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和製サンダーバード? 高橋良輔、富野由悠季らが参加した本格SFアニメ『ゼロテスター』企画秘話

マグミクス / 2023年11月13日 6時10分

和製サンダーバード? 高橋良輔、富野由悠季らが参加した本格SFアニメ『ゼロテスター』企画秘話

■若き日の豪華クリエイターが参加!

 放送開始50周年を迎え、初となる見放題サービス配信開始で注目を浴びている『0(ゼロ)テスター』(以降、ゼロテスターと表記)。

 今からちょうど50年前、あの『機動戦士ガンダム』で有名なサンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)を後に立ち上げる7名のメンバーたちが、アニメ制作会社「創映社」と制作現場「有限会社サンライズスタジオ」を設立して一年。イギリスからの輸入で大ヒットした『サンダーバード』をヒントにしたアニメーションを作れないかという、東北新社のオーダーで初めて作ったオリジナルのTV作品が『ゼロテスター』です。

 物語は、未来の地球を舞台に「生命維持度ゼロ」の過酷なテストに挑む三人の若者を中心に、突如襲いかかる宇宙人に対して、さまざまなメカを駆使しながら地球の命運を賭けて戦う「ゼロテスター」たちを描くというもの。

 スタッフには、原作に、サンライズを一躍有名にしたスーパーロボットアニメ『勇者ライディーン』をはじめ『無敵超人ザンボット3』『装甲騎兵ボトムズ』『戦闘メカ ザブングル』『機動武闘伝Gガンダム』などの企画原作やシリーズ構成を務める鈴木良武。監督は『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』の高橋良輔、シナリオには『ルパン三世』の監督や脚本でも知られる吉川惣司、そして『ガンダム』の富野由悠季(喜幸)も演出に名を連ね、さらに作画に『ガンダム』や『クラッシャージョウ』のキャラクターデザイン、作画監督の安彦良和等々、日本のアニメ界を支えてきた豪華メンバーが勢ぞろいという驚きの布陣です。

 しかし当時はいずれもまだまだ若手。富野監督ですら30歳そこそこの年齢で、まさにアニメアーティストとしての力量を発揮し始めた時代の作品だとも言えるでしょう。

 そんな『ゼロテスター』には、関係スタッフ間でも謎とされている秘話があります。それは、オープニングにクレジットされる「ジョン・デドワ」というメカデザイナーの名前です。

■謎のデザイナー「ジョン・デドワ」とは

『ゼロテスター』 (C)J.D&東北新社

「サンダーバードをモデルに」という東北新社の当時の上層部の言葉通り、分離合体する戦闘機の1号機から始まり、戦闘母艦基地の2号機、水中活動を行う3号機、巨大なコンテナで輸送を担う4号機……と、その構成はかなりサンダーバードを意識したものになっています。これは、当時のスポンサーであった「ポピー」の「ポピニカ」という玩具のラインナップも意識したものですが、これらのメカをデザインしたのは、ジョン・デドワなる人物。

 当初、これは、サンダーバードを制作したイギリスの映像会社のデザイナーだと言われていました。しかし、実際のデザイナーは別人なのです。

 デザインを担当したのは、アニメやSFファンの間では著名なSFクリエイター集団「スタジオぬえ(当時はクリスタルアート名)」のデザイナーをはじめとする日本側のスタッフたちでした。これは『ゼロテスター』の企画制作の最前線にいた、後のサンライズの企画部長で三代目の社長でもあった私の上司から直接聞いた話です。

 確かに『ゼロテスター』の企画時には、東北新社の方からイギリス側に打診をしたそうです。しかし、あまり色よい返事を得ることが出来ず、それならばと、企画初期のラフデザインに加え当時新進気鋭の「スタジオぬえ」にも白羽の矢を立てたのです。

 では、なぜジョン・デドワなのか。

「その方が箔が付く」から。海外デザインというイメージアップを狙ったという、なんとも単純で驚きの理由だったようです。要するに、ジョン・デドワは、東北新社側で考えたペンネームのようなものと考えるのが正しいのです。

 今聞くと「それでいいのか!?」と思いますよね。しかし、それが暗黙の了解で通ってしまうというのが50年前のテレビ業界だった……ということのようです。

 私が話を聞いたおりは、イギリス側に、本当にジョン・デドワという名前の人がいたようなニュアンスも感じましたが、その人物が実際にイギリスのデザイナーであったかなどもはっきりしません。いずれしても『ゼロテスター』に登場するさまざまなメカは、すべて日本側でデザインされたことに間違いはありません。

あれから50年。具体的な真実を知っているはずの方々は、もはや残念ながらこの世にはいらっしゃらず、このデザイナー名の経緯について確証を得ることは不可能でしょう。しかし、そんな彼らの努力?の末に出来上がった番組が、半世紀後の今も私たちを楽しませてくれているのですから、それこそ「ゼロからスタートしたサンライズ」の挑戦の答えが、今、ここにあるのかもしれません。


【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

(風間洋(河原よしえ))

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