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ターゲットはお子様にあらず? 『仮面ライダーX』従来作ほど人気が出なかったワケ

マグミクス / 2024年1月2日 6時10分

ターゲットはお子様にあらず? 『仮面ライダーX』従来作ほど人気が出なかったワケ

■シリーズ第3弾はなにがどうしてそうなったのか

 1974年にNET系列で放映された『仮面ライダーX』は、前作『仮面ライダーV3』に続くシリーズ第3弾です。『V3』との差別化を図るため、『仮面ライダーX』では対象年齢を上げて、変身システムの変更やギリシャ神話の神々をモチーフにした怪人など、様々な新機軸が打ち出されました。

 しかし、結果的に子供たちには受け入れられず、途中で大幅なてこ入れがおこなわれることになります。『仮面ライダーX』はそれまでの作品よりも、なぜ人気が出なかったのでしょうか。

●不振の理由その1 変身および戦闘の所作

 その理由のひとつとして挙げられるのが、「変身と戦闘の所作」です。

 Xライダーの場合、変身は「レッドアイザー」と「パーフェクター」というふたつの道具を用いて「セタップ(set up)」という動作をおこないます。そのため変身がまどろっこしくて時間がかかりすぎてしまい、ここぞというドラマがいちばん盛り上がったところで流れが中断するという結果になってしまいました。

 俳優の格好良さも見せられず、なにより真似できない変身シーンになってしまったことが、子供たちに受け入れられなかった理由なのかもしれません。

 また同作では、ライダーシリーズではじめて武器が使用されました。ベルトのバックル部分である「ライドル」には、右側にグリップが備え付けられており、これを引き抜くことで「ライドルスティック」「ライドルホイップ(ウィップ=鞭)」などの武器に変化するのです。

 しかしながら、全身改造人間のライダーが武器を持つのは、子供たちに違和感を残しました。いくら相手が悪の戦闘員や怪人だとしても、丸腰相手に武器で戦う姿からは卑怯な印象を受けてしまったようです。見ようによってはいじめに見えかねません。さらに先輩ライダーが素手だけで戦ってきただけに、武器がないと戦えないXライダーが弱く見えてしまったようです。

 東映のプロデューサーである平山亨さんは、著書『泣き虫プロデューサーの遺言状~TVヒーローと歩んだ50年~』(講談社)で「『X』に棒や鞭に変化するライドルを持たせたけど、仮面ライダーは武器を使わないイメージがある中で逆にハンデになったのかもしれない。歴代シリーズの中で『X』の視聴率が良くなかったのもライドルを刀みたいに振り回すところがマイナスに働いたんだろう」と述べています。

■先代が偉大すぎた? ライダー俳優の「ハードル」

「仮面ライダー 昭和 vol.4 仮面ライダーX」(講談社編、2016年、講談社)

●不振の理由その2 やたら細々とした設定

 人気が出なかった理由としては、「設定」のややこしさも挙げられるでしょう。

 Xライダーが戦う相手である悪の組織「GOD機関」は、表向きには敵対する大国どうしが、裏で手を結び日本侵略を狙うという秘密結社です。つまりGODの背後には諸外国が控えており、ショッカーやデストロンのように「シンプルな悪の組織」ではありません。

 GODが送り込む怪人も「ネプチューン」や「ヘラクレス」などギリシャ神話がモチーフになっており、それまでの単純な怪人とは一線を画していました。「なぜ敵の怪人が神様の名前を冠しているのか?」と、モヤモヤした視聴者も少なくないでしょう。

 さらに、第1話で主人公がいきなり恋人に裏切られたかと思うと、恋人とうりふたつの女性が現れ(双子の姉妹という設定)、なぜか三角関係モードに……。複雑な人間模様は幼い子供には難し過ぎたようですね。

●不振の理由その3 先代主人公がハードルあげすぎ

 そして「主人公」も、人気の出なかった理由に挙げられてしまっているようです。

 Xライダー/神敬介役を演じた速水亮さんは、ノースタントで危険なアクションに挑む先代V3の宮内洋さんと比べられ、大変だった様子がうかがえます。速水さんのアクションシーンは吹替えが多かったようで、さらにバイクの運転にも慣れておらず、しかも実は高所恐怖症だったとか。

 スタッフも、東映生田撮影所の内田有作所長から「速水をしごけ」と命令されており、あえて速水さんに対して突き放す態度だったようです。

 速水さんは「(初代ライダーから)3年近くやっているスタッフたちの中に、1人だけ新しく入っていくって、正直凄くやりづらかった」(講談社編 2014年 『仮面ライダー1971~1984 秘蔵写真と初公開資料で蘇る昭和ライダー10人』)と語っています。とはいえその後は、2017年刊行の『証言!仮面ライダー 昭和』(講談社 編)によると、第5話から加入する「おやっさん」こと立花藤兵衛を演じた小林昭二さんのアドバイスや、第8話から登場する「アポロガイスト」を演じた打田康比古さんの取りなしでスタッフとも打ち解けていったそうです。

 ただそのころには、すでに視聴率低下対策のためのてこ入れが始まっていました。

●視聴率低迷にいかなるてこ入れがなされたのか?

 そのてこ入れ策は、物語上の複雑な人間関係の整理から手をつけられました。恋愛展開を、第8話で相手ふたりが同時に死ぬという、強引ともいえる幕引きで整理します。

 怪人も、わかりやすく変更されていきます。第22話からラスボスの「キングダーク」が登場すると、その手下たる怪人も、歴史上の悪人や怪物に動物の能力をミックスさせた、従来の怪人に戻りました。

「セタップ」も、第28話でV3から改良手術を受けてパワーアップし、「大変身!」に変更されます。ようやくほかのライダーと肩を並べ変身ポーズができるようになったのです。

 そして直後に新必殺技「真空地獄車」が一瞬で誕生しました。なんと、60年代後半から70年代初頭にかけ連載され人気を博したマンガ『柔道一直線』(原作:梶原一騎/作画:永島慎二、斎藤ゆずる)およびそれを原作とする東映制作のTVドラマの必殺技である「地獄車」が、なぜか仮面ライダーの必殺技になったのです。当初のコンセプトであったメカニカル性はどこに行ってしまったのか……。

 そのようなてこ入れもむなしく、結局、『仮面ライダーX』は第35話で終了し、メカニカル性とは真逆の野性味溢れるシリーズ第4弾『仮面ライダーアマゾン』にバトンタッチしたのでした。

『仮面ライダーX』の人気が出なかった理由を見てみると、視聴者の思いに寄り添えなかったという面が浮かびあがってきました。そう考えると、これまで人気を博してきた「仮面ライダー」シリーズの主人公たちは、たとえ突飛に見えたとしても、その時代の視聴者の思いが形となって表れている姿なのかもしれません。

(LUIS FIELD)

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