『ガンダム』マ・クベはなぜ「ギャン」に乗った? 不当に低評価かもしれないその腕前
マグミクス / 2024年1月11日 6時10分
![『ガンダム』マ・クベはなぜ「ギャン」に乗った? 不当に低評価かもしれないその腕前](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_206182_0-small.jpg)
■戦略家マ・クベがなぜMSに乗ったのか?
『機動戦士ガンダム』に登場するキャラクター「マ・クベ」といえば、ジオン公国軍の冷酷な策略家といった印象を持つ人が多いと思います。しかし、そういった印象では片づけられない行動もありました。
マ・クベは、地球にあるオデッサの鉱山基地から宇宙のジオン公国に資源を送るという、重要な任務に就いていた指揮官です。「一年戦争」において地球連邦軍は、一大反攻作戦の初手として「オデッサ作戦」という、この鉱山基地の攻略から始めたことからもわかるように、ジオン公国にとって地球上の最重要拠点でした。
少々ナルシスト気味の言動と、壺をはじめとする骨董品に愛着があり過ぎることがファンからはネタとされますが、この最重要拠点を任されたことからも、マ・クベはジオンの舵取りをしていたザビ家からの信頼も厚く、優秀な軍人と評価されていたことがわかります。なおTVアニメ版における階級は大佐でした。
このマ・クベの行動で最大の疑問となるのが、「どうしてMS(モビルスーツ)『ギャン』単独で、アムロ搭乗の『ガンダム』に勝負を挑むという短絡的な行動におよんだのか?」という点でしょう。それまでのマ・クベの取った戦略から考えれば、そのような無謀な策に走る理由が見えません。
そうなると、過程はどうあれ「『ガンダム』を単独で倒すという結果」が必要、かつ確実に倒せる(無謀ではない)と考えていたのかもしれません。「結果が必要」な理由はおそらく、「キシリア・ザビ」配下となって自分と肩を並べるようになった「シャア・アズナブル」の存在でしょう。
つまり、このシャアが何度も交戦しながらも倒せなかった「ガンダム」を、シャアと同じ条件、すなわちMSに自ら搭乗し倒すことで、自分がより優秀であると示すことが目的だったのではないでしょうか。さらに言えば、上述した「オデッサ作戦」での敗退で、軍における自身の立場が危ういと考えていた(もしくは実際に危うかった)ために、巻き返しを図ろうとしたのかもしれません。
しかし、ここで更なる疑問がわきました。それは「マ・クベは自分のパイロットとしての腕に疑問を持たなかったのか?」という点です。その答えはもちろん、「マ・クベは自分がパイロットとしても優秀だと考えていた」となるでしょう。
ここで、そんなわけないと思う人は少なくないかもしれません。しかし、マ・クベのそれまでの行動を見ると、少なくても並のパイロットと同レベル以上の腕前と考えられる材料が見られました。
■アムロのニュータイプ覚醒はマ・クベのおかげ?
BANDAI SPIRITS「1/550 ジオン軍重機動砲座アッザム」 (C)創通・サンライズ
それは「アッザム」で「ガンダム」と交戦した時のことです。この戦闘においてマ・クベは、「アッザム・リーダー」で「ガンダム」を一時的ながらも拘束することに成功し、また砲塔を破壊されるものの無事に撤退しました。いわゆる「成功体験」に近いものがあったことでしょう。
ここで特筆するべきは、「アッザム」にキシリアを同乗させていることです。キシリアが「ガンダム」を甘く見ていた可能性もありますが、それ以上に「マ・クベの『アッザム』が撃墜されることはない」という確信があったのでしょう。そうでなければ安全を第一に動き、自分自身を危険な状態に置かなかったはずです。
ここから察するに、キシリアからもマ・クベの操縦技術は一目置かれていたことになるでしょう。「アッザム」の原型である「ルナタンク」の操縦経験があったのかもしれません。また後付け設定ですが、「MSV」に「マ・クベ専用グフ」があるくらいですから、実はMS操縦はお手のものだった可能性もあります。
シャアがマ・クベに対して「付け焼刃」と酷評する場面がありますが、その腕前を知っていたわけではないでしょう。それまでのマ・クベの行動から考えれば、戦略家として実績を築いてきたわけですから、自ら武器を取って動くことなど想像してなかったのかもしれません。
「ガンダム」相手に単独で長時間、渡り合ったことを考えれば、「ギャン」の性能を差し引いてもマ・クベは並のパイロットでないことがわかります。逆にアムロ・レイのニュータイプへの急速な覚醒は、思わぬ強敵だったマ・クベとの戦いがきっかけだった可能性も考えられるでしょう。
そう考えると、自ら前線に立たなかっただけでマ・クベはエース級の実力を持ったパイロットだと思えます。「ランバ・ラル」や「黒い三連星」に辛辣な言葉を発したのも、パイロットとしての実力は五分以上という自負があったからかもしれません。
異説になりますが、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』マンガ版で、マ・クベは味方側のオデッサ後退を助ける行動を取っています。こういった行動を見ると、マ・クベのパイロットとしての技量はけっして「付け焼刃」ではなかったのかもしれません。
(加々美利治)
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