1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. アニメ・コミック

『機動戦士ガンダム』アムロの父「テム・レイ」はなぜ地球連邦軍に復帰しないのか

マグミクス / 2023年12月29日 6時10分

『機動戦士ガンダム』アムロの父「テム・レイ」はなぜ地球連邦軍に復帰しないのか

■実はサイド6にも縁がある設定

 モビルスーツ。アニメ『機動戦士ガンダム』の主役ともいえる汎用人型兵器であり、地球連邦軍の反撃計画「V作戦」の特に「ガンダム」は、「テム・レイ」が開発したとされています。

 テムは主人公アムロの父親で、地球連邦軍大尉でもあります(パラレルワールドである『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、アナハイム・エレクトロニクスのMS開発部長として登場)。そして「サイド7」に対する、ジオン軍少佐シャアの攻撃により、テムは宇宙服を着ていたとはいえ、その身ひとつで宇宙に放り出されてしまいました。

 シャアの攻撃が宇宙世紀0079年9月18日です。このとき行方不明となったテムが、中立コロニーの「サイド6」でアムロに発見されたのは、0079年12月4日のことでした。

 発見されたテムは、ジャンク屋に住み込みしていたようです。酸素欠乏症になっているようですが、アムロを息子だと認識し、「ガンダム」の活躍を喜んでいますし、「地球連邦万歳」と大騒ぎするなど、自分がどこの何者であるかははっきりと認知しています。

 不思議なのは、大尉という高い地位にあり、地球連邦への愛国心も強いテムが、なぜ地球連邦軍に復帰しなかったのか、ということです。

 テムは「V作戦の中心人物」です。ガンダムをはじめとする地球連邦の最高軍事機密に深く関わっており、「軍から抜ける」ことなど認められるでしょうか。もし、ジオン軍にでも誘拐され、情報をもらしたら、連邦としては多大な軍事的損失をこうむるかもしれない人物です。そのような重要人物が、監視もないただのジャンク屋まがいになっているのだとしたら、不自然に感じます。

 仮にテムが酸素欠乏症で、開発能力が低下していることを認められ、勤務不能と判定されたとしても、アムロがそうされたように「監視付きで隔離」されると思います。

 そもそも、サイド7がある「ルナツー」の裏と、サイド6は、地球と月よりも離れています。宇宙服を着ていたとはいえ「生きたまま、偶然流れ着く」距離ではありません。誰かに救助された上で、宇宙船で運ばれ、紆余曲折あってサイド6で生活していることになるはずです。なぜサイド6なのでしょうか。

 息子であるアムロの出生地は、諸説ありますが「地球のどこか」です。テムは、0068年にアムロと宇宙へ上がり、各サイドを転々としたようです。元スペースコロニー建築技師であるテムは、サイド6にも土地勘や人脈があるのでしょう。ですから、テムがサイド6に居続けること自体は、それほど不思議ではありません。

 ここで「時期」の問題が出てきます。テムが遭難した9月から発見された12月まで、地球連邦軍の宇宙拠点はルナツーとサイド7だけです。テムが連邦軍復帰のためにサイド7やルナツーに戻ろうとしても、中立コロニーであるサイド6から、連邦軍基地であるルナツーへの宇宙航路は、民間ルートでは存在しないでしょう。地球に向かうルートも戦争中ですから、様々な渡航制限があり、利用が難しかった可能性もあります。

 ただ、アニメ『機動戦士ガンダム0080』では、サイド6の地球連邦軍基地が描かれています。小学生のアルが基地に近づいて「連邦軍は出ていけ~」と連邦軍兵士に言えるくらいで、その存在は半ば公然のものです。

 サイド7に戻らずとも、サイド6の連邦軍基地に行き「私はサイド7で事故にあったテム・レイ大尉だ」と名乗ればいいようにも思えます。連邦を愛するテムが、そうしない理由がありません。土地勘もあるわけですし。

 仮に事故時にIDカードなどを喪失していたとしても、そもそも、ガンダム系の新型機「アレックス」を極秘開発している現場でもあり、地球連邦軍のモビルスーツ開発は始まったばかりなのですから、テムを知っている人も多くいたのではないでしょうか。

■実は「すでに連邦軍へ復帰していた」可能性も…?

アニメでは説明されなかったテム・レイの行く末を描く、富野由悠季監督の小説『密会―アムロとララァ』(角川スニーカー文庫)

 そう考えるなら「テムは地球連邦軍に復帰していた」のかもしれません。「サイド6に流れつき、そこから連邦軍に復帰した。しかし、酸素欠乏症による能力低下や記憶混乱により旧式機器しか開発できないため、『アレックス』などの重要機密には参加していない(あるいは参加しているが、自分が直接設計していないので、興味関心が薄く、ガンダムの性能を上げることで新型機を見返したい)」ということなのではないでしょうか。

 テムが地球連邦軍に復帰しようとして拒絶や阻害をされたのであれば、アムロに愚痴りそうですし、「地球連邦万歳!」という反応にもならないでしょうから。

 あの生活感のある「サイド6のアパート」は、元スペースコロニー建築技師でもあるテムが「サイド6で仕事があった時のために、賃貸契約を長年していた」物件とも考えられます。でなければ、事故から3か月であれほど多くの機械類を部屋に溜められないでしょう。

 連邦軍がテムの住居を用意しようとしても「元々、住むところは決めているから不要。長年住んで、愛着がある物件から通うよ。開発機材も部屋にあるし、軍の設備は他の者が使った方が、開発リソースが増える」と突っぱねられたのでしょう(サイド7でも自宅で最高機密兵器の開発をしていた男ですし、言動からも自分のペースを守りたがりそうです)。

 テムの「ジャンク屋は情報を集めるのに便利」という台詞は、中立コロニーの利点を生かした、連邦軍内にいてはやりにくい、ジオン系技術の情報収集を指すと思われます。だから「ジオンのモビルスーツの回路を参考に設計した」という後の台詞に繋がるわけです。

 そうしたことも合わせて考えるなら、テムの発言には一定の合理性があり、正気だった可能性すらあります。考えてみると「酸素欠乏症」とか「旧式な機器」と断定したのは、父との再会で動揺していたアムロの主観でしかありません。

 マンガ『機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのメモリーより―』で「テムが過去に作った発明品と同じだから、アムロはすぐに分かった」との描写がありますが、アムロは父の発明品を調べたわけではなく、ひと目見ただけで投げ捨てていますし。

 テムが参考にしたというジオンの「モビルスーツ」回路に歴史があるはずもなく、そこまで旧式機器になるとも考えにくいですし、アムロが理解できないだけで、テムの機器を取り付けたら、本当に「ガンダム」がパワーアップしたのかもしれません。

 何より劇中の様子を見直すと、テムは「アムロが聞きたいようなこと」を言わないだけで(そこは事故前の第1話と全く同じですね)、会話そのものは全て成立しているのです。たとえば、次のような会話がなされていました。

アムロ「父さん、母さんのこと気にならないの?」

テム「ん? んん。戦争はもうじき終わる。そしたら地球へ一度行こう」

 文脈としてテムは「(別居しているテムの妻で、アムロの母カマリアのことが)気になるから、地球に一緒に行こう」と発言しているのですが、アムロはこの発言を「母さんのことなんてどうでもいいんだ」と捉えており、単に噛み合っていないだけに思えます。

「カマリアが間男を作ったので、テムは別居した」という背景設定がありますから、テムから見て加マリアは「あまり会いたくない」関係性でしょう。それでも息子の頼みを聞いたのは、テムの「息子を一度も殴ったことがない」理知的な部分がよく出た場面だと筆者には思えます。

 なお、テムが好き勝手に振る舞えたのは、大尉という高位の階級(ルナツー司令官のワッケインでも少佐の世界ですから)だからでしょう。開戦以降の大損失で人的資源が枯渇している連邦軍には、テムに指図できるような上官がサイド6方面にいなかったのかもしれません。

(安藤昌季)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください