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『機動戦士ガンダム』派手な「○○専用機」はなぜ作られジオン軍に多く見られるのか?

マグミクス / 2024年1月17日 7時10分

『機動戦士ガンダム』派手な「○○専用機」はなぜ作られジオン軍に多く見られるのか?

■戦場で「目立つ」ことのメリット/デメリットとは?

 巨大人型兵器「モビルスーツ(MS)」同士の戦闘を描くアニメ『機動戦士ガンダム』および同シリーズには、「シャア専用ザク」「ジョニー・ライデン専用ゲルググ」のように、指揮官向けの、色や形や性能の異なるMSが多数、設定されています。

 主人公「アムロ」が搭乗する「ガンダム」も、白、青、赤とトリコロールの目立つ外見であり、量産型の「ジム」とは明らかに違うため、ある意味「アムロ専用機」のようなものでしょう。地球連邦軍にも、ジオン軍より数は少ないですが、「リド・ウォルフ専用ジムスナイパーII」のような色や装備が違う専用機は存在し、両軍とも有用性を認めているようです。

「ガンダム」の舞台は、ミノフスキー粒子によりレーダーが阻害され、有視界戦闘を強いられる世界であり、前線で指揮を執る指揮官機が撃墜されたら、指揮下の軍はかなりの混乱に陥るものと考えられます。にも関わらず「目立つ専用機」がなぜ採用されるのか、その理由を考えてみましょう。

 まず考えられるのは「目立たないといけない」ことです。宇宙にせよ地球にせよ、ミノフスキー粒子下では有視界戦闘が中心となります。現代のリアル航空戦のように、「遠距離レーダーで探知した肉眼では見えない目標に、空対空ミサイルを撃ち、決着」みたいな戦闘は考えにくいわけです。

 また、レーダーが使いにくいにも関わらず、MSの移動スピードは非常に速く、センサー半径は狭いですから、特に宇宙では「一瞬、目を離しただけなのに、味方がどこにいるかわからない」などということも起こり得るでしょう。

 有視界戦闘が必須の世界では「前の指揮官に続け!」という、シンプルな会敵方法は、かなり有効なのではないでしょうか。実際、エースパイロット「黒い三連星」の3人が3機のMSを駆り一体となって目標に突撃するという「ジェットストリームアタック」は、劇中で「有効な戦術」として描写されています。

 その場合、突入する指揮官機が目立つ(あるいは他と違う)色の方が、部下は指揮官機を見失いにくいですから、戦闘が有利に進められるとも考えられます。

 もちろん、色違いの指揮官機が集中攻撃される危険性はあるのですが、これも「ガンダム」世界では、かなりリスクが小さいこととも考えられます。MSの性能よりも、パイロットの技量の方が戦闘を左右するという世界観であり、エースパイロットの乗る機体の被弾率は非常に低いからです。

■「専用機」は「茶器」と同じ…?

「赤い三巨星」小隊の機体は「陸戦型ガンダム」「陸戦型ジム」をベースとした改修機。画像はBANDAI SPIRITS「HG 1/144 赤い三巨星チームセット」 (C)創通・サンライズ

 例えばアニメ『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』では、ジオン軍のエースパイロット「ノリス」が操縦する「グフカスタム」に対し、連邦は性能では勝る「陸戦型ガンダム」3機を投入するものの、パイロットの技量の差で手玉に取られていました。

 アムロのようなニュータイプは別ですが、オールドタイプが大半を占める戦場で、機動力を活かせるMSに搭乗したエースパイロット機を撃墜するのは、かなり困難ということです。

 であるなら「目立つ指揮官専用機」は、味方の士気を上げ、国民向けのプロパガンダでも有効に使える宣伝素材ということになりますから、採用しない理由はないでしょう。

 また「専用機」は、エースパイロットの特性に合わせたカスタマイズをされている、チューンナップ機であることも多いですから、より、エースパイロットの実力が発揮されることになります。

 加えてジオン軍の場合は、「政治的意味合い」も大きいと考えられます。ジオン軍は20歳のシャアが大佐という高位の階級になれる「超実力主義」の軍隊ですが、同時に「ザビ家」が指揮系統の中枢を占めている軍隊でもあります。

 少将のキシリア・ザビや、中将のドズル・ザビが気にしていたのは、兄の独裁者ギレン・ザビ大将だけで、他の将官は眼中にありませんでした。こうした軍隊だと「ザビ家の軍人がいる部署での大佐以上の出世スピードは遅い」ということも考えられるでしょう。

 であるなら「昇進と別の形で名誉を与える」ことで出世欲を満たすのは、有効なのではないでしょうか。たとえば戦国武将の織田信長は「茶器」を権威付けることで、部下への恩賞として、限りある領地の代わりとなるよう仕向け、これに成功していました。それと同じ考え方です。

 功績を立てたパイロットは昇進だけでなく「自分専用のMSを開発してもらう権利」と「国民向けのふたつ名」を与えられるということです。さらに、こうした権利を持つ功労者は、給料アップや、使える部下を他から引き抜く権限など、実益も与えられたのでしょう。

 高性能な専用MSや使える部下は、自身の生存確率を上げます。そして「目立つ」方が、自身の戦果(つまり功績)を認定してもらいやすくなりますし、専用機は腕に覚えがある証明にもなりますから、エースパイロットたちは歓迎したと思われます。

 マンガ『機動戦士ガンダム 赤い三巨星』は、連邦軍側が「赤い彗星」「青い巨星」「黒い三連星」といったジオン軍エースパイロットの「ふたつ名」を熟知しており、自分たちも「赤い三巨星」と名乗る、という話なのですが、つまりジオン軍側が「シャアが赤い彗星なのだ」と積極的に宣伝しているから成り立つわけです。

 地球連邦軍側に「専用機」が少ないのは、実力主義による異常な昇進システムや、ザビ家のような「出世の妨げ」が少ないので、あまり個人が目立つことをよしとしなかったのでしょう。

 アニメ映えする「専用機」が、宇宙世紀という世界の設定の中で無理なく存在できることに気づいた時、筆者は「ガンダム」世界の完成度を感じた次第です。

(安藤昌季)

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