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『赤ずきんチャチャ』TV放送から30年 原作改変しながらも大ヒットに結び付いたワケ

マグミクス / 2024年1月7日 7時10分

『赤ずきんチャチャ』TV放送から30年 原作改変しながらも大ヒットに結び付いたワケ

■原作改変でもファンの心をつかんだ理由とは?

 本日1月7日は、1994年に『赤ずきんチャチャ』がTVアニメとして放映開始された日で、今年2024年は30周年のメモリアルイヤーとなります。今でも語られることの多い、原作マンガと異なる展開になりながらも人気を獲得したTVアニメについて振り返ってみましょう。

 当時の『赤ずきんチャチャ』は、少女向けマンガ月刊誌「りぼん」(集英社)で連載されていた、彩花みん先生による人気マンガでした。見習い魔法使いで赤ずきんをかぶった「チャチャ」、その幼なじみで狼男の「リーヤ」、チャチャにひと目ぼれした魔法使い見習いの「しいねちゃん」の3人が中心となって織りなすドタバタコメディです。

 前番組『姫ちゃんのリボン』(原作:水沢めぐみ)も同じく「りぼん」連載で、玩具会社「タカラ(現在のタカラトミー)」がメインスポンサーでした。テレビ東京金曜18時のアニメ枠で、この「りぼん」「タカラ」という座組は以後も続くことになります。

 原作マンガもファンからの人気が高く、アニメ化が望まれていた作品でした。しかし本作は、原作マンガにはなかったストーリーと設定の大幅な変更がなされます。これは玩具会社の意向でした。原作通りの展開では、商品となるオモチャのラインナップに不安があるからでしょう。

 実際に前番組『姫ちゃんのリボン』も、原作にはない魔法アイテムの登場で話をふくらませています。さらに言えば、当時は『美少女戦士セーラームーン』が大ヒットしていたことも要因でしょう。この後、「ポストセーラームーン」を狙ったバトルヒロインジャンルのアニメ作品が続々と生まれていきます。

 こうして、原作にはない「チャチャが『マジカルプリンセス』になって、悪の大魔王と戦う」という展開が、アニメでは描かれることになりました。現在のTVアニメ事情から見ると、炎上間違いなしの展開かもしれません。しかし、逆にアニメは大成功と言っても過言ではない注目作品となりました。

 その一番の要因は、あくまでも原作に倣ったドタバタコメディを貫いたことでしょう。シリアスな場面があってもギャグが次々と挿入されることで、作品を重くしない絶妙な黄金比となっていました。そのテンポの良さは当時の『セーラームーン』はもちろん、現在の人気作品にも通じるものがあります。

 この重要な「テンポ」を支えたのは、担当したアニメスタッフの面々でした。後にさまざまな作品で名を残すことになる、当時は若手演出家だった大地丙太郎さんや佐藤竜雄さんの力によるものです。そして、こういった若いスタッフの頑張りは製作面だけでなく、新人を多用した声優陣にも言えるものでした。

■酷評もはねのけたフレッシュな声優陣

 チャチャ役の鈴木真仁(まさみ)さんは、本作がデビュー作でした。新人でデビュー作がいきなり主役というのはかなりのプレッシャーだったようで、当時の苦労話を後に多く語っています。

 この新人起用は鈴木さんに限らず、ほかのキャストにもいえることで、加えて本作キャストは代々木アニメーション学院卒業者の起用が多く、当時は「学芸会」といった酷評をする人も少なくありませんでした。もちろん脇には三ツ矢雄二さんや日高のり子さん、島本須美さんといったベテラン勢が控え、慣れない新人勢を支えています。

 さらにアイドルグループ「SMAP」の香取慎吾さん(当時)が、リーヤ役としてレギュラー出演していました。SMAPは前作『姫ちゃんのリボン』から主題歌を担当しており、本作でも引き続きオープニング曲「君色思い」を提供しています。

 これらフレッシュな顔ぶれが本作の自由な作風とマッチして、ヒットへと結びついたわけです。本来なら1年4クールの予定が、1年半の6クールで全74話が製作されました。さらに放送終了の半年後にはOVAが3本、製作されています。

 このようにTVアニメとしては大人気だった本作について、原作と大きく違う展開を、原作者である漫画家の彩花みん先生はどう思っていたのでしょうか。

 普通なら自分の原作通りにアニメ化しなかったことに不満を抱くものでしょうが、彩花先生はとても満足していたそうです。しかもアニメオリジナルキャラクターを原作にも登場させ、完全に自分のものにしていました。

 そのひとりが、アニメではシリアスな面しか見せなかったしいねちゃんの父親である「アクセス」で、アニメのキャラクターデザインそのままに原作マンガへ登場しています。しかし、マンガの中では「アニメでは渋い人なのに……」といわれるくらいの壊れっぷりで、大活躍していました。

 アニメ化で大きく改変された本作ですが、唯一、変わらなかったのが「破天荒なドタバタコメディ」の部分です。マジカルプリンセスと大魔王の戦いというシリアス部分を加えながらも、原作最大の魅力であるこの部分を貫いたことが大きなヒットに結び付いたのでしょう。

 原作とアニメで違った展開になったことで、普通はさまざまな問題が起きることでしょう。しかし『赤ずきんチャチャ』はそんなことなどお構いなしにコメディ作品として走り抜けました。それが原作者からもファンからも共に受け入れられた理由だと思います。そういう意味では奇跡的なマリアージュだったのかもしれません。

※日高のり子さんの「高」は、正しくは「はしごだか」

(加々美利治)

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