「見開きで死にそうに」「ありえそうな怖さ」 『ぬ～べ～』の最恐トラウマ回

■悲しくて怖い「メリーさん」で感情ぐちゃぐちゃ

『地獄先生ぬ～べ～』は、霊能力と強力な「鬼の手」を持つ小学校教師の鵺野鳴介（ぬ～べ～）が、数々の妖怪・怪異を退治するマンガです。「週刊少年ジャンプ」で人気を博し、子供向けとしてアニメも放送していた一方で、大人が見てもトラウマになるような恐怖エピソードも多すぎると言われていました。今回は、特に強烈だったトラウマ必至のエピソードを振り返ります。

『ぬ～べ～』を知らない層にも、怪談話として有名な「メリーさんの巻」は、物語後半の屈指の恐怖エピソードとして知られています。メリーさんは全身真っ白な服を着ている女の子の霊で、爛れたような肌のおぞましい見た目をしています。さらに、手足のない不気味な人形を持って現れ、彼女が生前から持っていた強力な霊能力を使う、不気味で厄介な敵でした。

　ぬ～べ～のクラスの生徒である中島法子は、ある日メリーさんと遭遇してしまいます。メリーさんは噂の通り手足がない人形を法子に見せながら、「私のお人形……　手足がないの……　かえして……　手足をかえして！！」と詰め寄ります。法子は自分の四肢を引き千切られる幻覚を見せられショックで気絶しますが、目を覚ますとその手にはメリーさんが持っていたはずの人形が握らされていました。

　噂によると、人形を渡されてしまったら1週間以内にその手足を探さなくてはいけません。そうしないと、自分の手足を引きちぎられてしまうというのです。

　ぬ～べ～たちは、法子を助けるために学校中に隠された人形の手足を探します。しかし期限までに左足だけ見つけることができませんでした。その結果、法子は側溝から現れたメリーさんに足首をがっしり掴まれ、片足をちぎられそうになります。

　2話にまたがって描かれたこの話はトラウマ級の描写の数々に加え、ぬ～べ～の過去とも重なるメリーさんの悲しい背景も明かされたため「怖いし悲しいしかなりインパクトあった」「人形もメリーさんの顔も焼き付いてる」と今でも話題になっています。

　続いて紹介する「寄生虫の巻」は、幽霊・妖怪が絡まない生々しい描写の気持ち悪さで、特に虫嫌いの人から悲鳴があがったストーリーです。郷土資料室にあった江戸時代の乾燥食を食べてしまった立野広は、徐々に体に違和感を覚え始めます。気分が悪くなり、ついに耐え切れなくなった広は給食中に口を押さえて席を立とうとしますが、吐き出されたのは体内の管よりも大きな青虫のような生き物でした。

　この寄生虫はどんどん広の体内で成長し、体外に管を出して卵を産み、最後は広の身体を突き破って出てこようとします。ぬ～べ～の鬼の手により何とか退治されますが、寄生虫は妖怪変化ではないので現実に起こらないとも言い切れません。いくつか寄生虫の実例の話題も紹介され、最悪の後味を残した屈指のトラウマ回です。

「妖怪ではない敵」の恐ろしさでは、「『A』が来た！」の回も子供たちにトラウマを植え付けました。Aは妖怪などではなく、れっきとした人間で、残忍な描写と現実に起こりうる恐怖感が胸に残るエピソードです。

　Aは中学1年生以下の子供を狙う連続殺人鬼で、本編時点ですでに100人以上もの子供たちを惨殺していたにも関わらず、40年以上も捕らえられずにいる信じがたい凶悪犯です。Aに出会った子供は「赤が好き？　青が好き？　白が好き？」と聞かれ、「赤が好き」と答えると切り刻んだ血まみれ状態で殺され、「青が好き」と答えると溺死させられ、「白が好き」と答えると身体中の血を抜かれて殺されます。

　Aは人間なので本来ぬ～べ～の専門範囲外ですが、生徒たちを次々殺しかけたその残虐な行為に、ぬ～べ～は鬼の手で相手の「幽体を引きずり出す」という禁忌を犯してでもAを止めることを選びました。

　しかし、すんでのところで死を逃れたAは、もはや人間の域を超えた妖怪のような存在となり街に消えていきます。一番怖いのは人間だということを象徴するかのようなエピソードでした。

　その他、見開きページの恐ろしさでトラウマを残したのが、「海難法師」という回です。海で死んだ人びとの霊の集合体である海難法師にはぬ～べ～の必殺である鬼の手も効かず、さらには「見たら死ぬ」という設定もある最強クラスの妖怪でした。

　最終的には、海難法師はぬ～べ～たちにより封印されます。しかしこの封印直前の見開きで、海難法師の顔が「見開きのどアップ」で描かれました。どろどろに溶けたような顔と大きく見開かれた目、むき出しの歯など恐怖ポイントが満載で、しかも「見たら死ぬ」妖怪を、読者はアップで目撃してしまうというオチ付きです。海難法師の呪いに怯えた読者も多いのではないでしょうか。

（マグミクス編集部）