『ドラクエ』のダメージ床「バリアー」って何がどうなってるの? 見た目の進化の歴史
マグミクス / 2023年12月11日 20時10分
■「バリアー」を見れば『ドラクエ』のグラフィック史がわかる?
「ドラゴンクエスト」シリーズをプレイする時は、足元に注意しなくてはなりません。何せ歩くとHPが減ってしまう、「ダメージ床」なるものが存在するのです。分かりやすいものだと、「溶岩」や「棘の床」などでしょうか。
見るからに「熱い」「痛い」といった感覚が伝わってきます。もっとも有名なのが、「毒の沼」です。毒々しい紫色の泡立った沼地は、一歩進むごとに「ザン!」とダメージを負っていきます。いったいいかなるダメージなのかは分かりませんが、少なくとも「毒」による負傷であることは明確です。
一方、解せないのは、「バリアー」です。あれは、何がどうなっているのでしょうか。グラフィックの変化とともに、その正体を探っていきましょう。
初代『ドラゴンクエスト』のラダトーム城の時点で、「バリアー」は輝いています。初登場の時点では単に青と白の爽やかなストライプでした。見ようによっては「そこだけピッカピカに磨いた」ようにも思えます。しかしながら、その上を歩き続ければ普通に死に至ります(リメイク版では死亡せず)。
いったい、「バリアー」の何がどのようにして、勇者にダメージを与えているのでしょうか。初代の説明書を読んでも「この中に入ると、1歩ごとに15ポイントのダメージをうけます。バリアーの中に入るには、かなりの体力と勇気が必要でしょう」と、公式が正体を濁しています。
『ドラクエII』では「ストライプ」と「波形」の2種類のバリアーが登場しますが、やはりその仕組みはプレイヤーに委ねられていますし、『III』にいたっては説明書に記載がありません。トラマナの呪文解説のなかに文言が登場するのみで、それくらい「言わずものがな」の存在になっています。
この説明の不鮮明さは、次のように考えることも可能です。すなわち「バリアー」は直訳すれば「障壁」のため、どんな障壁を設けているかは城やダンジョンの設計者によって違っているのではないでしょうか。こうすれば、『II』のように2種存在していても納得です。
さて『V』まではおなじみの「ストライプ」だったバリアーですが、『VI』では一気にその姿を変えます。オレンジ色の光を放つ、何ともビリビリとした質感のものへと変わり、以降の『VII』と『IX』もこの系譜です。(『VIII』は未登場)。この辺りで段々と何となく「電気ショック」に近いものなのだろう、という共通理解がプレイヤーに与えられていったのです。
なおシリーズ初の3Dグラフィックの『VIII』で、「バリアー床」が未登場だったことは示唆的です。俯瞰視点だったからこそ「青色ストライプ」や「オレンジ色の光」といったマス表現で描写を省略できていたのに対し、それを他アングルから描写するには「バリアー床」の再解釈が必要となったはずです。
3Dでのバリアー床表現が見事に結実したのは、『XI』といえるでしょう。本作に登場したバリアーは、初期に近い青白いストライプでした。ただし、光が脈打っている要素も追加されています。「ラダトーム城のバリアーは本来、こういうものだったのか……」という深い深い感慨が、勇者を待ち受けているのでした。
これまで見てきたように「バリアー」の表現の変遷はそのまま、「ドラゴンクエスト」シリーズのグラフィックの変遷でもあります。なお、「何がどうしてダメージを受けるのか」に関しては、未だに想像の余白が残されたままです。グラフィックが鮮明になっていくなか、どうせなら残しておいてほしい想像の余白です。
(片野)
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