「イカれてる」「本当にゲーム?」ファミコン世代を震撼させた「伝説の怪作ソフト」とは
マグミクス / 2023年12月23日 21時50分
■「クソゲー」の枠におさまらない「怪作」の存在
「怪作」の意味を調べると「常識にとらわれない、怪しげで不思議な作品」を指す言葉のようです。そしてゲームの世界でも、同じような意味合いで「怪作」と呼ばれるタイトルがあります。
そういえば筆者が子供の頃に夢中になって遊んだファミコンでも、今考えると「怪作」と呼ぶにふさわしいゲームタイトルがあったことを思い出しました。
●これは本当にゲームなのか? 『マインドシーカー』
「怪作」の意味を知り、真っ先に頭に思い浮かんだのが、1989年4月にファミコン用ソフトとして発売された『マインドシーカー』(ナムコ)です。パッケージには「超能力開発ソフト」と銘打たれており、超能力者として一世を風靡したエスパー清田氏が監修したゲームでした。
「超能力開発」といえば、伏せたカードの絵柄を言い当てるなどのトレーニングが思い浮かぶのではないでしょうか。それをそのままファミコンゲームに落とし込んだのが『マインドシーカー』です。
「念力」「予知」「透視」といったトレーニングが用意されており、いずれも複数の選択肢のなかから正解を当てるだけ、というシンプルな内容です。そこに正解の確率を上げるヒントやコツなどの攻略要素が介在する余地はありません。シンプルに「己の勘を頼りに正解を当てていくのみ」という、究極の運頼み(あるいは超能力頼み)ゲームだったのです。
ひとりで『マインドシーカー』をプレイしているときの感情を言い表すとすれば、それは「虚無」です。ひたすら同じことを繰り返すうちに感情の揺れ幅が小さくなり、たまに連続成功しても真顔でボタンを押し続けるようになります。
「◯回成功させる」というゲームの進行条件を満たしたときですら、特別な喜びや達成感のような感情が生まれないのも、完全に「運」だけで決まるゲームだったからにほかなりません。そこにプレイヤーの技術的な向上は一切ないのですから。
まるで修行でもしているかのような、『マインドシーカー』のストイックすぎるゲーム性は、まさに「怪作」と呼ぶにふさわしいものです。いや、あれは本当にゲームだったのでしょうか……。
■原作ファンをドン引きさせた伝説のアドベンチャー!
画像は、ファミコンソフト『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』(シンセイ)
●キャラ崩壊というレベルじゃない? 『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』
人気マンガやアニメをモチーフにしたゲームはたくさんありますが、1989年7月にファミコン用ソフトとして発売された『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』(シンセイ)も「怪作」と呼ぶにふさわしいタイトルです。もちろん、人気料理マンガの『美味しんぼ』(原作:雁屋哲/作画:花咲アキラ)が題材になっています。
同作は主人公の山岡士郎が「究極のメニュー」を作るために奔走するアドベンチャーゲームで、推理アドベンチャーのように、選択肢を選びながらストーリーを進行させるという内容です。
その初っぱなの章では、「フォアグラよりうまいものを味あわせてやる」と山岡が啖呵を切り、アンコウ料理の情報収集を始めます。やがて小料理屋を訪れたところ、山岡が窓から店内を覗いたことで警官に捕まりそうになり、そしてこのゲームを広く知らしめることになった、冗談のような展開が繰り広げられるのでした。
山岡が警官に捕まりそうになったそのとき、「たたかう」「にげる」「じゅもん」という、まるでRPGのような選択肢が現れます。それだけでも原作マンガの雰囲気をぶち壊す奇妙な展開ですが、「じゅもん」を選択すると突如、山岡が「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」と唱えだすのです。もちろん、それで許されるわけがなく、山岡は逮捕されてゲームオーバーとなります。
説明するまでもないことですが、原作マンガの山岡士郎はこんなエキセントリックな発言をするギャグキャラではありません。ですが、このゲームの山岡は妙な言動を連発し、原作を知るプレイヤーをドン引きさせてくれました。
ちなみに先程の正解ルートは、窓を覗く前に「うそをつく」という選択肢を選ぶことでした。すると山岡が「あーっ、こんなところにシマアジがおちてるぞ」と突拍子もないことを言い出し、店内から板前がおびき出されるのです。これが正解ルートではありますが、山岡がつく嘘の破壊力も相当なモノがあります。
このように原作を知っている人からすると「キャラ崩壊」と言わざるを得ないシーンが目に余る、衝撃的な「怪作」でした。
『マインドシーカー』:
(C)MASUAKI KIYOTA
(C)1989 NAMCO LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』:
(C)雁屋 哲・花咲 アキラ・遊・シンエイ・小学館・NTV
(C)SHINSEI 1989
(大那イブキ)
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