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「ガンダムビルドシリーズ」誕生から10周年 「ガンダム」本編ではできなかった「最大の功績」とは?

マグミクス / 2023年12月1日 6時10分

「ガンダムビルドシリーズ」誕生から10周年 「ガンダム」本編ではできなかった「最大の功績」とは?

■リアルにこだわらないドラマ作りが可能に

「ガンダムシリーズ」から派生した「ガンダムビルドシリーズ」が、今年2023年で誕生10周年を迎えます。「ガンダム」というコンテンツに、新しい可能性を見出した「ガンダムビルドシリーズ」を振り返ってみましょう。

 作品観として大きく違う点は、作品のメインとなるロボットです。「ガンダム」のMS(モビルスーツ)が兵器であることに対して、ビルドシリーズはそのプラモデル「ガンプラ」と呼ばれる商品ということです。ここが、戦争で人の生死を描くガンダムとは、一線を画すところでしょう。

 それゆえにロボット同士が戦うバトルものであっても、凄惨な戦いのイメージは薄く、戦いが終わった後に互いの健闘を称えあうスポーツものに近い感覚がありました。もっとも、この部分は個人の好みが出るところで、ガンダムらしくないと敬遠する人も少なくありません。

 しかし数字的なことを言えば、現在でもガンプラ市場で一定の顧客を生んでいるのは確かな事実です。長い歴史を持つガンダムというコンテンツでは、どの作品も少なからず不支持層は存在するものです。そのプラスマイナスのせめぎあいのなかで一定の利益を確保することが重要というものです。

 現在のガンプラ全体を見た時、「ビルドシリーズ」のラインナップ数の割合を見れば、どれだけコンテンツを支えているかわかるというものでしょう。そして、人気だけでなくビルドシリーズがガンプラに与えた影響は大きいものでした。

 たとえば、これまで正規のシリーズでは設定の都合上あり得なかったバリエーションを可能にしたことが一番に挙げられます。本来ならば試作機やエース機といったワンオフの機体のバリエーションを、無理なく「ガンプラである」という理由で実現していきました。

 商品的な面で言えば、ガンプラのMSとして発売、その金型を流用して本来のMSとしても販売するという方法も確立します。「HGBFビルドストライクガンダム」の金型を流用した「HGCE エールストライクガンダム」や、「HGBF クロスボーンガンダム魔王」を流用した「HGUC クロスボーン・ガンダムX1」などがありました。

 この他にも、本来のリアルな世界観ではありえないファンシーな機体「ベアッガイIII」というヒット商品の存在が挙げられます。この路線をさらに推し進めた「すーぱーふみな」に至っては、ほぼ美少女フィギュアというデザインで賛否両論を生みました。

 しかし、こういった「ガンプラは自由だ」という方角が新時代を生んだのも事実でしょう。この「ビルドシリーズ」の誕生が、閉塞気味だったガンプラ市場の活性化の呼び水となったことは間違いないと思います。

■「ビルドシリーズ」が切り開いた大きな可能性とは?

2023年10月から配信開始した最新作『ガンダムビルドメタバース』キービジュアル (C)創通・サンライズ

 前述しましたが、ガンダムシリーズは戦争と兵器を描く物語として確立しています。それを取り除いてゲームとしてのバトルに変換した「ビルドシリーズ」は、これまでのガンダムではできなかったことをいくつか実現していました。

 まずは「宿敵との共闘」でしょうか。もちろんガンダムシリーズでも実現したことはありますが、多くの場合は悲劇的な結末を迎えています。戦争のなかで命の取り合いをするわけですから当然のこと。和解の機会はそれほど多くありません。

 ところが「ビルドシリーズ」では戦いを通じてお互いを理解し、終われば仲間として認め合うというのが黄金のパターンになっています。特に最終決戦ではこれまでのメンバーが集合し、大乱戦のなかで大団円を迎えるというのも「ビルドシリーズ」のパターンのひとつになっていました。

 また、「ガンダム」の二次創作である「ビルドシリーズ」では、MSが新たなデザインになっているほか、オマージュされた場面やキャラクターが多くあります。このファンをニヤリとさせる「遊び心」も魅力のひとつではないでしょうか。

 第一期『ガンダムビルドファイターズ』では、原典で悲劇的な道を歩んだキャラクターたちが幸せそうにガンプラを作っている場面があり、ファンの間で大きな反響を生みました。こういった本来の歴史では見られなかった場面を見ることができるのが「ビルドシリーズ」の良い点だと思います。

 この原典で見られない夢の共演という部分は、ガンダムシリーズがリアルな世界観ゆえの弊害と言えるかもしれません。ファンが「見たい場面」というのは、時に整合性が合わない、設定的に矛盾があるといった正論で封殺されることがあります。

 それゆえにアニメ作品でなく、ゲームやマンガといったジャンルでは整合性や設定を無視した夢の共演がよくありました。ファンというものはお遊びとしてこういった夢の共演を喜ぶわけですが、原典であるガンダムシリーズはリアル感を前提にした世界観ゆえに取り入れるのは難しい側面を持っています。

 ところが「ビルドシリーズ」最新作になる『ガンダムビルドメタバース』では、これまでのアニメ主人公が全員集合するといった夢の共演を成功させていました。理屈ではなく見せ場を重視する。そういった柔軟さが「ビルドシリーズ」の魅力なのでしょう。

 思えば『ガンダムビルドファイターズ バトローグ』では、AIデータとしてですが、リボンズ・アルマークとシャア・アズナブルの激突という夢の戦いを描いていました。さらにこのリボンズがアムロに変わるという二段オチです。

 これまで「ウルトラマン」、「仮面ライダー」、「スーパー戦隊」と並ぶコンテンツでありながら、その世界観ゆえ主人公の共演という部分では後れを取っていた「ガンダムシリーズ」ですが、「ビルドシリーズ」によって可能になる時がやって来たのかもしれません。

(加々美利治)

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