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『シャーマンキング』作者・武井宏之にも襲いかかる「試練」の数々 手掛けた仕事の「約半分」は世に出ていない?

マグミクス / 2023年11月15日 18時10分

『シャーマンキング』作者・武井宏之にも襲いかかる「試練」の数々 手掛けた仕事の「約半分」は世に出ていない?

■自分の仕事は「自分の絵」を描くこと

 この2023年で誕生25周年を迎えたバトルファンタジーマンガ『SHAMAN KING(シャーマンキング)』は、最新作となる『SHAMAN KING THE SUPER STAR』が講談社「少年マガジンエッジ」で連載中です。残念ながら「マガジンエッジ」は10月発売の11月号で休刊となりましたが、その後は講談社のマンガアプリ「マガポケ」に移籍して連載が継続されること、さらに、同作に続く『SHAMAN KING』の新章『SKY』こと『SHAMAN KING YARD』が準備されていることが明らかになっています。

『SHAMAN KING』誕生25周年を記念したロングインタビュー企画の最終回となる今回は、作者・武井宏之先生『SHAMAN KING』以外への取り組みについてお聞きしていきます。
(取材・執筆:タシロハヤト/編集:マグミクス編集部)

 2023年秋からTVアニメの放送が始まった『ビックリメン』で、武井先生は「キャラクター原案」を担当しています。「デザイン」ではなくて「原案」というのは、線画に起こす作業をしないということもありますが、「世界観の構築を含めて考え、提案する」という意味も込められているそうで、マンガの執筆以外にもさまざまな仕事をされています。

* * *

――『ビックリメン』は最新に近いお仕事として、以前から結構な数の作品やイベントで、そうしたデザイン的な立場で関わっています。同作に関するものづくりで、想い出深いお話はありますか?

武井宏之(以下、武井) 進行形だけど『ビックリメン』は良かったよね。ちょうど弟が『ビックリマン』のストライク世代で、子どもの頃は一緒にシール集めに奔走したので、僕も思い入れがある方だと思うんだけど、今作は頭身が高い設定でしょ。『ビックリマン』はあの正方形のシールと二頭身のキャラ、世界観が唯一の正解だし、さらには個人的に「自作シール」界隈の作品も大好きなので、これどうなんだろうと思いつつも、自分に来た仕事だから自分の絵を描くしかない。

 まーどうやっても(元祖とは)違うんだから、覚悟しちゃえば僕の特技を生かせる最高の題材だと思って引き受けました。神話ベースであることやキャラ付けや変身後のアレンジ、絵柄やネタ出し……こういう特技を評価され、指名してもらえるのは最高に嬉しいんです。

――確かに(笑)高すぎず低すぎない、ほどよい頭身や絵柄は最適だと思います!

武井 むしろこちらの提案を反映しすぎなのが心配だったけど、僕が考えるよりすごく適温でやってくれてる。もーちょい絵は普通なのが良いのでは……とか思うけど、意地で寄せてくれてるのもありがたいことだし、それでもなお楽しくて明るい作品にしてくれてるのは月見里監督はじめ、製作陣の技量のおかげですね。

 アニメは尺の割に情報が多いから、本来あるべき段取りが省かれてるのはもったいないんだけど「本当に大切な部分」は丁寧に描いてくれてる。数字とか理屈とか世間体とか気にする人も「気付き」で優しい気持ちになれる。賢い人ほど癒しになるんじゃないかな? だから『ビックリマン』を知ってる人も知らない人も気軽に見て欲しいよね。このあと何が起こるかわかんないけどね(笑)

――他には、公共の媒体だと、東京都パラスポーツ応援プロジェクト「TEAM BEYOND」のパネル展や、JR東日本の新幹線車内サービス誌「トランヴェール」などがありました。

武井 『ビックリメン』もそうだったけど、ほとんどの場合は当時『シャーマンキング』を好きだった子が大人になり、声をかけてくれるんです。そういうの嬉しいですよね。みんなそれぞれの道に進んで結構それなりの立場になっているケースが意外と多い。自分はこれでも数年に1回ぐらいは軽く落ち込んだりするんだけど、「ああ、間違ったこと描いてなかったんだ」とか思える。

 「トランヴェール」も楽しい思い出です。取材で恐山までチームと同行してね。ライターの子が「僕の初恋はアンナさんです!」とアピールしてくる。で、「いや、やっぱり違ってたかも」と(笑)。

――ひどい(笑)でもそういう時代の経過というのはわかります。自分もこの20年の間に『君が望む永遠』や『マブラヴ』シリーズというゲームを世に送り出して、一部の人には絶大な支持をいただきました。当時学生なんかだったユーザーさんも今ではさまざまなところで責任のある立場になって、そのおかげで仕事のご縁がつながることが結構あるんです。

武井 ほんとそう。そういうのはありがたい。そうだパラリンピックと言えば……実はオリンピック関連で結構大がかりな仕事したのに……っていうのもありました。アメリカの某大手企業がアニメCMやるってんで、張り切ってキャラを大量に描き起こしたのね。みんな実在の人物だから繊細な注文に修正重ねて。でもcovit-19イベントで吹き飛んじゃった!

