【漫画】実力差を見せつけられて挫折した生徒 6年後に再会した教師が涙した訳とは？【作者インタビュー】

■いい結果が「努力と比例する」とは限らないけれど？

　長年、美術を教えてきた漫画家の夏目さん。多くの生徒を見てきた夏目さんは、全員がスポットライトをあびるような「天才」ではないことを知っています。そんななか、挫折していく生徒には本当に大切なこととは「いかに好きであるか。続けられるか」であることを生徒たちに語っていたら……。

　夏目にーにさん（@212natsume）による創作マンガ『天才じゃない全ての才能へ　私が生徒に伝える大切な事』がTwitter（現：X）上で公開されました。いいね数は4.8万を超えており、読者からは「先生の言葉が素敵だな」「好きでい続けることが大事」「ゴールってたくさんあるんですね」などの声があがっています。

　作者の夏目にーにさんにお話を聞きました。

ーー今作を描くうえでこだわったポイントや、お気に入りのシーンなどはありますか？

　ラストの顧問が目頭を押さえるシーンです。指導者である以上、いい絵を描いてもらって皆にスポットライトを当てたいと思うものです。

　しかし、現実はごく一部の人しか当たらない。悔しさもありますが、それでも描き続けていることに対して喜び、伝え続けたことは間違ってなかったという安堵感をあのシーンに込めました。

ーー今作以外に、これまでにご自身が出会った「天才じゃない才能」をもった教え子さんで印象に残っている方はいらっしゃいますか？

　いろいろ事情があって途中で学校をやめてしまい、通信制の高校に通っている生徒がこの前私の個展に来てくれて、その生徒もマンガのように「いまだに描き続けて、絶対に絵描きになります！」と熱く語ってくれたのが、印象に残っています。

　その生徒には、じゃあ個展をやってみよう！と提案して案内状の作り方や、市内のおすすめのギャラリーとか具体的に紹介しました。その後どうなったかは、連絡がないのでわからないのですが、またあればマンガを描こうと思います。

美術教師としても活躍する漫画家がすべての創作者に贈る『第1集　今やれ、今:夏目にーに漫画短編集』著：夏目にーに

ーーたくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。

　感想はすべて目を通していて、なかには次の話につながることもあるので非常にありがたいです。どんな感想や意見でも、無関心よりは、マシだと思っています。

　最近印象に残ったのは「夏目さんの描くマンガは、表も裏も話に盛り込むのでそこが好き！」はうれしかったですね。あとは「短いページ数なのに泣いた」見たのもうれしいです。短い話に、ギュッとまとめるのが私のこだわりです。

ーー今作『天才じゃない全ての才能へ　私が生徒に伝える大切な事』が生まれたきっかけや、理由を教えてください。

　「取り上げるのはいい子ばかり」との感想をみて、確かに逆側の視点も入れたら面白いかもと思いネームを描きました。

ーー自分の現状や将来について悩んでいる多くの人に響く内容でした。改めて今作を通じて伝えたい思いなどを教えてください。

　絵の世界で脚光を浴びる人は1000人いたらひとりいるかいないかで、残り999人は、もう才能ないからやめようと考えていると思っています。

　そのなかのひとりに私がいて、絵画でも頑張っていますが、SNSなどで目につくスターの売れっ子と比較して「なんてしょぼい活動しているんだ俺は」と自戒の日々です。

　しかし、Twitter（現：X）でマンガを発表し続け最近は多くの人に見られるようになって、媒体は違えど普段やっている絵画の活動の100倍以上反響を感じることができています。

　いずれも、腐らず続けていたから、描くことに対して好きだという気持ちを持ち続けられたから。だから、腐らず描いていこう！　そんなテーマです。

（マグミクス編集部）