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劇場版『セーラームーンR』30周年 『エヴァ』にも影響を与えた「歴史的」キャスティングとは

マグミクス / 2023年12月5日 12時10分

劇場版『セーラームーンR』30周年 『エヴァ』にも影響を与えた「歴史的」キャスティングとは

■単に「ヒット」しただけではない? 大きな功績

 本日12月5日は、1993年に『劇場版美少女戦士セーラームーンR』が公開された日。今年2023年で30周年になります。今なお『セーラームーン』を語るうえで、話題にのぼることの多い本作について振り返ってみましょう。

 本作はTVアニメとして当時ブームとなっていた『セーラームーン』初の劇場版です。当時のTVアニメでは第2部『美少女戦士セーラームーンR』を放送中、ちょうど「ブラックムーン編」の中盤あたりでした。

『セーラームーン』は一大ブームになるほどの人気作でしたが、当時はまだ女児向けアニメ作品に対する世間的な評価は低く、公開時期も二転三転したそうです。結果的に、東映アニメ作品の看板であった「東映アニメフェア」が春休みと夏休み公開だったことから、その空いた枠である冬休み・正月映画として公開が決まりました。

 本作は配給収入13億円、1994年の邦画配給収入7位を記録するヒット作品となります。このヒットを受けて『セーラームーン』の映画は翌年も続くことになりました。それゆえ本作は2年目に入っていた『セーラームーン』ブームを、一般に大きく認知させた作品だと言えるかもしれません。

 その内容も劇場版に相応しいクオリティの高い作品でした。映像、音楽、ドラマ、どれもがファンからの評価は高く、TV版も含めて「アニメ『セーラームーン』の最高傑作」という人もいます。そのことは、近年に行われたNHK番組『発表!全美少女戦士セーラームーンアニメ大投票』において、「あなたの好きなエピソード」部門で第1位を獲得したことからもわかるのではないでしょうか。

 この作品が他の作品に与えた影響として、特筆されることが多いのが、「庵野秀明さんが映画館で3度観るほど感銘を受けた」という逸話です。本作で庵野さんは地場衛の子供時代を演じていた声優の緒方恵美さんに注目しました。そして、企画中だった『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジ役は緒方さん以外にいないと思ったそうです。

 本作では、子供時代の衛は特に繊細な部分がクローズアップされていて、当時『幽☆遊☆白書』の蔵馬役でブレイクしていた緒方さんの演技とは異なる部分が多々見れました。この点を踏まえると、本作が後の『エヴァ』ブームに大きな影響を与えたと言えるかもしれません。

 このように、さまざまな分野に大きな影響を与えた『劇場版美少女戦士セーラームーンR』のどこが多くの観客を魅了したのか、具体的に解説していきましょう。

■ミュージカルの先駆けだったクライマックス曲

BiSHが歌う『セーラームーンR』の名曲「Moon Revenge」を収録したトリビュートアルバム『美少女戦士セーラームーン THE 25TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE』(キングレコード)

 本作は当時連載中だった原作マンガの内容とは無関係のアニメオリジナル作品です。それゆえ原作者である武内直子先生は製作に関与していません。そのことが残念だったようで、次回作『劇場版美少女戦士セーラームーンS』では、原作マンガを描き下ろすなど積極的に関与することになりました。

 本作は幼いころに衛と知り合った異星人フィオレが、約束を果たすためにふたたび姿を現すところから始まります。その約束とは、衛から餞別(せんべつ)としてもらった赤いバラの代わりに、お返しの花を渡すこと。しかし、星のエナジーを奪うキセニアンに意志を支配されたフィオレは、その目的を捻じ曲げられて地球をキセニアンの花で覆いつくそうと企てます。

 セーラー戦士たちはそれを阻止しようとしますが、最初の戦いで衛はフィオレの手に落ちます。地球を守るため、そして衛を助け出すためにセーラー戦士は敵の本拠地へと乗り込むのでした。

 まず注目するのは「立場の逆転」です。物語の定番といえば、さらわれたお姫様を王子様が救い出すというのが鉄板ですが、『セーラームーン』では女性が主人公であるがゆえ、セーラームーン/月野うさぎが囚われた衛を取り戻すというのが、原作からのパターンとなっています。

 これにより作品の雰囲気が定番とは異なる作りになっている点が、当時ブームとなった『セーラームーン』が新しかった点でしょう。この作品から「戦う女性チーム」作品が後にいくつも続き、現在では一大コンテンツにまでなりました。

 なかでも『セーラームーン』で特筆する部分は、主人公うさぎのやさしさだと思います。単純にヒーローをヒロインに変えたのなら、勇ましさが目立つものでしょう。しかし、うさぎはあくまでも泣き虫でドジな女の子。セーラームーンに変身しても勇ましいと言うにはほど遠い存在です。

 ところが芯の強さは誰にも負けないほどです。この部分が女の子の共感を生みやすかったと考えられます。そして、そのやさしさが本作のキモになっていました。戦いの途中、仲間を人質に取られたセーラームーンは、フィオレの言われるまま戦いを止めてしまいます。

 ここでの仲間との絆の描き方も秀逸でした。これまで描いていなかったうさぎと出会わなければ、セーラー戦士はみんな孤独な存在だったという部分です。だからこそ、うさぎを中心としてセーラーチームはあるという演出は、クライマックスに向けて大きな意味を持ちました。

 そして、クライマックスに流れる「Moon Revenge」はエンディング主題歌でもあるのですが、ここでの起用は効果的で印象深いものになっています。各セーラー戦士の担当声優が歌う曲なのですが、そのソロパートと回想シーンがシンクロした映像は本作最大の見どころのひとつといっても過言ではありません。

 この「Moon Revenge」を作詞した冬杜花代子さんと作曲の小坂明子さんは後に「セーラームーン・ミュージカル」でも音楽を担当したコンビで、本作での映像とのマッチ具合は後にも生かされたことになります。

 もちろん、この他にも『セーラームーン』らしい笑いとテンポのよい展開など、1時間映画として完成度の高い作品となっていました。筆者としては、未見の人にはぜひ見てもらいたいおススメの作品のひとつです。

(加々美利治)

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