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宇宙人の定番「タコ型」「リトルグレイ」 日本の特撮では独創的なデザインのワケ

マグミクス / 2019年12月1日 8時20分

宇宙人の定番「タコ型」「リトルグレイ」 日本の特撮では独創的なデザインのワケ

■かつては「宇宙人」と言えばタコ型だった

 私たちが“宇宙人”と聞いて想像する姿はどのようなものでしょうか。かつてはタコに似た姿のものを挙げる人が多かったと思われます。おそらく現在は“リトルグレイ”と呼ばれる、小柄で頭と目の大きい全身灰色の宇宙人をイメージする方が多いのではないでしょうか。

 今回はタコ型宇宙人やリトルグレイなど世間一般のイメージする宇宙人が、日本の特撮作品にどのように登場するのかを見ていきます。

 タコ型宇宙人の初出はH・G・ウェルズの小説『宇宙戦争』(1897年)に登場した“火星人”です。火星の環境下で進化を遂げた軟体生物で、その姿は重力が低いため足が細く、知能が高いため脳が大きいというものでした。この“火星人”の登場以降、宇宙人と言えばタコに似た姿をしているというイメージが確立されていきました。

H・G・ウェルズ著『宇宙戦争』 (偕成社文庫)。表紙に“火星人の戦闘機”のイラストが描かれる

 “ウルトラシリーズ”の第3作目で宇宙からの侵略者との戦いを描いた『ウルトラセブン』(1967年~1968年)には、バラエティ豊かな宇宙人が数多く登場します。まず『ウルトラセブン』にタコ型宇宙人が登場するのかを見てみましょう。

 第9話「アンドロイド0指令」に登場したチブル星人は、頭が大きくて足が細いという姿でタコ型宇宙人に似た体の特徴を持っています。しかしデザインを担当した成田亨さんは、タコではなく貝殻から着想を得てチブル星人をデザインしたと言います。

 続いて第22話「人間牧場」に登場したブラコ星人は、顔が人間でいう腰のあたりにあるためタコと同じ頭足類を思わせる姿をしています。しかしブラコ星人には肝心の触手がなく、人間と同じ二足歩行のためタコ型宇宙人とは断定できません。

『ウルトラセブン』以外のウルトラシリーズでもタコの怪獣が登場することはあるようですが、どうやらタコ型の宇宙人は登場していないようです。

 また東映の“スーパー戦隊シリーズ”でも、宇宙からの侵略者が敵の作品がいくつかあります。その中でタコ型宇宙人と言える敵は、『特捜戦隊デカレンジャー』のクォータ星人ダゴネールや、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年~2018年)に登場した刺客マーダッコなどでしょうか。しかしいずれも従来のタコ型宇宙人の姿とは違い、二足歩行のいわゆる“ヒューマノイド型”。タコを人型のシルエットに再構成した姿をしています。

■現在の宇宙人のイメージ「リトルグレイ」の場合は?

リトルグレイ型の宇宙人が登場する、映画『宇宙人ポール』。歴代のSF映画のオマージュやパロディが詰め込まれたコメディ作品 (C)2010 Universal Studios. All Rights Reserved.

 続いて“リトルグレイ”について見ていきましょう。リトルグレイ型の宇宙人はスティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』(1977年)や、『宇宙人ポール』(2011年)など海外の映像作品に多く見られます。

 日本の特撮作品では、『ウルトラマンティガ』(1996年~1997年)第35話「眠りの乙女」に登場したデシモ星系人がリトルグレイ型と言えるでしょう。墜落した宇宙船から回収され24年のあいだ保管されていた宇宙人で、当初からリトルグレイとしてデザインが発注されたもののようです。

 この第35話は『ティガ』放送前年に発表され話題となった『宇宙人解剖フィルム』(1995年)を基にしたエピソードでした。また『ウルトラマンメビウス』(2006年~2007年)に登場したサイコキノ星人カコも、その正体はリトルグレイに似た姿をしています。

 特殊な例としては映画『ゴジラ2000ミレニアム』(1999年)に登場した侵略者“ミレニアン”がいます。ミレニアンはタコに似た姿で全身灰色です。前述したタコ型宇宙人とリトルグレイそれぞれの特徴を持っているのです。

映画『ゴジラ2000 ミレニアム』DVD(東宝)

 結論として、タコ型宇宙人もリトルグレイも日本の特撮作品に登場はしますが、従来のイメージ通りの姿で登場することはあまり多くないようです。

 日本の特撮作品に登場する宇宙人の多くは、人が中に入って演じる「ぬいぐるみ」によって表現されるため、“ヒューマノイド型”が主流です。CGや操演などの表現方法もありますが、やはりぬいぐるみの方が効率的かと思われます。タコ型宇宙人やリトルグレイの登場が少ない一番の理由は経済的な問題なのではないでしょうか。

 美術監督の池谷仙克(いけや のりよし)さんはファッション雑誌や酒肴などから着想を得て、『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』に登場する怪獣や宇宙人のデザインを手掛けたと言います。このような自由な発想によって、タコやリトルグレイなどの既存のイメージに縛られない独創的な姿の宇宙人が、日本の特撮作品には数多く登場してきました。

 宇宙は広大です。タコ型やリトルグレイのような宇宙人たちは、もしかすると宇宙では少数派なのかもしれません。

(森谷秀)

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