られ、いかに千葉さんによってザコキャラに光が当てられたのかがうかがえます。そんなザコたちは後年、スピンオフマンガ『北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌』が連載されたり、舞台『北斗の拳 ‐世紀末ザコ伝説‐』が上演されたりと、ある種の「花形」とも言えるポジションになりました。

　2024年から公開される新作アニメに千葉さんが出演するか、現時点では不明ですが、ぜひ色んな役で新たな断末魔を楽しませて欲しいところです。

（LUIS FIELD）