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『鬼太郎』を裏切り続けて55年 「ねずみ男」はなぜ見捨てられないのか モデルの人物も実在?

マグミクス / 2023年12月2日 7時50分

『鬼太郎』を裏切り続けて55年 「ねずみ男」はなぜ見捨てられないのか モデルの人物も実在?

■『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』にも登場(?)

「たのしいな たのしいな おばけにゃ会社も仕事も なんにもない♪」

 思わず『ゲゲゲの鬼太郎』の主題歌を歌いたくなることはありませんか? 墓場で運動会に励む鬼太郎や茶碗のお風呂にのんびり浸かる目玉の親父が、楽しそうに思えてなりません。ちなみにこのフレーズは、テレビでは普段流れることのない2番の歌詞になります。

 TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』は、1968年からフジテレビ系列で放映が始まり、現在までに第6期まで製作されています。貸本版を原作にした『墓場鬼太郎』も、フジテレビの深夜枠で2008年にオンエアされました。

 2023年は原作者・水木しげる先生の生誕100年にあたることから、Netflixオリジナルアニメ『悪魔くん』が配信され、11月17日からは劇場アニメ『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』も公開中です。第6期の劇場版となる『ゲゲゲの謎』は、公開から10日間で興収5億円を突破する好調ぶりです。

 目玉の親父の若き日の活躍を描いた『ゲゲゲの謎』には、鬼太郎シリーズに欠かせない名バイプレイヤー「ねずみ男」を思わせるキャラクターも登場します。公式サイトでは「あのキャラクターに似た謎の少年」と紹介されていますが、ねずみ男と思って間違いないでしょう。

■お金にがめついキャラといえば、ねずみ男

 ねずみ男は半妖怪で、年齢は300歳を超えています。本名は「ペケペケ」。モノクロ放送だった第1期から登場し、毎回のようにトラブルを引き起こすか、悪賢い妖怪の口車に乗って、鬼太郎を窮地に追いやります。お金にがめつく、強いものに媚びへつらう、実にえげつないキャラクターです。

 何度もねずみ男に騙される鬼太郎は、その場で怒ってはみるものの、ねずみ男との交流を断つことはありません。子供の頃は「ねずみ男みたいにすぐ裏切るヤツなんか、助けなければいいのに」と思ったものですが、鬼太郎はねずみ男が危機に陥ると放っておくことができないのです。

 水木しげる先生にとって、ねずみ男はいちばんのお気に入りキャラクターだったそうです。主人公である鬼太郎はシリーズが進むにつれ、正義のヒーローになっていきましたが、ねずみ男は人間以上に人間臭い存在です。ねずみ男のそんな人間臭さを、水木先生は愛していました。

 臭さといえば、ねずみ男は必殺の武器を持っています。鬼太郎のようなリモコン下駄や霊毛ちゃんちゃんこではありませんが、ねずみ男の口臭や放屁は強烈さを極め、凶悪妖怪も失神させるほどです。ごくたまにですが、鬼太郎や猫娘たちのピンチを救うこともあるのです。

 人間でも妖怪でもない、半妖怪のねずみ男は、したたかでなくては生きていけません。非優等生キャラのねずみ男がいることで、『ゲゲゲの鬼太郎』は長く愛され続ける人気シリーズになったのではないでしょうか。

■ねずみ男には、モデルになった人物がいた

ねずみ男の活躍や名言、原作者や声優へのインタビューなどを収録した、『ゲゲゲの鬼太郎 CHARACTER BOOK ねずみ男大全』(文藝春秋)

 ねずみ男にはモデルになった実在の人物がいます。水木しげる先生の先輩にあたる、漫画家の梅田栄太郎さんです。『ゲゲゲの鬼太郎』がヒットするまではとてつもなくビンボーだったことが知られる水木先生ですが、同業者の梅田さんの生活も大変でした。

 水木先生の『ビビビの貧乏時代』に収録された短編漫画『貸本末期の紳士たち』に、当時のことが描かれています。水木先生たちのマンガは、貸本屋で人気を集めていたのですが、1960年代になると貸本屋が次々と潰れ、貸本マンガを量産していた出版社も倒産。原稿料がもらえない日々が続きました。

 貸本マンガを中心にしていた漫画家たちにとっては、受難の時期でした。そんな状況下で、梅田さんはいろんなお金もうけに手を出しては、失敗していたとのこと。それでもタフに生き続ける梅田さんを、水木先生は好ましく感じていたようです。

 鬼太郎が決してねずみ男を見捨てないのは、ビンボー時代をともに過ごした先輩漫画家へのリスペクトがあってのことだったのです。

■歴史の影や社会の歪みを感じさせる水木ワールド

 1980年代のマンガ実写化の先駆的番組だった「月曜ドラマランド」(フジテレビ系)で放映された実写ドラマ『ゲゲゲの鬼太郎』では竹中直人さん、実写映画『ゲゲゲの鬼太郎』(2007年)と続編『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』(2008年)では大泉洋さんが、ねずみ男を演じています。どちらもハマり役と評判になりました。ねずみ男は、俳優としても演じがいがあるようです。

 第6期のねずみ男役に続き、『ゲゲゲの謎』にもベテラン声優の古川登志夫さんが出演しています。古川さんは第3期のねずみ男を演じた富山敬さんの大ファンで、第5期のオーディションを受けたものの落選。第6期でようやく念願のねずみ男役を手に入れました。『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)のカイ・シデン、『うる星やつら』(フジテレビ系)の諸星あたるなど、お調子ものを演じればピカイチな古川さんですが、ねずみ男役はかなりの思い入れがあったことがわかります。

 水木先生は戦争体験者で、南方の戦場で妖怪以上に恐ろしい人間の姿を見てきました。『ゲゲゲの謎』でも、戦時中の悲惨なエピソードが語られています。実は古川さんも一番上のお兄さんが出征し、フィリピン沖で亡くなったそうです。歴史の影や社会の歪みを感じさせるのも、水木ワールドの特徴でしょう。

 水木先生が生み出し、古川さんら歴代の声優たちが命を吹き込んできたねずみ男には、半妖怪としての生い立ちやビンボー生活には屈しないという、バイタリティーとユーモラスさがあります。ビビビのねずみ男は、『ゲゲゲの鬼太郎』のもう一人の主人公だと言っても過言ではありません。

(長野辰次)

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