■「ありえない報酬」でも「愛」だけで尽力したが…?

武井先生が取材・制作に協力した特集が掲載された、JR東日本の新幹線車内サービス誌「トランヴェール」2017年8月号

武井 だからさっきの話じゃないけど仕事の依頼があると嬉しくなって、ついうっかり引き受けちゃうのよ。よっぽどタイミングが悪い時以外。でも当然数が増えると問題も増える。……たぶん半分はあるんじゃないかな。立ち消えたりして世に出てない絵が。

――なんと! それは聞き捨てならないですね。はたから見ると、正直、順風満帆のように思えるんですが……

武井 全然! 改名考えてるぐらいには試練多いです。事故みたいなやつだと、とあるソーシャルゲーム。なんかやたら遠回しな謎のリテイク入るなあと思ってたら、結局のところいわゆる普通の絵柄が欲しいらしくて。今で言うAIのイラストみたいなやつ。

「じゃあなんでここに来たし! ひと月無駄にしたわ!」って(笑)

 以降、それ系の事故はないけど半分で済んでるならまだマシな方だと思うし、外的な要因はどうにもならないから大体自分のせいにしとけばストレスはない……っていうか実際自分のせいだし、幸い自分に甘いからすぐ解決する(笑)

 ただ、なかにはまだ悔しいのもある。例えば自社の商品を売るためのアニメ企画なのに、そのメーカーが出資しないとかあり得ないでしょ。

――え? マジですか!?

武井 そのメーカーの担当部署も出版社も僕もそりゃもうすごい熱意でチーム一丸で企画を進めてきたんだけど、それがどうにもトップに理解してもらえなくてね。僕は嫌いだったけど、「こうなったら数字で示すしかない」ってなって、何とか商品化にこぎつけて幸いにもダントツで成果を出せた。

 そしたら……気持ちはわかるんだけど怒っちゃって、しまいにはロイヤリティすら払いたくないと言い出したの。もとよりウチに入るのは小数点以下のパーセンテージとかいうあり得ない数字だったから、「愛」だけでやってたけど、企画を通すためにデザインとアイデアが何度も何度も意味の無い方向へ修正をお願いされるから結局自分から身を引くことにした。悔しいけど尊敬してるメーカーの信念も大事にしたいからね。

――それは悔しいですね……。自分もいろいろなお仕事をさせてもらい、社内の政治がプロジェクトに影響を与えた事例はいくつか知っています。しかしここまで直球で酷い話も珍しいですね。ロイヤリティの数字も驚きです。普通、看板を背負って立っている人への報酬として1%未満はないでしょう。それを「愛」でカバーしていただけに、その結末は心中を察してあまりあるものがあります。それにしても、世に出なかったイラストの画集とか、そういうものは出せないでしょうか……権利的には難しいですかね……?

武井 昔の絵は恥ずかしいから出さなくていい……。ただどれも勉強になったし、まだ発表されてない企画もいくつかあるので今後に生かされてくれれば良いなと思う。

 その前にまだ途中のやつもたくさんあるし順番に描き切っていかなきゃなので……。

――気になる発言ですね。未発表の企画はもちろんですが、途中のものを描き切る……。それが何なのか正式発表までは想像を働かせるとして、終わらせる意思を示していただけたことは、ファンの方にとって朗報だと思います!

 それでは、今回は長時間にわたってお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました!

* * *

 これにて武井先生へのロングインタビューは終了となります。
 本当は、まだまだお聞きしたいことがたくさんありましたが、それはまた次の機会に! できればそう遠くない時期に叶えたいものです。

 というのも、『SHAMAN KING』最新作は『SKY』に向けてマガポケでの連載が続きますし、来年2024年1月からは『SHAMAN KING FLOWERS』のTVアニメも始まります。ネタは尽きないのです!

 お忙しい先生ですが、その隙を縫って、またお会いできることを楽しみにしています。

【ギャラリー文言】【画像】実物「デロリアン」に「アウトラン」の筐体、無数のフィギュア…武井宏之さん所蔵の資料がスゴすぎる!(12枚)

(タシロハヤト)

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