1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. アニメ・コミック

『ガンダム』のシャアは「サイコパス」? 不可解な行動の背景、時代を切り開く能力も

マグミクス / 2023年11月30日 6時10分

『ガンダム』のシャアは「サイコパス」? 不可解な行動の背景、時代を切り開く能力も

■気になるシャア・アズナブルの精神構造

 もしも精神科医がアニメキャラクターをカウンセリングすることになったら、あの人物に強い関心を持つのではないでしょうか。あの人物とは、『機動戦士ガンダム』(1979年~80年/テレビ朝日系)の人気キャラクターであるシャア・アズナブルです。説明するまでもなく、ジオン軍のエースパイロットとして活躍した「赤い彗星」のことです。

 仮面の男・シャアの本名は、キャスバル・レム・ダイクン。ジオン公国の創始者であるジオン・ズム・ダイクンの息子という高貴な生まれでしたが、両親がともに非業の死を遂げたことからジオン公国の実権を握ったザビ家を憎むようになります。成長したシャアは経歴を偽ってジオン軍に入り、目覚ましい軍功を立てる一方、ザビ家への復讐のチャンスを虎視眈々と狙います。

 多くの人を魅了するカリスマ性をシャアは持ちながら、ザビ家を倒すためには手段をいっさい選ばないという冷酷な顔を隠し持っています。シャアの精神構造はどうなっているのか、精神科医ならずとも気になる人は多いはずです。

■脳科学者が説く「サイコパス」の特徴

 脳科学者の中野信子氏の著書『サイコパス』(文春新書)を開くと、「サイコパス」の特徴が以下のように挙げられています。

・外見や語りが過剰に魅力的で、ナルシスティックである。

・恐怖や不安、緊張を感じにくく、大舞台でも堂々として見える。

・多くの人が倫理的な理由でためらいを感じたり危険に思ってやらなかったりすることも平然と行うため、挑戦的で勇気があるように見える。

・お世辞がうまい人ころがしで、有力者を味方につけていたり、崇拝者のような取り巻きがいたりする。

・常習的にウソをつき、話を盛る。自分をよく見せようと、主張をコロコロと変える。

・ビッグマウスだが飽きっぽく、物事を継続したり、最後までやり遂げることは苦手。

・傲慢で尊大であり、批判されても折れない、懲りない。

・つきあう人間がしばしば変わり、つきあいがなくなった相手のことを悪く言う。

・人当たりはよいが、他者に対する共感性そのものが低い。

 かなりの部分が、シャアに当てはまるではありませんか。「サイコパス」は、特に共感能力が欠けていると言われています。それゆえ他人の死を平然と見ていることができるわけです。士官学校時代の学友だったガルマ・ザビを謀殺した瞬間の、シャアの笑った表情などは、まさにサイコパス的だと言えるのではないでしょうか。

 一年戦争のどさくさに紛れてザビ家への復讐を果たしたシャアは、『機動戦士Zガンダム』(1985年~86年/テレビ朝日系)ではクワトロ・バジーナという偽名を名乗り、敵対していたアムロ・レイと共闘することになります。しかし、劇場アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)では再びアムロと戦い、さらには地球に小惑星アクシズを落とし、地球人類の粛清を図ります。

 シャアのこうした不可解な行動も、「サイコパス」というキーワードからひもくと、納得できるものがあります。

■冷酷さが強調された『THE ORIGIN』のシャア

シャアはザビ家の御曹司であるガルマと親交を深めつつ、着実に復讐を進めていく。画像はBS12で木曜深夜に再放送中の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』 (C)創通・サンライズ

 犯罪サスペンス映画『羊たちの沈黙』(1991年)が世界中で大ヒットしたことから、サイコパス(反社会性パーソナリティ障害)という言葉は、広く知られるようになりました。ファーストガンダムこと『機動戦士ガンダム』がテレビ放送されたのは1979年からです。「サイコパス」という言葉がまだ一般化する前から、富野由悠季監督はシャア・アズナブルという非常に複雑な精神構造を持つキャラクターを造形していたことになります。

 安彦良和監督が手掛けるアニメシリーズ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』全13話が、2023年10月5日からBS12の毎週木曜の深夜2時枠「アニメ26」で放映されています。シャアの生い立ちから描かれ、シャアは士官学校に入学するために、そして自分の正体を隠すために、罪のない人たちを次々と巻き込み、死に追いやります。

 そのことに関して、シャアは良心の呵責をまるで感じていません。安彦監督はかなり意図的に、シャアがサイコパス気質の人間として冷酷に育っていく様子を描いているようです。こんな兄を持ってしまったセイラさんが不憫(ふびん)でなりません。

■「サイコパス」が新時代を切り開いてきた?

 フィクションの世界の「サイコパス」は、『羊たちの沈黙』のレクター博士のような凶悪犯罪者のイメージがありますが、「サイコパス」は実在し、人口の1%以上は「サイコパス」が占めていると言われています。大企業のCEO、政治家、弁護士、外科医など重大な決断をする職業に就いている人に、サイコパシー傾向の高い人が多いそうです。

 中野氏は、アップル社の創設者スティーブ・ジョブズも天才的なプレゼンとネゴシエーションの才能を持つ一方、古い知り合いは次々と切り捨てたことから、「サイコパス」の性質と合致すると指摘しています。「サイコパス」は常識にとらわれず、リスクを負うことも気にしないため、新時代の開拓者となるケースが少なくありません。

 戦国時代の武将・織田信長なども、「サイコパス」だったのではないかという説がささやかれています。歴史はそうした人物たちによって、切り開かれてきた一面があるのかもしれません。

 シャアが「サイコパス」なのかどうかは、精神科医ではないので断定することはできません。それでも、やはりシャアの波乱に満ちた刺激的な生涯は、我々を魅了するものがあります。戦国時代と同様に「宇宙世紀」という動乱の時代だったからこそ、シャアのような危険を恐れないカリスマ性の持ち主が大いに活躍したのではないでしょうか。

(長野辰次)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください