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『機動戦士ガンダム』なぜ連邦軍は偵察専用機が見当たらない? 一年戦争における「偵察」

マグミクス / 2023年12月27日 6時10分

『機動戦士ガンダム』なぜ連邦軍は偵察専用機が見当たらない? 一年戦争における「偵察」

■ミノフスキー粒子散布下の「有視界戦闘」実際のところは?

 ミノフスキー粒子とは、アニメ『機動戦士ガンダム』の世界観を成立させる架空の粒子です。小型核融合炉や、「ビームサーベル」のような架空兵器も、この粒子を活用した「ミノフスキー物理学」の応用で作られたという設定になっています。

 ミノフスキー粒子の影響で一番大きなものは「レーダーが効かない」ことです。厳密に言えば「近距離でのレーダーは問題が少ない」とされており、各モビルスーツには「センサー有効範囲」というスペックが設定されています。初代『ガンダム』の一年戦争時には、モビルスーツは数千m程度しかセンサーが有効に働きませんでした。

 ミノフスキー粒子は「散布」する類のものであり、濃度があるので、戦場に存在しないこともあるでしょうし、敵を目視などで発見することも可能ですから、「センサー有効範囲」はあくまで目安でしかありません。とはいえ、長距離誘導兵器や、レーダーで照準してのメガ粒子砲による遠距離砲撃は、「相手をセンサーで照準できない」ことで、ほとんど使えないわけです。

 言わば、レーダーの性能が低くて、効果が限定的だった第二次世界大戦に近い世界観です。こうした世界観では、偵察の重要性は明らかです。

 初代『ガンダム』でも、偵察に従事する機体はいくつか描かれています。ジオン軍は偵察機「ルッグン」を大気圏内で運用していました。「ルッグン」は、モビルスーツ「ザクII」を懸架しつつ飛行できる驚くべき性能で、逆を返すなら「降下前にルッグンが周囲を高性能センサーで索敵し、モビルスーツを降ろす」運用も想定されているのでしょう。

 モビルスーツを搭載できる空中空母「ガウ」や、機動巡洋艦「ザンジバル」など、兵器のサイズから見て「ルッグン」以上のセンサーを搭載されていると思われる兵器も索敵に貢献していると思われますし、戦闘機「ドップ」も極めて視界が広い設計で、ほかの機体と連携しての偵察も可能だと思われます(マンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』では、複数のモビルスーツがレーザー通信で情報を仲介して、後方に判断材料を送る様子が描かれています)。

 ジオン軍は偵察に力を入れており、宇宙でも「強行偵察型ザク」「ザク・フリッパー」などの偵察機仕様が存在します。これらは『機動戦士Zガンダム』でも登場するので、後の時代でも重宝されていたことがわかります。ザクより後の世代のモビルスーツ「リックドム」や「ゲルググ」の偵察型は見られないようですが、これは、この時期では「モビルアーマー」が偵察機としての任務も担っていたからでしょう。

■偵察用途に「モビルアーマー」が有効といえるワケ

地球連邦軍の戦艦「マゼラン」 画像はBANDAI SPIRITS「1/1200 マゼラン」 (C)創通・サンライズ

 一般にモビルスーツ(MS)より大型のモビルアーマー(MA)は、機体容積が大きいことからか、センサー有効範囲も際立って大きなものです。

●各機センサー有効範囲
・ザクII(MS、参考):3200m(強行偵察型ザクも同じ)
・ジオング(MS、実質ほぼMA):8万1000m
・ビグロ:11万1000m
・ビグ・ザム:13万4000m
・ブラウ・ブロ:15万6000m
・エルメス:24万5000m

 ここで疑問が生じます。全長85.4m、全備重量291.8tの「エルメス」に、「ザクII」の76倍もの距離を探知できる高性能センサーが搭載できるのであれば、例えば船体重量4万1000tとも言われる地球連邦軍のマゼラン級戦艦は、少なくとも同等の探知性能を持っているのではないでしょうか。その場合、単純に考えると、「ザクII」の76倍の距離からマゼラン級は砲撃できることになります。

 実際、マゼラン級戦艦やサラミス級巡洋艦は、射撃を開始した「ビグ・ザム」とほぼ同等の距離から発砲、命中させていましたので、条件次第では13万m以上の遠距離でも命中弾を送れるのでしょう(ビームバリアで防がれましたが)。

 とはいえ、一年戦争序盤の「ルウム戦役」では、連邦軍とジオン軍の艦隊は2万8000mの距離で砲撃戦を開始していますので、ミノフスキー粒子が濃い場合、何十万mのセンサー有効範囲があっても、実際にはこの程度しか「見えない」のかもしれませんね。

「索敵情報を味方に送るのが偵察機」と考えるなら、「ビグ・ザム」はビームバリア(Iフィールド)で、敵の攻撃を防ぎつつ、パイロット以外に乗り込んでいるサブオペレーター2名が、味方に高性能センサーからの索敵情報を伝達して、効率的に攻撃を行わせる「指揮・偵察機」なのかもしれません。

 また、ジオン軍のニュータイプ専用兵器「サイコミュ」もセンサーの一種ですから、エルメスの24万5000mとは実質「サイコミュの有効範囲」であるとも考えられます(「ジオング」や「ブラウ・ブロ」は「サイコミュ兵器が有線なので、遠くまで飛ばせない」ため、エルメスより狭いセンサー半径で十分なのでしょう)。

 ただ、劇中で「センサーで劣っているから一方的に砲撃される」という描写はほぼなく、例えばセンサー有効半径5700mの「ガンダム」は、24万5000mの「エルメス」からの攻撃を感知し、有効な反撃を加えていますから、パイロットがニュータイプなら関係ないのかもしれません。

 実際、『機動戦士Zガンダム』ではニュータイプ兵器である「ファンネル」を多数飛ばして攻撃する「キュベレイ」が登場しますが、センサー有効半径は「エルメス」より遥かに狭い1万900mです。ニュータイプなら「センサーが感知しなくても、人間が感知できる」ことがわかったので、不要なリソースは削っているのかもしれません。

 興味深いのは、一年戦争時の連邦軍には、このような偵察に使える兵器があまり見られないことです。

 これは、マゼラン級、サラミス級といった宇宙艦艇が何百隻もあるので、「艦艇の高性能センサーによる遠距離探知で補える」と考えられたこともあるでしょう。

 連邦軍が進撃してきた戦争後期において、ジオン軍は防衛側ですから、連邦艦隊の進撃方向を察知する必要があります。要塞で待ち構えているなら、要塞設置センサーを使えばいいですが、宇宙艦艇数で劣っているジオンは、偵察機の必要性が高かったのでしょう。

 例えば「ア・バオア・クー戦」では、空母2、戦艦4、巡洋艦41(ジオン)に対し、連邦は超大型兵器「ソーラ・レイ」の被害後であっても、戦艦18、巡洋艦98と艦艇数では圧倒しています。

 また、近年の一年戦争ものにはあまり登場しませんが、連邦軍は要塞戦において大量の「パブリク」突撃艇を先行して突撃させていますから、そこからもたらされる情報が「偵察機」代わりにもなっていたということなのでしょう。

 さらに言えば、「セイバーフィッシュ」「コア・ブースター」といった航宙機も保有していますから、それによる偵察運用もなされていたのかもしれません。

 ただ、それだけでは不都合があったのでしょう。一年戦争以降の連邦軍は、「強行偵察型ザク」や「アイザック」、「EWACジム」、「EWACアッシマー」、「EWACネロ」、「EWACジェガン」、「EWACジェスタ」といった偵察用モビルスーツを投入するようになっていくわけです。

(安藤昌季)

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