R指定じゃなくていいの? 一応「子供も見られる」トラウマ級アニメ映画3選
マグミクス / 2023年12月8日 20時10分
■誰もが観られるとはいうものの
劇場によっては映画を観る前のお馴染みの「映画泥棒」のCMの最後に、鑑賞する人の年齢に関する「レーティング」が映倫(一般財団法人 映画倫理機構)という組織によって行われていることが紹介されています。
なお、判定において明確な基準はないとされており、流血シーンが多くても年齢制限がされない作品もあります。そのなかには「さすがにここまでのグロシーンは子供に見せられない」と大人でさえもためらうような作品もあり、SNSではこれから観る人へ注意喚起する投稿もされるようになりました。
今回は、そんな人によってはトラウマになる可能性もある、過激な「一応全年齢向け」の劇場版アニメ作品を紹介します。
●『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
2023年11月17日に劇場公開されたばかりの、水木しげる先生生誕100年記念作品の完全新作長編アニメーション『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、SNSを中心に大きな注目を集めています。
昭和30年代の目玉おやじの過去や、鬼太郎誕生の秘密を描いたストーリーを高く評価されていますが、かなり凄惨なシーンや倫理的にも衝撃的な要素がありながらも、レーティングがPG12(12歳未満の年少者には保護者の助言・指導が必要とする)で小学生も観られるということに、驚く人も少なくありません。
同作は2018年から2020年にかけて、毎週日曜朝に放送されていたテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第6期をベースとしており、現代パートに登場する鬼太郎、ねこ娘は第6期と同じデザインとキャストとなっています。しかし、昭和31年を描く過去のパートでは、日本の政財界を裏で牛耳る龍賀(りゅうが)一族が支配する哭倉村(なぐらむら)を舞台に、一族の人間が次々と惨殺される……という横溝正史作品のようなおどろおどろしい展開が描かれます。
レーティングを定める映倫はレーティングがPG12である理由を「簡潔な殺傷・出血の描写がみられる」としていますが、事件の全貌が明らかになるシーンの凄惨さのほか、一族に秘められた恐るべき事実は子供に刺激が強すぎると危惧する声もあるようです。
しかし『ゲゲゲの鬼太郎』の前身となったマンガ『墓場鬼太郎』にも見られる、人間のおぞましさや弱さを描いているほか、作者である水木しげる先生のパーソナルな部分にも触れていることから、「ぜひ劇場で観てほしい」「辛いけどグッときた」と評判を呼び、公開2週目の興行成績が初週を上回る快進撃を見せています。
●『オオカミの家』
2023年夏に上映開始されたチリの長編ストップモーションアニメ『オオカミの家』は、ふたり組監督のレオン&コシーニャが手掛けており、レーティングこそG(全年齢向け)に指定されていますが、かなり恐ろしい作品です。
チリのピノチェト軍事政権時代から実在したコミューン「コロニア・ディグニダ」にインスピレーションを得た同作は、とある施設から脱走して森のなかの一軒家で暮らし始めた少女・マリアと、そこで出会った2匹の子ブタをめぐる物語です。家の内部で起こる不思議な出来事や、全編通して漂う不穏な閉塞感で、息が詰まるような映画体験が味わえます。
何よりもストップモーションアニメの手法が話題となっており、ストーリーの進行と同時に、不気味な等身大の人形や壁画が構築されては破壊されていく様のすべてが全編ワンカットのように画面にとらえられている、恐ろしく手間のかかる独自の手法が使われています。
世界各地の美術館で実寸大の家の部屋のセットが組まれ、等身大の人形や絵画を作って、その過程もエキシビションとして観客に公開するという斬新な制作体制も話題となりました。すべてが変容して安定しない悪夢のような世界観、凄みのある独特の映像で注目を集めています。
高い評価を受けており、子供も見られるものの、内容の怖さ、難しさでなかなか劇場に連れて行くのは難しそうな作品です。
●『劇場版 BLOOD-C The Last Dark』
日本刀を手に異形の生物である「古きもの」を狩る少女・小夜を主人公にしたモダンホラーアニメ『BLOOD-C』は、あまりにもグロテスクな描写ゆえに、中国政府からは「暴力を賛美する作品」として批判を受けています。
その凄まじさはTVアニメ版最終回において古きものが複数に分裂し、町の住人やメインキャラクターを襲う場面でもさく裂しました。「臼のなかに住人を詰めてミキサーですり潰す」「両足をつかみ、真っ二つに引き裂く」など、残酷な方法で殺害して食べる……という描写が相次いでいます。そのため、現在、配信で視聴できるものはモザイクや白い光によって規制がかけられています。
最終回を観た人が「どうかしてる」「グロ耐性ないと絶対観られないだろ」と唖然とするなか、劇場版は「劇中での殺傷、肉体損壊、血しぶき描写」があるもののPG12に留まったことで、さらなる衝撃を与えました。しかし劇場版のストーリーはTVアニメと地続きであるものの、グロ描写は最終回ほど多くなく、「過剰にビビってたけど劇場版は劇場版で面白かった」という感想もあります。
後に『BLOOD-C』は実写化作品や舞台版も制作されていますが、いずれも「あそこまでグロやってたのに?」とファンをハラハラさせる作品でもあるようです。
(田中泉)
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